[スポンサーリンク]

分析化学

基礎から学ぶ機器分析化学

[スポンサーリンク]

内容

機器分析の入門書ということで、様々な分析機器の原理や使い方、試料準備方法が記述されています。具体的に、1. サイクリックボルタンメトリーを始めとする電気化学分析、 2. UV-Visや原子吸光などの電磁波を使った分析、3. X線分析、4. 質量分析、5. クロマトグラフィーによる分離とそれに付随する分析、5. 電気泳動分析についての原理を網羅しています。各章末には、演習問題が設けられていて大学の講義の教科書としても使われることを想定しているようです。

対象者

学部生や機器分析をこれから始める研究者

解説

機器分析の解説書はたくさんありますが、この本は原理から実際の使用方法まですべてを網羅していると思います。原理に重点を置いている本の場合、分析原理はよく解説されているのですが、その原理が実際の機器にどう組み込まれているのか分からないため、最後まで読んでもいまいち面白くないことがあります。一方で、機器の活用に重点を置いている本の場合、使い方はよくわかるのですが、原理の説明がなくどのようにデータが取得されるのかが分からない場合があります。その点、この本では、原理と機器の特徴がバランスよく記述されていて理解しやすいと思います。途中のコラムでも、歴史的なことから最新の分析方法まで加えられています。

内容としては、有機合成、無機化学、生物化学で使う主要機器が揃っているため、普段の研究で違う機器のアプローチを考えるときに便利です。

私が研究室にいた頃は、機器を使う前にその機器の原理について勉強し、先生の前でその原理を説明し理解していることを示さないと使わせてくれませんでした。その一方で、使い方をささっと教えてすぐ使わせ、データや機器がおかしくなったら機器の担当者に投げるという中途半端な教育をしているところもあるようです。もちろんすぐにデータを取得することが重要ですが、原理を知っていることで防げる操作ミスやデータ解釈間違いなどもありますので原理をよく理解したうえで機器を使ってほしいところです。そのう上でこの本は、機器分析をこれから始める研究者におすすめです。

 

関連書籍

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の…
  2. 【書籍】「世界一美しい数学塗り絵」~宇宙の紋様~
  3. The Sol-Gel Handbook: Synthesis,…
  4. 有機化学1000本ノック【反応機構編】
  5. 食品添加物はなぜ嫌われるのか: 食品情報を「正しく」読み解くリテ…
  6. 動画でわかる! 「575化学実験」実践ガイド
  7. ChemSketchで書く簡単化学レポート
  8. 基礎材料科学

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. アンモニアがふたたび世界を変える ~第2次世界大戦中のとある出来事~
  2. キラル情報を保存したまま水に溶ける不斉結晶
  3. 化学系プレプリントサーバー「ChemRxiv」のβ版が運用開始
  4. MOFを用いることでポリアセンの合成に成功!
  5. 乙種危険物取扱者・合格体験記~Webmaster編
  6. ガラス器具を見積もりできるシステム導入:旭製作所
  7. 自転車泥棒を臭いで撃退!?「スカンクロック」を考案
  8. 研究室クラウド設立のススメ(経緯編)
  9. アニリン版クメン法
  10. 盧 煜明 Dennis Yuk-ming Lo

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP