[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

立春の卵

[スポンサーリンク]

 

まだまだ寒いですが、2月4日は立春です。

皆さんは、「立春の卵」についてご存じでしょうか。
「立春の日だけはニワトリの卵を立たせることができる」

、というものです。このお話は、今日出席した、石川謙准教授(東工大)の講演会の導入部分で伺ったお話です。

1947年(昭和22年)2月6日の朝日新聞に、立春の上海や米国で卵を立てる実験に成功した、というニュースが掲載されました。

このニュースは反響を呼んだようで、その翌日2月6日には、中央気象台でも卵を立てる実験を行ったという記事が載っています。

当時の東大理学部長の解説付きの記事ですが、

立春以外の日でも卵は立つのではないか、とされながらも卵が立つ理由までは解明されないままでした。

この報道に疑問を感じ、卵を徹底的に調べたのが当時北大教授の中谷宇吉郎博士でした。
卵殻を顕微鏡観察したり、力学計算をおこなったりして、立春でなくとも卵を立たせることが可能であることを明らかにしています。

コロンブス以来、人類は卵を立たせることは出来ないと思い込んできただけだったのです。
その経緯をまとめたものが、中谷博士の随筆「立春の卵」です。
こちらのページに詳しい経緯が掲載されています)

 

5~10分程度頑張れば、誰でも卵を立たせられるようです。

ちなみに、中谷宇吉郎博士の専門は低温科学で、世界初の人工雪作成などの業績を残しています。

 

身近な卵ですら思わぬ発見があるくらいですから、科学にも意外な盲点があるのかもしれません。そして、そういった盲点は中谷博士のような少し専門が異なる研究者には見えやすいものなのでしょう。
常識や思い込みにとらわれない視点を養いたいものです。

戦後すぐの立春の卵にはじまり、現代の水からの伝言まで、似非科学というものは、今も昔も人の関心を引いてしまうもののようですね。

 

関連リンク

suiga

投稿者の記事一覧

高分子合成と高分子合成の話題を中心にご紹介します。基礎研究・応用研究・商品開発それぞれの面白さをお伝えしていきたいです。

関連記事

  1. 膨潤が引き起こす架橋高分子のメカノクロミズム
  2. マイクロ波プロセスを知る・話す・考える ー新たな展望と可能性を…
  3. ヒュッケル法(前編)~手計算で分子軌道を求めてみた~
  4. 新形式の芳香族化合物を目指して~反芳香族シクロファンにおける三次…
  5. 合成とノーベル化学賞
  6. 「ヨーロッパで修士号と博士号を取得する」 ―ETH Zürich…
  7. ハイブリット触媒による不斉C–H官能基化
  8. 化学者のためのエレクトロニクス講座~フォトレジスト編

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. Undruggable Target と PROTAC
  2. マイヤース 不斉アルキル化 Myers Asymmetric Alkylation
  3. 「さくら、さくら」劇場鑑賞券プレゼント結果発表!
  4. 有機レドックスフロー電池 (ORFB)の新展開:高分子を活物質に使う
  5. シュレンクフラスコ(Schlenk flask)
  6. 極性表面積 polar surface area
  7. ハプロフィチンの全合成
  8. 白リンを超分子ケージに閉じ込めて安定化!
  9. ユシロ化学工業ってどんな会社?
  10. ハーバード大Whitesides教授がWelch Awardを受賞

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728

注目情報

最新記事

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP