論文の最近のブログ記事
フェネストレンの新規合成法
Synthesis of [4.6.4.6]Fenestradienes and [4.6.4.6]Fenestrenes Based on an 8π−6π-Cyclization-Oxidation Cascade Hulot, C; Blond, G; Suffert, J;
J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 5046–5047.DOI: 10.1021/ja800691c
フェネストラン(femestrane)とは下記のような4級炭素を中心として4つの環が集まった構造をしている分子の総称で、4員環が4つのものを[4,4,4,4]fenestrane、4員環1つ、5員環2つ,6員環1つで構成されているフェネストランを[4,5,5,6]fenestraneといいます。簡単に有機化学美術館にクローバー分子・フェネストランとして解説があるのでそちらを見るとよいでしょう。今回フランス、ルイパスツール大学のSuffert教授らはこの以下のようなフェネストラン型分子をある化合物から1段階で効率的に合成しました。

フェネストレンの新規合成法の続きを読む
2008年5月 2日 ブレビコミン | 個別ページ | コメント(0)
室温、中性条件での二トリルの加水分解

RhI-Catalyzed Hydration of Organonitriles under Ambient Conditions, Goto, A. ; Endo, K. ; Saito, S. ; Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 3607 DOI: 10.1002/anie.200800366
ニトリルをアミドヘ加水分解する。意外と簡単にできると思いませんか?この単純な変換は古くから研究されており、工業的にもアクリロニトリルの加水分解によるアクリルアミドの合成が行われています。しかし、ニトリルを加水分解するために多くの均一系、不均一系触媒が報告されていますが、一部のコバルトと白金系の触媒用いた場合を除いて、どれも高い温度(80~180oC)や高い圧力を要する場合がほとんどでした。
私自身も昔、全合成研究の途中にニトリルを加水分解しなければならず、分子内の水酸基を用いると、シリカゲル上でも簡単に加水分解されるのに、外からの加水分解は全く進行せず、さらに強い条件で行うと基質の分解が優先して目的の化合物が得られなかった思い出があります。その当時は大阪大学の村橋先生が報告されていたRh、Ru触媒(忘れました)で水で100℃で2日間熱するという条件がもっともよく、もっと温和な触媒があったらなあと考えていました。
室温、中性条件での二トリルの加水分解の続きを読む
2008年5月 1日 ブレビコミン | 個別ページ | コメント(0)
タミフルの新規合成法・その4

A concise synthesis of (-)-oseltamivir
Trost, B. M.; Zhang, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, Early View. doi:10.1002/anie.200800282
先日「つぶやき」で書いた講演紹介でも簡単に触れましたが、スタンフォード大学のTrost教授らによって、タミフルの新たな短工程合成法が報告されました。
当サイトでは過去にもタミフルの合成法を数種類取り上げています(参照:有機って面白いよね!の記事・化学者のつぶやき「その1」「その2」「その3」)。Trostらの報告において特筆すべきは、わずか8工程という、最短の工程数を実現している点です。これを実現せしめている鍵とは、一体何でしょうか?
タミフルの新規合成法・その4の続きを読む
2008年4月11日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
キラル超原子価ヨウ素試薬を用いる不斉酸化

A Chiral Hypervalent Iodine(III) Reagent for Enantioselective Dearomatization of Phenols
Dohi, T.; Maruyama, A.; Takenaga, N.; Senami, K.; Minamitsuji, Y.; Fujioka, H.; Carmmerer, S. B.; Kita, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, Early View. doi:10.1002/anie.200800464
大阪大学薬学系研究科・北泰行教授らによる報告です。 北教授のグループでは、超原子価ヨウ素試薬をもちいた合成法の開発に長年取り組んできており、今回はそのバックグラウンドを活かした報告になります。
キラル超原子価ヨウ素試薬を用いる不斉酸化の続きを読む
2008年4月 8日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
アミン存在下にエステル交換を進行させる触媒
エステルは香料や医薬品などの部分構造として重要です。合成法としてのエステル交換は様々な酸触媒によって促進されることが知られています。もっとも古典的な条件はFischer法と呼ばれ、硫酸などの強力な酸を用いて加熱条件にて行われます。ただ、そのような激しい条件は、多くの官能基をもつ複雑化合物への適用は難しいです。現在でも穏和に効率よくエステルを合成すべく、多くの触媒開発研究が続けられています。
アミン官能基存在下に人工的にエステル交換を起こすことは、これまで不可能とされてきました。アルコールよりもアミンのほうが求核性が高いため、アミド形成のほうが優先してしまうのです。 このため、予めアミンを保護してから反応を行い、脱保護するという冗長なプロセスが必要不可欠でした。(有機って面白いよね!「無保護のペプチド合成を目指して」も参照ください)
大阪大・真島教授・大嶋准教授らのグループが開発した、亜鉛四核クラスター触媒[1]は、この教科書的常識を覆しました。
アミン存在下にエステル交換を進行させる触媒の続きを読む
2008年2月18日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
有機触媒によるトリフルオロボレート塩の不斉共役付加

