[スポンサーリンク]

ケムステニュース

浄水場から検出されたホルムアルデヒドの原因物質を特定

[スポンサーリンク]

平成24年5月18日以降関東の利根川水系の浄水場で水道水の基準を超えるホルムアルデヒドが相次いで検出された問題で、厚生労働省と環境省は平成24年5月24日、主な原因物質はヘキサメチレンテトラミンと推定されると発表した。推定で0.6~4トンが利根川に流入し、浄水場の塩素消毒の過程でヘキサメチレンテトラミンからホルムアルデヒドが生じたとみられる。

北千葉広域水道企業団に保管されていた水道水の全9検体を国立医薬品食品衛生研究所が調査したところ、全ての試料からヘキサメチレンテトラミンが検出された。

この問題では、1都4県の利根川水系の浄水場で水道水の基準値を超えるホルムアルデヒドが検出され、千葉県では34万世帯以上が一時断水する事態となった。

平成24年5月25日 続報

利根川水系の浄水場で水質基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉県本庄市の金属加工メーカー 「DOWAハイテック」の工場から委託された群馬県高崎市の産業廃棄物処理会社「高崎金属工業」が、原因となるヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理水を川へ排出していたことが分かった。

高崎金属工業は事情を知らなかったと主張している。DOWAハイテックは2003年11月にもヘキサメチレンテトラミンを利根川へ流出させていた。

埼玉県の発表や高崎金属工業によると、DOWAハイテックは5月10日から、ヘキサメチレンテトラミン濃度37%の廃液計約150トンの処理を2社に委託。約60トンを受け入れた高崎金属工業は処理プラントを通して排水を利根川に注ぐ烏川へ流した。プラントは中和するためのものでヘキサメチレンテトラミンを除去する能力はなかった。別業者に委託された約90トンは焼却処理された。
高崎金属工業の社長は25日記者会見し、「処理を委託された廃液にヘキサメチレンテトラミンが含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と話した。

委託したDOWAハイテックは取材に対し、「廃液に含まれる物質は業者に示した」と説明し双方の主張は食い違っている。

 

 

ヘキサメチレンテトラミンは工業的には、ゴム製品や自動車部品の硬化促進剤などとして使われており、医療においては、膀胱炎などの治療に用いられ、日新製薬からヘキサミン注「ニッシン」として販売されている。

食品の保存料としての使用例もあり、海外ではチーズに添加される場合があるが、人への健康被害として、ぜんそくなどの症状が報告されており、食品衛生法で食品添加物としての使用を認めていない。

 

hexamethylene.png

ヘキサメチレンテトラミンは無色の固体で、上の図のように加水分解によりホルムアルデヒドアンモニアを生成します。

今回は浄水場にて用いられている塩素消毒の過程で生じる次亜塩素酸もしくは、塩酸などの酸の作用により加水分解を受けたものと推定されます。

それにしてもこのような化合物がトン単位で流出するということは、常識的にはあまり考えられないことです。結局、産業廃棄物処理業者の確認不足もしくは、無知により引き起こされたようです。排出側と処理側で主張が食い違っているようですが、いずれにしても速やかな原因の特定に至ったのはよかったですね。二度と起こらないように気をつけていただきたいものです。

当初の発表では0.6から4トンが流出したという推測でしたが、実際は処理の過程でヘキサメチレンテトラミンが分解していないとすると22トンほどが流出したことになります。だとするともの凄い量ですね。

 

どこかで放射能の影響でホルムアルデヒドがどうのこうのというのがあったようですが、そういったデマには気をつけましょう。

関連記事

  1. 半導体で水から水素 クリーンエネルギーに利用
  2. 理研も一般公開するよ!!
  3. 金大大学院、ナノ微粒子開発 医薬品や塗料などに応用も
  4. 進む分析機器の開発
  5. ノーベル化学賞:下村脩・米ボストン大名誉教授ら3博士に
  6. 第63回野依フォーラム例会「データ駆動型化学が拓く新たな世界」特…
  7. 「自然冷媒」に爆発・炎上の恐れ
  8. 高峰譲吉の「アドレナリン」107年目”名誉回復…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 振動結合:新しい化学結合
  2. えれめんトランプをやってみた
  3. ヘルベルト・ワルトマン Herbert Waldmann
  4. グラクソ、糖尿病治療薬「ロシグリタゾン」が単独療法無効のリスクを軽減と発表
  5. シュタウディンガー ケテン環化付加 Staudinger Ketene Cycloaddition
  6. 光を吸わないはずの重原子化合物でも光反応が進行するのはなぜか?
  7. ジェニファー・ダウドナ Jennifer Doudna
  8. 金属を超えるダイヤモンド ーボロンドープダイヤモンドー
  9. ロビンソン・ガブリエルオキサゾール合成 Robinson-Gabriel Oxazole Synthesis
  10. ウルツ反応 Wurtz Reaction

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成

第604回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 元素戦略MDX研究センターの宮﨑 雅義(みやざぎ…

ニキビ治療薬の成分が発がん性物質に変化?検査会社が注意喚起

2024年3月7日、ブルームバーグ・ニュース及び Yahoo! ニュースに以下の…

ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材として期待―

第603回のスポットライトリサーチは、ティエムファクトリ株式会社の上岡 良太(うえおか りょうた)さ…

有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年3月号がオンライン公開されています。…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。第一弾・第二弾につづいて…

ペロブスカイト太陽電池の学理と技術: カーボンニュートラルを担う国産グリーンテクノロジー (CSJカレントレビュー: 48)

(さらに…)…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回の第一弾に続いて第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業との…

CIPイノベーション共創プログラム「世界に躍進する創薬・バイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第104春季年会(2024)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界に躍進…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

今年も始まりました日本化学会春季年会。対面で復活して2年めですね。今年は…

マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

開催日:2024/03/21 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP