"CN7-"アニオン

Aug
17
2009
Author: cosine[Edit ] View: [1597]
Category:論文
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CN7anion_1.gif

The CN7- anion
Klaptoke, T. M.; Stierstorfer, J. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 1122. DOI: 10.1021/ja8077522 

 独・Ludwig-Maximilian University of MunichのKlaptokeらによる報告です。

 今回見いだされた化合物は、論文のタイトルにもなっている"CN7- アニオン"、すなわち5-アジド-1H-テトラゾールアニオンです。一見しての通り、小さな分子ながら窒素を多量に含みます。こういった窒素豊富化合物は、一般に高エネルギー化合物(high energy compound)となり、燃料・爆薬としての応用が期待されます。


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 彼らはカウンターカチオンを様々なものに変えたCN7-塩化合物を調製しています。例えばヒドラジニウム(冒頭図)、アンモニウム、グアニジウム、リチウム、ナトリウム、カルシウムなどなど・・・

 合成した化合物のうち幾つかは単結晶を取って3次元構造を構造決定しています。他の分析法(質量分析、多核NMR、IR、ラマン分光などなど)は試せる限り使ったということですが、多くのCN7-金属塩は乾固した瞬間に即座に分解(=爆発)してしまうという話だそうで・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル!

 どうやらX線構造の解析から、イオン間の相互作用・水素結合の強さが化合物の安定化に効いているらしいです。乾いた化合物やイオン相互作用の弱いセシウム塩、ルビジウム塩、カリウム塩が超敏感なのはそういう理由では無いか、と考察されています。

 しかしあまりにも敏感すぎる化合物らしく、実用には堪えなさそうだというコメントはなされていました。



 以下余談になりますが、この種の高エネルギー化合物の中では、トリニトロトルエン(TNT)は最もポピュラーでしょう。TNT火薬などの名称で通じ、『TNT何kg分の破壊力』などと爆発エネルギーの目安として使われるのもご存じの通りです。

TNT.gif


 一方で、考え得る爆薬のなかで理論上最強とされているのは、オクタニトロキュバン(ONC)。不安定なN-O結合を沢山持つうえに、高度にひずみのかかったとんでもない高エネルギー化合物です。シカゴ大学のEatonらによって1999年に合成されています。これは既報の合成法があまりに煩雑なため、実用には至っていませんが、実際に携わった研究者がいかにおそるおそる取り組んでいたか・・・想像に難くありませんよね。

cubane.gif

 ちなみに、現在実用されている爆薬で最も強力なものは、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(HNIW)という化合物。これは理論計算から合理的に設計された化合物ということで、複雑に見えて合成法もなかなかカンタンな模様です(でもくれぐれも、自分で作ったりしないでください(笑))。

HNIW.gif


 こういった高エネルギー化合物の研究は、軍事がらみの歴史も綿綿とあり、なかなかに興味深い世界とも思えます。またいずれ、まとめ記事を書いてみたいと思います。



  • 関連文献
[1] (a) Stierstorfer, J.; Klapo  tke, T. M.; Hammerl, A.; Chapman, R. D. Z. Anorg. Allg. Chemie 2008, 634, 1051. (b) Hammerl, A.; Klapotke, T. M.; Mayer, P.; Weigand, J. J. Propellants, Explos. Pyrotech. 2005, 30, 17. (c) Hammerl, A.; Klapotke, T. M.; Noth, H.; Warchhold, M.; Holl, G. Propellants, Explos., Pyrotech. 2003, 28, 165. (d) Hammerl, A.; Klapoke, T. M. Inorg. Chem. 2002, 41, 906.

  • 関連書籍
火薬と爆薬の化学
東海大学出版会
Tenney Lombard Davis(原著)姉川 愼一(翻訳)細谷 文夫(翻訳)
発売日:2006-03
火薬工学
森北出版
発売日:2001-07
おすすめ度:4.0
おすすめ度4 火薬の知識
エネルギー物質の科学―基礎と応用
朝倉書店
John A. Conkling(原著)
発売日:1996-09
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おすすめ度4 エネルギー物質の化学?
エネルギー物質ハンドブック
共立出版
火薬学会(編集)
発売日:1999-02
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 火薬を取り扱う者は読むこと


  • 関連リンク

窒素はどこまでつながれる? (有機化学美術館)

炭素と窒素のコンビネーション (有機化学美術館)

アジドの話 (1)  (2) (有機化学美術館)


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