2005年ノーベル賞受賞者発表に先立ち、トムソンはノーベル賞受賞の可能性のある研究者として、 2005 Thomson Scientific Laureates (トムソンサイエンティフィック栄誉賞) をここに発表します。(引用:トムソンISI)
世界最大級の特許および学術文献情報データベースを提供しているトムソンISI社から2005年のノーベル賞最有力候補者が発表されました。毎年、この時期になると発表されるのですが、この中で決まるとは限りません。化学賞で見ると、2001年ノーベル化学賞の野依良治氏は挙げられていましたが、2000年の白川さん、2002年の田中さんなどはまったくのノーマークでした。2004年のユビキチンもはずしました。というより、ここ3年間候補者がまったく変わっていません。逆に言えばそれだけ有力であるということです。
化学のブログなので化学賞の候補者についてちょっとだけ解説しましょう。
■ナノスケールの機械製造およびマイクロエレクトロニクスの大幅な発展を約束する、分子自己集合に関する先駆的研究
Saul Winstein Professor of Organic Chemistry
University of California at Los Angeles
Los Angeles, Calif.
(Photo:Syllabus Summer Conference)
George M. Whitesides
Mallinckrodt Professor of Chemistry
Harvard University
Cambridge, Mass.
(Photo:ETH Life)
新海征治福岡市
九州大学大学院工学研究院
応用化学部門 教授
(Photo:nano.net)
分子自己集合体に関する研究を先駆的に行ってきた方たちです。そういうと難しいテーマに聞こえますが、分子レベルのスケールで実際にあるものを再現するといった方がわかりやすいかもしれません。つまり、今まで人間が組み立ててきた機械類を分子レベルで再現しようという、面白い試みです。
具体的にはJ.F.Stoddart教授は輪が軸に挟まった形をした分子ロタキサン、 二つ以上の輪を絡ませた分子カテナン、分子エレベータなどを研究、開発しています。George Whitesides教授は、 有機ナノテクノロジーの分野できわめて重要な材料の一つになっている 自己組織化するチオール系の単分子膜(SAM)を形成する技術や、 センサー・DNAチップ・タンパク分析チップなどにも応用できる可能性があるミクロ接触印刷法を開発しました。新海征治教授は螺旋状シリカナノチューブの開発者です。
これらの研究には遊び心がたくさんあります。実際は合成することに時間が取られ、もちろん困難な研究ですが。
関連書籍
On the Surface of Things: Images of the Extraordinary in Science
Stimulating Concepts in Chemistry
関連ニュース
ハーバード大Whitesides教授がWelch Awardを受賞(2005.6.17)
■ 重要な生理活性を有する天然物の全合成の権威。タキソール、エポチロン、バンコマイシン、ブレベトキシン、ジアゾンアミド、最近では貝毒アザスピロ酸の提唱されていた構造の多数の誤りを合成するによって訂正し、供給することにより貝毒研究の進展に貢献しています。このように合成した天然物を生物学的研究のため供給することにより、生物学的発展にも貢献しています。もちろん、天然物合成の方法論の発展にも多大な寄与があります。多数の賞を取られておりあともらっていない賞はノーベル賞だけという感じです。 関連書籍 関連ニュース 国際シンポジウム;創薬・天然物―有機合成化学の展望―(2005.7.30)
Victor and Elizabeth Atkins Professor of Chemistry オレフィンメタセシス反応に大変有効な触媒[Grubbs触媒]の開発者です。昔から知られていたメタセシス反応を合成的にも工業的にも実用レベルまで引き上げました。 関連書籍
以上、3つの分野での候補を簡単に紹介しました。すばらしい結果を挙げた彼らでさえ否定的にみればそれぞれ、欠点はあります。分子自己集合体の分野は現在の走りであり、時期的に少し早い気もします。天然物合成のNicolaou教授は大きな業績だが、工業的に、また天然物合成という学問の中での業績であり、新しい分野を作ってない、メタセシスのGrubbs教授は合成法を一新するほどのインパクトのある反応ですが、1人名反応であるという域を出るかどうか。 一体この中の誰が取るのでしょうか?もしくはまた、ダークホースが現れるのでしょうか?個人的にはNicolaou教授にとってほしいのですが。それでは10月5日の化学賞の発表をお楽しみに。 [2005.10.6 追記]2005年ノーベル化学受賞者発表!「メタセシス反応」に! 関連リンク有機物と天然物の合成に関する研究、特に1994年のタキソールTM全合成および 1998年~1999年のバンコマイシン全合成の達成
K.C. Nicolaou
Chairman, Department of Chemistry
Aline W. and L.S. Skaggs Professor in Chemical Biology and Darlene Shiley Chair in Chemistry
The Scripps Research Institute
La Jolla, Calif.
Professor of Chemistry
University of California, San Diego
San Diego, Calif. (Photo:MSU Chemistry Department)
Classics in Total Synthesis: Targets, Strategies, Methods
Classics in Total Synthesis II: More Targets, Strategies, Methods
Handbook of Combinatorial Chemistry: Drugs, Catalysts, Materials
■有用な触媒作用、特に高分子化(いわゆるリビング・ポリマーの生成)作用をもつ化合物の設計と合成における画期的研究
Robert H. Grubbs
Division of Chemistry and Chemical Engineering
California Institute of Technology
Pasadena, Calif.
Ruthenium In Organic Synthesis
Handbook of Metathesis (Greim/Henschler: Occupational Toxicants)
関連する記事
トムソン:2006年ノーベル賞の有力候補者を発表(2006.09.08)
ハーバード大Whitesides教授プリーストリーメダルを受賞(2006.06.16)
ニコラウ K.C.Nicolaou(2007.07.21)
その他の関連書籍
投稿者: ブレビコミン 日時: 2005年09月10日 21:21
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