ケトン・アルデヒド→アルコール

・有機金属剤のなかでは最もポピュラー。ほとんどのカルボニル化合物にアルキル基を導入し、対応するアルコールに変換できるが、エノール化しやすい基質の場合には収率が悪い。β水素を持つアルキル基の導入では、ケトンのヒドリド還元生成物が副生する。本反応の開発者であるV.Grignardは1912年のノーベル化学賞を受賞している。
・ ハロゲン化アルキルとカルボニル化合物の混合溶液にマグネシウムを反応させて、アルコールを一段階で与える反応はBarbier反応と呼ばれる(この場合、使われる金属はMgに限らない)。
・反応基質の違いにより異なる名前で呼ばれることがある。反応基質がβ-アミノ-α,β-不飽和ケトンの場合はBerary反応、オルトエステルの場合はBodoroux-Chichibabinアルデヒド合成反応、ホルミルアミドの場合はBouveaultアルデヒド合成反応などである。
Primitive Review:
・Shirley, D. A. Org. React. 1954, 8,
28-58.
Recent Progress, Reviews:
・Tetrahedron 2000, 56, 685.
・Chem. Soc. Rev. 2003, 32,
225.
・Coord. Chem. Rev. 2004, 248, 623.
以下のようなSchlenk平衡により、溶液中では様々な複合体として存在する。

マグネシウムがルイス酸様働きをし、アルキル基の求核付加機構(Polar Mechanism)で進行するのが一般的であるが、ベンゾフェノンのように還元されやすい基質や、t-Buグリニャール試薬のようにかさ高い試薬を用いたときは、一電子移動機構(SET
Mechanism)で進行するとされる。

・簡単なGrignard試薬は市販されている。冷蔵保存したり、濃度が濃いと結晶化・沈殿しやすいので、適当な濃度で保存するか、もしくは沈殿を完全に溶解させてから使うようにすること。
・マグネシウム表面が不働体化しているとGrignard試薬が生成しにくくなる。表面活性化法には塩酸洗浄、もしくはGlovebox内でのグラインド(小スケールの場合に特に有効)が効果的である。
・ヨウ素やジブロモエタンをMgと一緒に極少量加えておくと、Grignard試薬の生成が促進されることが多い。Grignard試薬を生成しにくい基質の場合はジムロートを備え加熱するのが常である。発熱反応であるうえ、いったん生成が始まると自触媒的に反応が進行するため、暴走にはくれぐれも注意。
・通常Grignard試薬を安定化する配位性溶媒のTHFもしくはエーテルを溶媒として調製される。特定のケースに限りエーテルのみが用いられる(Mg+MeI
などはTHF中で調製しようとするとWurtzホモカップリング体のみが得られる)。
・アリルGrignard試薬など、 ホモカップリングしやすいGrignard試薬の調製には、長時間滴下、厳密な低温度制御など技術と根気が必要になる。
・無水塩化セリウム存在下で反応させると、エノール化、還元、1,4−付加などの異常反応が抑えられ、正常付加物であるアルコールが収率よく生成する。[1]
・i-Pr基をGrignard試薬で導入しようとするとβ-Hydride還元が優先する。(イソプロペニルGrignard試薬付加→水素添加という代替プロセスが有効)逆に、Bulkyなケトンを還元したいときにi-PrMgX、t-BuMgXを用いるとヒドリド還元できる。
・有機マグネシウムアート錯体の調製。 通常のGrignard試薬より優れている。[2]

・ニトリルとは通常反応しにくく、高温が必要となる。反応によりイミンのマグネシウム塩が出来るが、これはGrignard試薬に対して不活性であるため、水で加水分解されてケトンを合成できる。

・ i-PrMgXを用いるハロゲン-金属交換法は、官能基化Grignard試薬を低温調製できる有用な方法である。LiClを添加することで金属交換は促進される。[4]
・ごく最近、石原らによって触媒量の塩化亜鉛を添加することで異常反応が抑制され、カルボニル基への求核付加が効率よく進行することが見出された。活性種は系中生成されるトリアルキル亜鉛アート錯体であると推測されている。[5]

[1] Imamoto, T. et al. J. Am. Chem. Soc. 1989,
111, 4392.
[2] Kitagawa,K.; Inoue, A. et.al Angew. Chem. Int. Ed. 2000,
39, 2481.
[3] Hoffmann, R. W. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2000,
39, 3073.
[4] Knochel, P. et al. Angew. Chem.Int. Ed. 2004,
43, 3333.
[5] Ishihara, K. et al. J. Am. Chem. Soc. 2006,
128, 9998.
・Handbook
of Grignard Reagents (Chemical Industries)
グリニャール試薬の応用、最近の実例など。
.・Grignard
Reagents
グリニャール試薬は有機化学者にとって知られている最も役だつ多能な試薬の1つです。この本はGrignard試薬と、関連する有機マグネシウム化合物の反応の開発を説明。発見の100年後に、正式の見解を提示します。
・Reformatsky反応
・熊田-玉尾-Corriuクロスカップリング
・Kochi-Fürstnerクロスカップリング
・有機銅試薬による1,4-付加
・有機銅試薬によるC-アルキル化反応
・Weinrebケトン合成
・グリニャール試薬
(Wikipedia:日本)
・ヴィクトル・グリニャール
(Wikipedia日本)
・Victor Grignard
(Wikipedia)
・Grignard
Reagent (Wikipedia)
・グリニャール試薬
(Wikipedia:日本語)
・Grignard
Reaction/Grignard Reagent (organic-chemistry.org)
・Rieke Metals
(Wikipedia)
・An
introduction to Grignard reagents
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