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名前 Nさん
年齢 20代後半
所属 博士研究員
研究分野 非天然タンパク質の合成
最終学歴 大学院博士課程修了
趣味・特技 車、ドライブ

 

 今回は、生化学分野での研究をなさっている博士研究員のNさんにおはなしを聞いてまいりました。私達とは違った分野でなかなか難しいところもありましたが、とても新鮮で面白い話を聞かせていただきました。それではご覧下さい。

 

インタビュー内容

この道を選んだ理由

学習について

研究に関して

成功と失敗

化学とコンピュータ

目標、アドバイス

 

B&B:それでは始めさせていただきます。雑談のような感じで自由にお話していただければ幸いです。

 

B&B:私達は有機合成が専門なので、内容自体は理解できるのですが、どのような操作、アプローチをしているかということについてまず聞きたいと思います。

 

Nさん:はい。ターゲットが酵素だったり、生体分子だったりするのですが、アプローチとしては有機合成なので、そういう点では化学よりの仕事になります。

 

B&B:生物工学や遺伝子関連の話は勉強不足であまりわからないので、なるべく簡単にお願いいたします。

 

Nさん:私は元々合成の研究室からこの分野に入りましたので、今の教授が高分子化学を専門とする方で、有機化学からのアプローチということを基本としているので、ケミストリーの分野になります。ただ、ターゲットが酵素や生体分子だったりするだけですよ。

 

B&B:そうですか。安心しました。それではご出身の大学、学科はどちらになられるのでしょうか?

 

この道を選んだ理由

  

Nさん:T大学の生物工学科です。DNAを切断する分子の開発ということをやっていまして、そのままT大のマスターに上がろうと考えていたら、そこの指導教授に紹介されてマスターはT大学に行き、ドクターを取りました。

 

Nさん:工学部にいきたかったのですが、物理、化学、数学の中から二つ選ばなくてはならなくて、物理と数学はほとんど出来なかったので、数学を選んで、大学4年の夏休みは数学ばかり勉強していました。とてもつらかったです。結局数学は0点でした(苦笑)

 

 

B&B:(笑)それで学部はどちらになったのですか?

 

Nさん理学部の生物化学科に合格して、学部の時と同じようにDNAを切断する分子の開発をやらせていただきました。具体的には切断する分子としてブレオマイシン(図1)に似たような分子を使い、DNAを切断するという研究をしていました。そのテーマのなかで、やったことはその切断するメカニズムの解明で、それがドクターの仕事となりました。それで、ドクターをとってどうしようかなと考えていたら、今の教授に誘われて現在にいたっています。

 

B&B:ドクターへ進もうと考えたのはどうしてですか?

 

Nさん:マスターのときに結構いい結果がでまして、そのとき周りが就職するという人が少なかったんですね。当時生物化学科には二十数名いたのですが、その中で就職するのが2人くらいで、マスターからドクターの期間で一つの仕事をするという風潮がありましたので。

図1 ブレオマイシンA2(Bleomycin A2)

補足:抗癌剤。作用機作としては、癌細胞中で、鉄(Fe++)とキレートしたブレオマイシンが、酸素を活性化しそれがDNA鎖を切断することにより癌細胞の増殖を抑制すると考えられている。 ブレオマイシンは、分子中に、DNAと 静電的に引き合う部分、DNA分子の隙間に入り込む部分、化学的にDNA鎖を切断する部分を備えたミニ酵素とも考えられ興味深い化合物である。
 

 

B&B:そうなんですか。

 

Nさん:はい。ですから修士論文もそれを作るだけ、エネルギーの無駄ですから、あまり重要視されないでその分ドクターの仕事をしろという感じでした。

 

研究に関して

 

B&B:現在行っている研究テーマは何ですか?また研究は面白いですか?

 

Nさん:今は楽しいのですが、やはり難しいテーマでもあります。現在は「アンチセンスPNA誘導体によるtRNAアミノアシル化」ということをやっています。酵素がやっている働きを低分子でやらせてしまおうということで、世界中で多くの他の研究者も同じようなことをやろうとしているのですが、多くの研究者はRNA分子等の高分子を使ってやろうとしてるんです。アプローチとしても他では有機合成的なスクリーニングではなく、何種類もつくりその中からいいものを探すという考えでやっていまして、有機合成的なアプローチでやっているのは少ないんです。だから、出来ればすごいことですが、はたしてできるのかということが周りの研究者の意見です。

 

B&B:研究の進み具合はどうなのでしょうか?

