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化学業界のアウトソーシング

   

  近年、情報技術(IT)の進展、長引く不況、企業の肥大化とあいまって話題となっている言葉の一つに『アウトソーシング』というものがある。

  今回はこのアウトソーシングとは何か?、化学業界のアウトソーシングについて簡単に触れてみよう。

 

アウトソーシングとは

 

 アウトソーシングはここ数年、経営の合理化の一手段として注目されるようになった概念で、「企業や組織のすべての業務を見直し、効率・コスト・品質などの観点より、自社でやるべきものと外部の組織を活用するものを判断し、可能な限り外部の組織を活用しよう」という考えである。簡単にいってしまえば、広義の「外部委託」といったところであろう。

 

 近年の、情報技術分野の発達により、1980年代に米国で情報システム部門のアウトソーシングが注目されるようになり、それが広報、経理、研究開発等の他部門へと普及していった。その経営手法が、ここ数年の間に日本にも伝達され様々な分野でその動きをみせている。

 

そうなると現在普通に行われている、コンサルティングや人材派遣、業務代行もアウトソーシングになるのか、という疑問があるだろう。

 

 実際それとは異なり、図1のように、コンサルティングは企画と設計のみ行い、人材派遣は人材を置くだけで、企画、設計、運営は企業の支持により行われる。業務代行は企業が、企画、設計したものを運営するのみである。

 そして、業務の企画、設計、運営まですべてを外部で行うのがアウトソーシングということになる。

 図1 アウトソーシングの位置付け

 

 専門分野ではない部門を、外部の専門的な機関にすべてを任せることにより、合理化、コストの削減が大きく期待されるが、欠点もいくつかある。

  1、その業務に対するノウハウが社内に蓄積されない

  2、企業秘密の漏洩問題

  3、外部に委託することによって、多くの人手が必要なくなるためリストラが起こる

 

 1、2は社内にアウトソーシングした仕事の内容を把握、監視できる専門家を置くことによって解決できるが、3はアングロサクソン方式になれていない日本にとってははじめは大きな問題になるかもしれない。

 それでは次に、本題の化学業界のアウトソーシングについて話してみよう。

 

化学業界のアウトソーシング

 

情報技術(IT)部門のアウトソーシング

 

 このところの情報技術の発達により重要度が増していく中、化学系企業にとってネックになっているのが情報システム部門である。自社だけでは業界の先端技術を維持するのが困難な状態になっている。そこで、部門ごと情報システム関連をアウトソージングしてしまえという考えが増加している。

 1996年12月、化学メーカー大手デュポンは、CSCとアンダーセン(現アクセンチュア)の2社と総額40億ドルのアウトソーシング契約を結び、業界を驚かせた。それまでデュポンは、社内情報システム部門がアウトソーシングしている企業よりも効率よく運営されていることで知られており、現に、同社のCIO(最高情報責任者)を務めるシンダ・ホールマン女史は、インフォメーション・ウィーク誌から「1995年CIO最高勲章」を受けたほどである。同社は「アウトソーシングしない」という決定を下してから1年も発たないうちに、その決定を180度転換し、大幅なアウトソーシング契約を発表したのである。デュポンの例は、米国企業にとっていかにアウトソーシングが不可欠なものになってきているかを表わしている。

 

 これは米国の例だが情報システム部門のアウトソーシングは日本の化学業界でも盛んに行われている。

 

研究開発、R&D部門のアウトソーシング

 

 研究開発のアウトソーシングは=「外部委託、外部発注」と思われがちで、それなら現在でも頻繁に行われているであろう。しかし、前述したように理想はもっと広義のものである。

 現在、日本では、ファイン・ケミカルの受託ビジネスが活発化している。その中心となっている製薬業界では、医療費の抑制、薬価の大幅引き下げにより、新薬開発における採算性の追求が強く求められるようになっている。その一方で、国民医療費は、急速な高齢化の進展により、成人病の増加、要介護者等の急増が見込まれ、2010年には68兆円、2025年には141兆円にも膨れ上がると予測されている。国民の4人に1人が65歳以上の高齢者という21世紀では、国民医療費の負担が国家財政を破綻させる可能性が高いとして、医療費抑制策が実施されている。
 21世紀に成長産業として発展していくためには、製薬業界も変革を求められており、そのため経営を新薬開発に集中させ、これまでの医薬品製剤のアウトソーシングに限らず、原体・中間体の製造をアウトソーシングすることにより新たな設備投資金カット、製品開発基盤の短縮等で新薬開発のコストダウンを図ろうとしている。

化学系の企業は製薬業界のアウトソーシング

を受ける場として成長していくことも考えられるが、自身のアウトソーシング自体は製薬業界に比べてやや遅れをとっている。表1は研究開発費に対するアウトソーシングの費用とその相手であるが、1998年の古いデータといっても他の業種に比べて少ない。また、相手先には民間、外国が多く大学が少ないというのも現状である。

業種

 

研究開発費比

(%)

相手

大学 民間 外国
総合化学・繊維 4.01 14.7 56.4 27.9
その他の化学工業 2.84 23.3 48.6 28.1
医薬品 16.98 10.7 40.1 48.1
自動車 28.66 0.3 96.0 3.7
製造業平均 8.86 3.5 81.5 15.1

表1 研究開発アウトソーシング(1998)

(抜粋:「人事評価とアウトソーシング」)

 

アウトソーシングの展望

 

アウトソーシングできるものをすべて行うとどうなるのか。それが『バーチャルコーポレーション』という概念です。つ

まり、開発とマーケティング戦略といったもの以外をすべてアウトソーシングし、仮想的な企業を作るということです。具体的な運用例は他の業種では多々見られるが純粋な化学系では現状では存在しない。遅れているのか、実際にやるのは難しいのか、または他に理由があるのかそれは私にはさっぱりわからないが面白い考えだとは思う。

 しかし、もしそうなれば製造等に設備のかかる化学系でもあるその分野の若手研究者が集まり、ひとつのベンチャー企業を作り、研究開発等以外をアウトソーシングしバーチャルコーポレーション化すれば、その分野の大手化学企業より売上高が高くなるということも考えられる。ベンチャー・キャピタリストのように資金源も必要なので、現状では理想であるが。

 

 以上簡単にアウトソーシングについて書いてみました。間違っていたらごめんなさい。

 化学って面白いよね!!(全く化学じゃない・・・)

(2001.3.5 by ブレビコミン)

 

参考、関連文献

 

・「人事評価とアウトソーシング」 化学 Vo.56 No,2(2001)

・アウトソーシングがわかる本 日本能率協会編(1997)

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/9909/0910.html

 

関連リンク

 

受託製造技術検索

アウトソーシングは、日本企業変革の「決め手」

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/9909/0910.html