Organocatalytic Vinyl and Friedel-Crafts Alkylations with Trifluoroborate Salts
Lee, S.; MacMillan, D. W. C. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 15438. DOI: 10.1021/ja0767480
米プリンストン大学のMacMillanらによる報告です。
彼らによって開発された有機分子触媒、MacMillan触媒[1]は、エナール(α,β-不飽和アルデヒド)を基質とし、様々な不斉1,4-付加反応を進行させます。基質と反応して求電子性の高いイミニウム中間体を形成し、付加反応を促進させることを特徴としています(LUMO-activation)。複雑化合物の合成にも用いられるなど、大変実用性の高い触媒です(例:タミフルの合成)。
今回の論文では、有機トリフルオロボレート塩(RBF3K)[2]を求核剤として用いています。ボランの結合している炭素で選択的に反応が進行するという特徴があります。
有機触媒によるトリフルオロボレート塩の不斉共役付加の続きを読む
2007年12月14日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
α-トコフェロールの立体選択的合成

Reagent Directing Group Controlled Organic Synthesis: Total Synthesis of (R,R,R)-α-Tocopherol.
Rein, C.; Demel, P.; Outten, R. A.; Netscher, T.; Breit, B. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 8670. DOI:10.1002/anie.200703268
独アルバート・ルードヴィヒ大学のBernherd Breitらによる報告です。Breit教授は超分子化学的発想や分子認識概念を積極的に取り入れた試薬・触媒をデザインし、オリジナリティの高い合成化学研究を展開しています。
今回取り上げるα-トコフェロール(ビタミンE)の化学合成は、「試薬配向基(Reagent Directing Group:RDG)制御概念」[1]に基づき、数ある不斉点を効率的に構築していることが特徴です。
α-トコフェロールの立体選択的合成の続きを読む
2007年11月15日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
複雑化合物合成にも適用可能なC-H酸化反応

A Predictably Selective Aliphatic C-H Oxidation Reaction for Complex Molecule Synthesis. Chen, M. S.; White, M. C. Science 2007, 318, 783. DOI: 10.1126/science.1148597
イリノイ大学のM. Christina White准教授による報告です。
White准教授はC-H官能基化をターゲットにした触媒開発研究を進めています。(以前にも、酸化的C-Hアミノ化反応の開発を紹介しました。) 今回の論文では、触媒的C-H酸化反応について述べています。この触媒の何より優れているところは、既存の条件には到底耐えることができない複雑化合物に対しても適用可能、という条件の穏和さにあります。
複雑化合物合成にも適用可能なC-H酸化反応の続きを読む
2007年11月 6日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
アザジラクチンの全合成

Synthesis of Azadirachtin: A Long but Successful Journey Veitch, G. E.; Beckmann, E.; Burke, B. J.; Boyer, A.; Maslen, S. L.; Ley, S. V. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 7629. DOI:10.1002/anie.200703027
A Relay Route for the Synthesis of Azadirachtin Veitch, G. E.; Beckmann, E.; Burke, B. j.; Boyer, A.; Ayats, C.; Ley, S. V. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 7633. DOI:10.1002/anie.200703027
(ややいまさら感がありますが) ケンブリッジ大学・Steven Leyらによって先日報告された、アザジラクチンの全合成について紹介します。
アザジラクチンの全合成の続きを読む
2007年10月22日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
タミフルの新規合成法・その3
Shie, J.-J.; Fang, J.-M.; Wang, S.-Y.; Tsai, K.-C.; Cheng, Y.-S. E.; Yang, A.-S.; Hsiao, S.-C.; Su, C.-Y.; Wong, C.-H. J. Am. Chem. Soc. 2007, ASAP. DOI: 10.1021/ja073992i
以前にも「つぶやき」で取り上げてきた(その1・その2)現在ホットなタミフル合成研究ですが、これまでのものとは成果がひと味違います。ただ作るだけでなく、構造変換によってタミフルよりも活性の高い誘導体(analogue;アナログ) 合成に成功した、という報告です。
タミフルの新規合成法・その3の続きを読む
2007年9月18日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
水が促進するエポキシド開環カスケード