 

Nさん:発表したものはそのアプローチの初期段階だけで、実は最終段階で止まっていまして、この段階がうまくいけばかなりいい発表ができるのですが、なかなか難しくて。反応自体は有機合成的には簡単なエステル交換反応なのですが、それを水中でしなくてはならないのと、普通の有機合成では濃い濃度でできるのですが、私の扱っている生体分子の場合はμM単位で反応させなくてはならないのでなかなか反応が進まないんです。

 

B&B:難しいですね。

 

Nさん:はい。だから酵素が必要なのですが、それを低分子でやろうとしているんです。天然の酵素は天然のアミノ酸を天然のtRNAに結合することができますよね。しかし、非天然のアミノ酸、例えばアミノ酸の側鎖にアントラセンとか、なんでもいいのですが、20種類のアミノ酸以外の非天然のアミノ酸をtRNAに結合させるためには天然にない酵素が必要で、その酵素を合成しようというのが研究のテーマなんです。

 

補足:参考サイト

 ・tRNAの構造アミノアシルtRNAの構造アミノアシルtRNA合成

 ・アミノアシルtRNA合成酵素

 ・リボソームとは? マルチメディア資料館

 ・RNA polymerases I and III

 

B&Bその合成しようとしている人工酵素の形は天然の酵素と似たような構造をしているのですか?

 

Nさん:構造は、多少は参考にしているのですが、違います。DNAはDNA,RNAと二十螺旋を組みますよね。またペプチド核酸という10年位前にP. E. Nielsenという方が見つけた人工核酸なのですが、それもDNAやRNAと二十螺旋を組むことが知られています。tRNAの構造をみると、アクセプターステムの部分、逆側には一本鎖の部分がありますね。そこにペプチド核酸分子を持って来れば、外れて、ペプチド核酸分子と二重螺旋が組めるわけです。

図2 t-RNAの構造

 

B&Bわかりました。それではそのエステル交換反応が難しいのですね。

 

Nさん:そうですね。そこが律速段階ですが、なかなかうまくいかなくて。

 

B&Bもし合成できたらどのように評価するのでしょうか?

 

Nさん:in vitro(細胞外)系において、tRNAに非天然のアミノ酸が結合した場合はタンパク質ができるようにする系はできているので、結合できれば検出することは可能です。

 

B&Bこれを合成することによってどのような成果が得られるのですか?

 

Nさん:今までの天然のタンパク質では出せなかった特性、機能等を持たせることが可能ですから、様々な応用がきくわけで、製薬会社等では多くの研究がなされています。

 

B&B似たような系で、成功している例というものはあるのですか?

 

Nさん:RNAを使った系で、天然のアミノ酸に近い形のものや、元のアミノ酸、酵素をほんの少しだけ構造を変えて成功している例はあります。しかし、あまり大きく構造を変えてしまうと難しいのです。

 

B&Bそうですか。合成できたらすばらしいですね。

 

Nさん:はい。しかし、欠点もあって、非天然のアミノ酸を導入したタンパク質を作れる量が少ないんです。取れる量が少ないと解析の方法も限られてきてしまって、多くの量があれば結晶化したり、NMRをとったりできるのですが、そのような解析が出来ないので色々なデータが得られないのが現状です。

 

B&Bどのくらいの量なのですか?

 

Nさん:1mg以下です。これはうまく進行すればですけれども。エステル交換反応というシンプルなものだけれども系が難しいので。

 

B&Bそれは大変です・・。基礎的なものほど奥が深いですね。

 

Nさん:エステル交換反応は数Å以内にいないと交換してくれないと考えているので、小分子の形、エステルの種類等々スクリーニングしなくてはいけないです。

 

Nさん:他の研究者が、他の方法でやろうとしているので少し心細い点もあります。(笑)私の行っている方法のメリットは非天然のtRNAを使うので非天然の物しか認識しないという特異性があるから、天然の系は壊さずに独立して系の中に入れることが出来、独立していてもタンパク質合成系の中に取り込まれるという点です。tRNAの方は同研究室の方がほぼ完成させてるので、問題は酵素の方ですね。

 

B&B今の1日の仕事というのは、どのような感じなのでしょうか?決まっていなくても大体でよいので簡単に教えてください。

 

Nさん:ほぼ決まっています。今の研究室は本当に分業がしっかりしていて、4年生がしっかりしてくれているので雑用は少ないです。また、秘書がいてくれますので仕事に集中できます。

 

B&B時間は決まっているのですか?

