|
ハロゲン化合物→炭化水素
・パラジウム触媒を用い、有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物を、クロスカップリングさせる反応。条件が比較的温和であり官能基選択性も高く、数あるパラジウムカップリングのなかでも使いやすい反応である。
・様々な有機ホウ素化合物を反応に用いることができるが、その中でも有機ボロン酸は合成しやすく、水や空気に安定で結晶性が高いため使いやすい、ホウ素を含む副生成物が水溶性で無毒であるなどの理由によりもっとも使い勝手が良い基質であり、工業スケールへの展開もなされている。
・ 様々な有機ボロン酸が試薬会社から市販されており、近年ではそれほど手間をかけずにビアリール系化合物を合成できる環境にある。医薬品合成・精密有機合成はもちろんのこと、化学繊維や液晶分子の生産などにも用いられ、日本人の名を冠する人名反応の中ではもっとも有名かつ実用性の高い反応の一つといえる。
[1] Miyaura, N.; Suzuki, A.
J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1979, 866.
[2] Miyaura, N.; Yamada, K.; Suzuki, A. Tetrahedron Lett.
1979, 3437.
[3] Suzuki, A. Pure. Appl. Chem. 1985, 57,
1749.
[4] Review for Suzuki Coupling Reaction: Miyaura, N.; Suzuki, A.
Chem. Rev. 1995, 95, 2457.
[5] Review for B-alkyl Suzuki Coupling Reaction: Danishefsky, S. J.
et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40,
4544.
通常炭素-ホウ素結合は強く(有機ホウ素化合物は安定に存在しうる)、そのままではトランスメタル化は起こらない。このため当量以上の塩基を加えトランスメタル化活性なボレート型にしてやる必要がある。(それゆえ塩基性条件下に不安定な化合物には用いることができないという欠点もある。)

近年のクロスカップリングの進歩はめざましく、低反応性のアリールクロライドも反応に用いることができるようになった。[6,
7]

本反応の高い官能基選択性を活かし、Palytoxinの全合成が達成されている。分子量が巨大になるほど反応点同士の接近確率が低くなるため、一般にクロスカップリング反応は困難になる。本合成において岸らは、水酸化タリウムを塩基として加えることで劇的に反応性が向上されることを見出している。[8]

sp3炭素-ホウ素結合はトランスメタル化が遅く、トランスメタル化しても速いβ-水素脱離が優先するため、カップリングに用いることが難しいとされてきたが、数多の研究の結果、これに最適な触媒系が発見されるに至った。この結果本反応の適用範囲がかなり拡大され、複雑な化合物の炭素骨格構築に頻用されている。[5]
例) Ciguatoxinの合成研究[9]
三環性化合物の収束的合成にB-アルキル鈴木クロスカップリングが用いられている。 相方のエノールホスフェートはエノールトリフラートに比べ安定性の面で優れている。

例)有機ホウ素化合物を経由しない鈴木クロスカップリング[10]
9-BBN-OMeと任意の有機リチウム試薬/Grignard試薬の反応によりボレートを前調整し、鈴木カップリングを行う手法。特にメチル・アルキニル基の場合、ハイドロボレーションで試剤が調整できないため、本法の有用性が高い。

例)2級アルキルハライドとの鈴木カップリング[11]
通常酸化的付加後の金属-アルキル中間体はβ水素脱離によって速やかに分解する。2級アルキルハライドの場合にはそれが顕著であり、これまでに成功例はなかった。FuらはNi触媒と配位子の膨大なスクリーニングの結果、この困難なカップリング反応を実現させている。

[6] Fu, G. C. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1999,
37, 3387.
[7] Buchwald, S. L. et al. J. Am. Chem. Soc. 1999,
121, 9550.
[8] Kishi, Y. et al. J. Am. Chem. Soc. 1989,
111, 7530; ibid. 1994, 116,
11205.
[9] Sasaki,M.; Tachibana, K. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2001,
40, 1090.
[10] Kalesse, M. ChemBioChem 2000, 1.
171.
[11] Fu, G. C. et al. J. Am. Chem. Soc. 2004,
126, 1340.
・Boronic
Acids
・Palladium
in Organic Synthesis (Topics in Organometallic Chemistry)
・Palladium
Reagents and Catalysts
パラジウム化合物を用いる有機合成反応をこの分野で非常に著名な辻二郎先生が書いた本。過去35年のorganopalladium化学の研究、反応メカニズムに従ったすべての反応の合理的な分類、パラジウム触媒反応のリミテーションなど盛りだくさんです。
・Metal-Catalyzed
Cross-Coupling Reactions
カップリング反応の現在の開発と用途を、批判的に分析することによって解説。シリコン、銅、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、およびホウ素試薬等を用いたカップリング反応について詳細に述べています。
・Brownヒドロホウ素化
・野崎−檜山−岸カップリング
・薗頭−萩原アセチレンカップリング
・根岸クロスカップリング
・溝呂木-Heck反応
・檜山クロスカップリング
・熊田-玉尾クロスカップリング
・Stilleクロスカップリング
・有機って面白いよね!!「パラジウムと有機合成」
・有機って面白いよね!!「Pd触媒を必要としない(!?)鈴木カップリング反応」
・炭素をつなぐ最良の方法・鈴木カップリング
(1) (有機化学美術館)
・炭素をつなぐ最良の方法・鈴木カップリング
(2) (有機化学美術館)
・ひらめききらめく:/1 「創」のとき、夢の鼓動 /北海道
(ケムステニュース)
・Boronic
Acid Compounds for Suzuki Coupling Reaction (PDF: 和光純薬)
・Organoborane
(Wikipedia)
・Suzuki Reaction
(Wikipedia)
・Gregory Fu's Reserch
Group (MIT)
・Stephen
Buckwald's Research Group (MIT)
さらに 鈴木カップリング で検索
|