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The Journal of Unpublished Chemistry

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皆さん、The Journal of Unpublished Chemistry というジャーナルをご存じですか?直訳すると「未発表化学誌」

なんじゃこれは?と思われる方も居るでしょうが、ありていに言ってしまえば、ジョークジャーナルの一つです。存在は割と前から知られていて、それほど新しいネタでは無いのですが、あまり取り上げられて無いようなんで紹介します。

ウェブページに行けば記事のアブストラクトが読めるのですが、その内容は有機化学の研究経験がある人なら思わず「くだらねぇ~~~笑」と言ってしまいそうなモノばかり。

いくつか紹介してみましょう。例えば、J. Un. Chem. 2001, 5, 163.の記事ですが、タイトルが

 

「簡便かつ効果的な有機溶媒の乾燥法」
An easy and efficient method for the drying of organic solvents.

というタイトル。
一見まともそう・・・ですが? その概要は・・・

「オーブンを使った溶媒乾燥法について。不便でしばしば時間も費用もかかる従来法、つまり蒸留もしくは化学処理法との比較をしました。 100℃に熱すると、ジエチルエーテル・THF・ジクロロメタン・水・ベンゼンなどの様々な溶媒が効果的に乾燥できることが分かりました。一方、キシレンやDMSO、ニトロベンゼンの場合にはあまりうまくいきません。」

・・・要するに沸点以上に熱すれば何でも乾いてしまう、というジョーク(後ろ3つは沸点が100℃以上の溶媒)。あぁ、くだらねぇ(笑)

もう一つ紹介してみましょう。J. Un. Chem. 2001, 5, 215.より。

「有機合成における音速触媒」 Sonic Catalysis in Organic Synthesis.

超音波反応についてのネタか?と思いきやイヤイヤそんなありきたりではございません。やはり斜め上を行ってくれます。

「器具の近くでクラシック音楽を流す、反応に関し罵詈雑言を並べ立てる、などなどいくつかの手法を比較しました。反応の収率および生成物の単離容易さについての効果比較、特にエナンチオ過剰率の向上に関する興味深い結果を報告いたします。」

こんなことありえねぇ!・・・と楽しむにはある程度の有機化学の知識が必要かも知れません。世の中には「モーツァルトを聴かせて育てた野菜」なるものがあるぐらいですから(!) なかなか高度です。

ロゴもJournal of American Chemical Society(JACS)の旧版をもじったモノですし、ご丁寧に表紙をつけて発行されています。大変良くできているのですが、現在は新規投稿を受け付けて無いようです。残念!

せっかく化学をやるなら、実験実験ばかりではなく、ユーモアも楽しめるようになりたいとこですね。
ジョークジャーナルを他にもご存じの方は、是非ご一報を!

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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