[スポンサーリンク]

その他

先制医療 -実現のための医学研究-

概要

増加する非感染性疾患の対策として注目される発症前診断,発症前介入を目指す先制医療を総力特集! がん,糖尿病,COPDといった主要な疾患の現状から技術開発まで「究極の医療」の最新知見をお届けします!(内容紹介より)

対象

  • 未来の医療に興味がある方
  • 医学・薬学の先端研究に携わる研究者
  • 次世代型の予防医療思想に興味がある方

解説

本書は究極理想の超最先端医療として提唱される『先制医療(preemptive medicine)』について、その思想から最新の取り組みまでを記したムック書籍である。

近年の疾病構造の変化および先進国社会に共通する高齢化によって、医学の重点課題と医療制度に変革が求められている。とりわけ日本においてはこの傾向が強く、超高齢化社会への対応を世界に先駆けて迫られている。

中でも非感染性疾患(non-communicative diseases, NCD)、すなわち心疾患、糖尿病、がん、肺疾患などは現在でも死亡率の大半を占め、治療も長引き医療費も高額になるため、社会保障費削減という観点からも早急な対策が望まれている。

 NCDは早期発見・早期治療がもっとも現実的な対策とされている。しかしながら現在の医療技術では発症後の症例しか見いだすことが出来ない。例えばアルツハイマー病のような疾患種では、発症後治療が有効に行えないこともある。諸々の社会的事情から、今後は予防を重点とする医療研究の必要性が高いと考えられる。

 『先制医療』は、予防医療(preventive medicine)をさらに進めた医療概念として位置づけられる。すなわち発症前に疾病罹患を予測して積極的な治療介入を行う、言い換えれば『疾病に対して先手を打つ』思想に基づく医療として定義される。さらには統計学的なマスデータに着目するのでは無く、一人一人のパーソナルデータに着目して将来予想される病気を防ぐという、個の精密医療を行うことを念頭に置いている。一方の予防医療は公衆衛生の集団的取り組みと、啓発などによる受動的介入をベースにするものであるとして、思想面からは両者は明確に区別されている。

先制医療思想を実現すべく、着手可能な研究としては以下のものが提案されている。

  • ゲノムレベルでの症例研究・疫学研究の統合活用
  • 病気になる前とかかりはじめ直後のマーカーを探索
  • 遺伝-環境関連素因の分子機構解明(エピジェネティクスとの関連から病理理解をすすめること)
  • 「生前から墓場まで」の膨大なライフログを多因子ビッグデータ処理して生命・疾病の理解を促すこと

この成果がもたらす究極的アウトプットとして位置づけられるのが、個別予防生命の予測であるとするのが、先制医療が描く壮大な絵である。

この潮流に沿った研究が今後活発化するとの想定のもと、化学/生物学の未来像を想像するための書籍として有用な一つだろう。

途轍もなく壮大なスケールの話に触れたい方、未来の医療に興味ある方は、是非一読を勧めたい。

関連文献

  1. 戦略イニシアチブ――超高齢化社会における先制医療の推進.科学技術振興機構研究開発戦略センター臨床医学ユニット.2011 [PDF]

関連書籍

関連リンク

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  2. The Merck Index: An Encyclopedia…
  3. HOW TO 分子シミュレーション―分子動力学法、モンテカルロ法…
  4. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ
  5. 生物活性物質の化学―有機合成の考え方を学ぶ
  6. Guide to Fluorine NMR for Organi…
  7. ChemSketchで書く簡単化学レポート
  8. 【書籍】研究者の仕事術~プロフェッショナル根性論~

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

注目情報

ピックアップ記事

  1. ロナルド・ブレズロウ賞・受賞者一覧
  2. リアル「ブレイキング・バッド」!薬物製造元教授を逮捕 中国
  3. 顕微鏡で化学反応を見る!?
  4. スティーヴンス転位 Stevens Rearrangement
  5. ボイヤー・シュミット・オーブ転位 Boyer-Schmidt-Aube Rearrangement
  6. グァンビン・ドン Guangbin Dong
  7. “クモの糸”が「ザ・ノース・フェイス」のジャケットになった
  8. 一家に1枚周期表を 理科離れ防止狙い文科省
  9. 化学オリンピック完全ガイド
  10. ノビリシチンA Nobilisitine A

注目記事

関連商品

注目情報

試薬検索:東京化成工業



最新記事

アビー・ドイル Abigail G. Doyle

アビゲイル・グットマン・ドイル (Abigail Gutmann Doyle、1980年xx月xx日…

金属キラル中心をもつ可視光レドックス不斉触媒

2014年、マールブルク大学・Eric Meggersらは、可視光レドックス触媒および金属キラル中心…

井上 将行 Masayuki Inoue

井上 将行 (いのうえ まさゆき、1971年2月14日-)は、日本の有機化学者である。東京大学大学院…

EUのナノマテリアル監視機関が公式サイトをオープン

新たに設立された、EU(欧州連合)のナノマテリアルを取り扱う機関が公式サイトをオープンしました。(ア…

近傍PCET戦略でアルコキシラジカルを生成する

2016年、プリンストン大学・Robert Knowlesらは、 可視光レドックス触媒を用いることで…

アルミニウム工業の黎明期の話 -Héroultと水力発電-

Gakushiです。これまでもケムステではアルミニウムについて様々な視点から取り上げてきました。1.…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP