ホーム > 化学合成
化学合成の最近のブログ記事
保護により不斉を創る
そのためこのような不斉非対称化反応は非常に効率的です。通常、リパーゼなどの酵素を作用させることによって、この反応は実現できます。ただ酵素反応では適用反応が狭い、酢酸ビニルを使ってアセチル化するため、1,2ージオールや、1,3-ジオールの場合アセチル基の分子内転位反応によってラセミ化しやすいという欠点があります(言葉で書いてもよくわかりませんね。すみません。)。とはいっても非常によい反応で工業的にも使われております。
このような酵素の反応を模倣し、人工的な触媒で行うことができればすばらしいですよね。(実際いくつかの例は最近報告されています。)
今回ボストン大学のAmir H.Hoveyda教授とMarc L. Snapper教授らは共同してこの反応に取り組み以下のような反応を開発し、ネイチャーに報告しました。(Nature 2006, 443, 67)
保護により不斉を創るの続きを読む
2006年9月12日 ブレビコミン | 個別ページ | コメント(0)
配糖体合成に用いる有機溶媒・試薬を大幅に削減できる技術開発に成功
東北大学大学院工学研究科バイオ工学専攻の正田晋一郎教授らのグループは、配糖体の中でも特に診断薬や合成中間体としての需要の多いパラニトロフェノール配糖体を、光延(Mitsunobu)反応を用いて、わずか1工程で合成することに成功した。従来法で合成しようとすると、少なくとも4工程は必要である。本技術によれば、合成および分離精製時に用いる有機溶媒などの試薬を削減することができることから、大幅なコストダウンが見込まれる。本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)、事業化可能性試験補助金の助成を受けて行われたものであり、8月23日から仙台で開催される日本糖質学会において発表される。(引用:日経プレスリリース)何を全合成したの?Hexacyclinolの合成
生物活性を有する天然物を単離し、構造決定を行い、報告する、天然物の「単離屋」さん。その構造の絶対立体配置を決定するため全合成を行う、また少量しか採れない化合物を生物学的研究のため供給する、さらに強力な生物活性を有する類縁体を合成する、それが「合成屋さん」です。(一般的な話です。)
もちろん「単離屋さん」は自分の単離した天然物が正しい構造であることを信じています。ただ、実は構造決定した天然物でなく非常に微量な別の化合物が、生物活性を有していること、構造が実は誤っていることが時々あります。そのため自分の天然物の宣伝にもなり、さらに合成した天然物の生物活性を調べることで正しい構造であることを証明できる、生物学的研究を進めることができるため「合成屋さん」にぜひ合成して欲しいものなんです。
最近は、分析機器、とくにNMR(核磁気共鳴スペクトル)の発達によりμgオーダーの化合物があれば構造を決定できる時代になりました。そのため、非常に多くの新規骨格を有する天然物が単離されていますが、そういう訳もあって、構造の誤りが多数増えているように思います。(参考:K. C. Nicolaou et al., Angew. Chem., Int. Ed, 2005, 44, 1012)
さて、今回のHexacyclinolの例はさらに複雑です。「単離屋さん」の構造を、「合成屋さん」が全合成し、「単離屋さん」の構造はあっている!と報告したんですが、別の「合成屋さん」がこの構造は違っていて、違う構造を提唱し、それを作ってしまったということなんです。
何を全合成したの?Hexacyclinolの合成の続きを読む
ドミノ遊びのように炭素結合をつくる!?
有機合成化学とは炭素炭素結合を順番につなげて目的の化合物を作る学問です。それをひとつひとつつなげていってもよいのですが、2つ、3つの炭素結合を一挙につなげることができれば、効率がよいですね。そういう2つ以上の反応を組み合わせた反応を、ドミノ反応(Domino reaction)とかタンデム反応(Tandem reaction)といいます。ドミノ倒しのように、前のドミノが次のドミノを倒して・・・連鎖的にドミノが倒れていくというところから由来しています。別に全く新しい概念ではなくて、既存の反応を組み合わせていけばよいのです。
一方、近年、反応を進行させる触媒として、高価・有毒・廃棄困難である(全部ではありませんよ。)金属を用いず、有機化合物そのものを用いるという「有機触媒」というものが話題になっています。アミノ酸である安価なプロリンを用いる不斉合成反応が特に有名です。
さて、今回ドイツアーヘン大学のEnders教授らは、その有機触媒を利用して、3つの化合物の炭素炭素結合をDomino反応によって結合させ、有用な1つの化合物にすることに成功し、ネイチャーに報告しました。(Nature, 2006, 441, 861)
もう少し有機化学的に言えば(ここから下はちょっとだけ専門的です。)、不斉触媒としてプロリン由来のジフェニルプロリノール誘導体をもちいて、2つのアルデヒドとニトロスチレン誘導体とのドミノ反応により(2つのMichael反応と1つのアルドール反応)、光学的に純粋な付加体を高収率、高いジアステレオ選択性で得ました。ということです。
ドミノ反応の性質上、前に述べたように、既存の反応の組み合わせというイメージがあります。MIchael反応、アルドール反応はよく使われる反応です。この触媒を用いたMichael反応も、Aldol反応も報告されており、さらには合成した化合物が実際、そんなに有用なものではないと思うので、個人的にはそこまですごい反応という感覚はないのですが(ごめんなさい。)、先週のストルツ教授に続いて、2週連続で純粋な有機合成反応でネイチャーはすごいです。
Enders教授は昔から、プロリン由来の不斉補助基を用いて、様々な不斉合成反応を報告してきた第一人者です。これ以外にも最近多くの有機触媒を用いた反応が報告されているので、この分野に注目してみてください。(写真:真ん中がEnders。Chemical & Engineering Newsより)
ドミノ遊びのように炭素結合をつくる!?の続きを読む
関大グループ、カプロラクタムの新製法開発
関西大学工学部の石井康敬教授、坂口聡助教授らのグループは、ナイロン6の原料カプロラクタム(CPL)をシクロヘキサンからワンポット(同一反応器内)で高効率に合成する新規製造技術(特許申請中)の開発に成功した。副生成物である硫安をまったく併産しないほか一連の反応がワンポットで進むため混合物の単離操作が不要、75%以上の高収率でCPLが得られることなどを確認している。(引用:化学工業日報)
ナイロン6の原料であるε-カプロラクタムの新合成法のニュースです。最近、住友化学がゼオライト触媒を用いた硫安フリーのラクタム製法を開発しましたが、この方法は、今までと同様にシクロヘキサノンからでした。シクロヘキサンは、シクロヘキサンを空気酸化することでシクロヘキサノンとし、さらに生じたアルコールを酸化することで得られます。
それに対して、石井教授らは、シクロヘキサンから一挙にシクロヘキサンオキシムを構築するという手法を開発しました。シクロヘキサンからシクロヘキサンオキシムとする手法は以前から知られていましたが、その方法は有毒な塩化ニトロシル(NOCl)を用いる必要があり、また生成したシクロヘキサノンオキシムは、塩酸塩となるため、多量の廃棄物が生じます。
そこで、石井らはNHPI (N-ヒドロキシフタルイミド)触媒と亜硝酸第3級ブチルを用いたラジカル反応によりワンポットで容易にシクロヘキサンオキシムへ変換できるニトロソシクロヘキサンを合成しました。反応後、亜硝酸第三級ブチルは第三級ブタノールとなり環境にもやさしいということです。
ちなみにシクロヘキサンオキシムからはBeckmann転位により、カプロラクタムに変換できます。
関大グループ、カプロラクタムの新製法開発の続きを読む