Epoxide-Opening Cascades Promoted by Water. Vilotijevic, I.; Jamison, T. F. Science 2007, 317, 1189. DOI: 10.1126/science.1146421
冒頭図下のジムノシン(Gymnocin)のように、エーテル含有環が沢山連結した化合物は、海産性の天然毒物に多く見られます。このようなポリエーテル縮環構造をもつものとしては他に、シガテラ食中毒の原因化合物であるシガトキシン(Ciguatoxin)、赤潮が発生させる毒成分であるブレベトキシン(Brevetoxin)などが知られています。それらの化合物群は広く海産ポリエーテル天然物と呼ばれています。
「このように複雑なポリエーテル系天然物を、生物はどのように合成しているのだろうか?」
この疑問に対する回答として最も有望と考えられているのが、コロンビア大・中西香爾教授によって提唱された『エポキシド開環カスケード生合成仮説』[1]です。 すなわち、冒頭図上のようなポリエポキシドが連続的に分子内置換・開環を繰り返しつつポリエーテル系天然物を与える、というまさに天才的ともいうべき発想から導かれた、大変美しい仮説です。ただ、実験的証拠に極めて乏しく、あくまで仮説の域を出ませんでした。
今回マサチューセッツ工科大・Jamisonらによって、この仮説を理解するための重要な事実が報告されました。
水が促進するエポキシド開環カスケードの続きを読む
2007年9月 3日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
(+)-Fawcettimineの全合成

Total Synthesis of (+)-Fawcettimine. Linghu, X.; Kennedy-Smith, J. J.; Toste, F. D. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, Early View. DOI:10.1002/anie.200702695
カリフォルニア大学バークレイ校のTosteらによる報告です。
Fawcettimineの合成におけるポイントは、ヘミアミナール部位を切断してできる、5員環・6員環・含窒素9員環の縮環骨格の構築、および不斉四級炭素の立体制御です。
Tosteらは、独自に開発した「Au(I)触媒によるアルキン・シリルエノールエーテル間の5-endo-dig環化」[1]を鍵反応として用い、合成を達成しています(このストラテジーは、論文[1]中で示されているLycopladinの合成とほぼ同様です)。カチオン性Au(I)触媒は、既存の触媒系では達成し得ない数々の反応を進行させうることが、様々な研究者によって報告されています[2]。その中でも、Tosteは群を抜いて業績を上げており、貢献度の最も高い研究者の一人です。
(+)-Fawcettimineの全合成の続きを読む
2007年8月30日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
金属を使わない触媒的水素化

Metal-Free Catalytic Hydrogenation. Chase, P. A.; Welch, G. C.; Jurca. T.; Stephan, D. W. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, Early View. DOI: 10.1002/anie.200702908
有機分子触媒もココまで来たか!という感のある、カナダ・Windsor大学のStephanらによる報告です。
水素を還元剤として使うには、分子のH-H結合を切って組み替える過程(活性化)が必須になります。それを行える試薬は、遷移金属触媒がほぼ唯一無二であり、有機分子だけで水素のH-H結合を切ることは従来不可能とされてきました。
金属を使わない触媒的水素化の続きを読む
2007年8月23日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
A Powerful Chiral Counterion Strategy for Asymmetric Transition
Metal Catalysis Hamilton, G. L.; Kang, E. J.; Mba, M.; Toste, F. D.Science2007,317, 496. DOI:10.1126/science.1146922
金触媒を用いた反応において、キラルなカウンターアニオンを用いると、高い不斉収率で生成物が得られることをカリフォルニア大学バークレー校のDean Toste教授らは発見し、Scienceに報告しました。
遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法の続きを読む
2007年8月10日 ブレビコミン | 個別ページ | コメント(0)
Appel反応を用いるホスフィンの不斉酸化
"Synthesis of P-Stereogenic Phosphorus Compounds. Asymmetric Oxidation of Phosphines under Appel Conditions"
Bergin, E.; O'Connor, C. T.; Robinson, S. B.; McGarrigle, E. B.; O'Mahony, C. P.; Gilheany, D. G. J. Am. Chem. Soc. 2007, ASAP. DOI:10.1021/ja072925l
University College Dublin(UCD)のGilheanyらによる報告です。
実はこの研究、先日開催されたESOC2007でポスター発表されていました。学会会場がUCDだし、ご当地発表かな?でもアイデアはなかなか面白いな、と一応気にとめていた研究でした。なんと、JACSにアクセプトされていたとは!せっかくなので紹介してみたいと思います。
Appel反応はアルコールのハロゲン化反応として捉えられていますが、反応の際に当量のホスフィンがホスフィンオキシドへと酸化されてくることが知られています。
それならば、キラルなアルコールを用いてラセミ混合物のホスフィンと反応させれば、エナンチオ選択的酸化が可能なのでは? こういった"逆転の発想"に基づくものが今回の成果です。
Appel反応を用いるホスフィンの不斉酸化の続きを読む
2007年7月29日 cosine | 個別ページ | コメント(0)
ホーム > 論文
![有機化学美術館へようこそ ~分子の世界の造形とドラマ [知りたい★サイエンス]](http://ec1.images-amazon.com/images/I/11vQMVBtq%2BL.jpg)



