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スポットライトリサーチ

超分子カプセル内包型発光性金属錯体の創製

2016-11-01_09-49-21

第64回のスポットライトリサーチは、長崎大学大学院工学研究科(馬越研究室)の堀内新之介 助教にお願いしました。

堀内先生は、超分子化学・有機金属化学を修めたあとにアカデミックポストを取得し、光錯体化学の研究分野に飛び込まれました。今回紹介する研究は「超分子カプセルに金属錯体を閉じ込め、その発光特性を向上させた」というもので、多分野を渡り歩いた独自の経験が見事に融合された成果となっています。本成果はプレスリリースと原著論文の形で公開されています。

“Encapsulation and Enhanced Luminescence Properties of Ir Complexes within a Hexameric Self-Assembled Capsule”
Horiuchi, S.; Tanaka, H.; Sakuda, E.; Arikawa, Y.; Umakoshi, K. Chem. Eur. J. Early View. DOI: 10.1002/chem.201604016

研究室を主宰される馬越啓介 教授コメントからも、ユニークなバックグラウンドを持つ堀内さんへの期待の大きさがうかがえます。

堀内助教は,東大工学研究科藤田研で超分子化学を極めて博士号を修得し,分子科学研究所村橋研でIMSフェローとして有機金属化学を修行した後,我々のグループに助教として加わった若手研究者です。堀内君には研究室の大きなテーマの1つである光機能性錯体の開発に携わってもらい,彼の超分子化学の知識を活かした新しいテーマを立ち上げてもらいました。今回取り上げられた内容は,光化学を専門とする作田准教授の協力を得て,堀内君が着任後1年ほどで出した最初の研究成果です。今後,金属錯体の光化学に新しい風を吹き込んでくれると期待しています。

それでは今回の研究もお楽しみください!

Q1. 今回のプレス対象となったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

 「水素結合による自己集合性カプセルに発光性金属錯体を包接させ、新しいタイプの発光性超分子を創成した」という研究です。

自己集合性ホスト分子に金属錯体を包接させ、孤立空間内での錯体化学を展開する研究が注目されています。本研究では、自己集合性ホスト内で金属錯体の光化学を探索可能な、新しい超分子系の構築を目指しました。これまで、自己集合性ホストに分子サイズの大きな金属錯体を包接させることは困難な課題であり、仮に包接できたとしても包接された金属錯体の発光特性は低下してしまうことが知られていました。本研究ではこれら問題を解決し、簡便な手法で金属錯体を包接できること、包接によって金属錯体の発光特性を向上させること(高エネルギー化・高効率化・長寿命化)を見出しました。本研究はChem. Eur. J.のHot Paperに選出され、本研究成果と長崎の夜景を素材にした扉絵がinside back coverに掲載されました。

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Cover Picture

 

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

「研究テーマの設定」と「用いる化合物群の選定」の2点です。

私はこれまで、パラジウム・白金を用いた超分子化合物の合成研究を行ってきました。一方、錯体化学研究室では白金をベースとする多核錯体や混合金属錯体の光化学をメインに研究しています。そのため、超分子的なアプローチを取り入れた錯体の光化学を展開できないかと模索した結果、現在の研究が生まれました。次に、用いる化合物にはパラジウムや白金が含まれていないものを選びました。これは、長崎大学で開始する研究が出身研究室や所属研究室の研究成果の延長線ではないことを明確にするためです。独立した研究を開始できるポジションについたからこそ、自身のバックグラウンドを活かして、新しい化合物群を用いて新しい研究領域に挑戦する必要があると思い行動したことが、今回のような形に繋がったのだと思っています。

 

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

超分子化学・錯体化学・光化学の境界領域に位置する本研究は、実験結果をどのように解釈するべきか、非常に悩みました。研究室には私を含め教員が4名いるのですが全員バックグラウンドが異なるため、1つの実験結果に対して複数の解釈が出てくることなど日常茶飯事でした。最終的には今の形で論文化しましたが、この解釈が適切なものかはまだ分かりません。今後、もっと多くの実験結果を出すことで体系的な解釈ができるかもしれません。もしくは、新しい解釈が必要になるような結果や、今よりもっと面白い現象が見えてくる可能性もあります。そのため、現在進行形でこれらの難題を乗り越えているところです。

 

 

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

「自己集合性ホスト内での金属錯体の光化学」の研究に適した超分子系が構築できたので、ようやく研究者としてのスタートラインに立てました。これからもっと深く、そして広く、学際領域の研究を展開していきたいと思います。基礎研究的には新しいコンセプトを提示できる超分子系の構築、応用面では高機能性超分子材料の創成を目指し、テーマを展開していきたいところです。それには様々な困難が予想されますが、今回のように異なるバックグラウンドを持った研究者が共同することで、各々の境界領域で新しい成果を出すことができると考えています。

 

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

「人の後追いはするな」

この言葉は学生の頃から言われてきたことですが、本当に難しいことだと実感しています。今もこの言葉に応えられるように、頭を悩ませている日々です。しかし、研究者を目指す人ならば必ず意識しておかなければならないことでもあります。目の前にある研究テーマのことを考えるのは当然として、今ある結果を使ってどうすれば新しいコンセプト・学際領域を拓けるか、そんなことを思案するのも良いトレーニングになるのではないでしょうか?

 

外部リンク

研究者の略歴

名前:堀内 新之介(ほりうち・しんのすけ)

所属:長崎大学大学院工学研究科物質科学部門 錯体化学研究室 助教

研究テーマ:超分子化学、錯体化学

略歴:

2013年3月 博士(工学)取得、東京大学大学院工学系研究科(藤田誠研究室)

2013年1月–2013年3月 University of Amsterdam 客員研究員(短期留学)(Joost. N. H. Reek研究室)

2013年4月–2015年3月 分子科学研究所 IMSフェロー(村橋哲郎グループ)

2015年4月– 現職

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cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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