 

Nさん:特に決まっていないません。麻が強いので、朝8時前に出勤して、装置を立ち上げたりメールを見たりしています。大体仕事は夜の9時から10時くらいまでですね。学生のころは24時間でもできると思っていたのですが、一度それで体を壊してからはあまり遅くまでは働かないようにしています。

 

Nさん:あと学生時代の経験からなのですが、スタッフ(教員)が遅くまでいると、学生が自由に研究できるという雰囲気を作りにくいと思いますので、なるべくはやめに帰るようにしています。

 

B&B:休日はありますか?

 

Nさん:一応土日は休むようにしています。学生のころは土日もやっていましたが、今は効率よく仕事ができますので、もっぱら土日はドライブしたり、車をさわったり、馬に乗ってみたり、備前焼を焼いてみたり、自分の趣味を楽しんでいます。教授からは趣味の人と言われています(笑)

 

成功と失敗

   

B&B:それでは、いままで研究をしてて面白かったことや、成功したなあと思ったことがあれば教えてください。

 

Nさん:うーん。ドクターのときですね。反応のメカニズムを提唱してそれがあっていたことがあったんです。簡単に言うとDNA切断のメカニズムとして、その切断分子の分子内電子移動反応の可能性があると思ったので、それを提唱するためにモデル化合物を作って実験を行ったらそれがあっていたんです。やはり実験の結果が思い通りであったときは楽しいですね。

 

Nさん:あと、また学生時代に、教授に「上手くいかないと思うよ」といわれたものが上手くいったことがあり、その時は本当に有頂天でした。

 

B&B:それはうれしいですね。

 

B&B:それでは逆にまずい経験や、失敗してしまったことなどはありますか?

 

Nさん:失敗はあまり気にしないようにしているのですが、新しく今の研究室に来て、学生を指導する立場にあるのですが、分野が学生の時と異なるので教えてあげれないことが多くて、指示するだけになってしまうのが本当に申し訳ないなと思っていました。今は、1年間やってきて教えられることはあるのですが。研究室の教授はとてもいい方なので私の指導方法を評価していただいているので一生懸命頑張らないといけないなと思っています。

 

B&B:異なった分野に進むことは大変ですが、いい経験ですね。

 

Nさん:そうですね。やはり同じ分野にいるだけではなかなか身につかないものもありますので。いろいろな世界を見て吸収していくのが博士研究員の仕事だと考えています。

 

化学とコンピューター

 

B&B:いま使っているパソコンはWindowsですか、それともMacですか?

 

Nさん:Macです。はじめに買ったのがMacであったので。そのころ研究室にもMacがあまりなくて、コンピューター系のサークルに入って勉強しました。その後、ChemDrawの影響で研究室内のパソコンがすべてMacになったことがあって重宝されました。それでそのままMacを使っています。

 

B&B:今の研究室でもMacが多いのですか?

 

Nさん:そうですねほとんどがMacです。

 

B&B:それではパソコンはどのように使われていますか?

 

Nさん:もちろんオンラインでジャーナル等も見ていますが、今まで紙に書いていたものを、パソコンにすべて移行しました。研究室内はすべてLANで繋がっていますので、データのやりとりが簡単なんです。ですから今コンピューターがないとやっていけないですね。

 

夢と目標

       

B&B:最後に今夢や目標があったら教えてください。

 

Nさん:それは現在のテーマです。今やっている方法でなくても、非天然のタンパク質をつくるというのが目標です。したっている今の研究室の先生の夢だとおっしゃっているものなので、ぜひ成功したいですね。

 

B&B:頑張ってください。応援しています。それでは今日はお時間を取らせていただいて、興味深い話をありがとうございました。これで終わりにしたいと思います。

 

※インタビューさせていただいた内容を、こちらで編集・構成いたしました。それをご本人に公開の許可をいただきました。

※図、仕事の内容につきましてはインタビュー時点の内容です。

※学校名、名前は本人の希望により仮名にさせていただきました。