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リサイクル、廃棄物処理の化学

  

 私事ですがこのたび実家が浜松市から磐田市に移転しました。新しい実家に初めて行った私は周辺の広々とした茶畑に驚かされた。  

  実家にいる母に「ここ不便なこと無いのか?」と聞いたら「ごみが出せない」いう答えが返ってきた。

「なぜ?」と聞いたら自治会がごみ置き場を管理していて自治会費を払わなければごみをだせないらしい。私の両親はよくわからない団体に入るのが嫌いで自治会を断ったらそういうことになったという。また、ごみの分別がとてもきびしいらしく8つくらいに分類して捨てなければならない。東京では考えられない話だ。実際このような理由でわが実家の周辺には不法投棄されたごみが散らばっている。

事実どうしてそこまで分別、管理をするのか私には理解できなかった。ごみの処理に関して知識が乏しいことに思い知らされた私は、ごみ排出量とそのリサイクル、廃棄物処理について改めて調べてみることにした。

 ちょっと化学とは外れてしまうことかもしれないがご容赦ください。

 

ごみ排出量、リサイクル率   

 

 21世紀の1つの課題はごみ処理問題であろう。新しいものを作れば古いものがいらなくなる、それはどうなるかといったら最終的にはごみになるというのが現在の考えですね。これではごみが増えてしまうのはあたりまえです。

 平成9年度の一般廃棄物の排出量は厚生労働省の調査(H12.10.27)によると5170万トン(前年に比べて横ばい)である。これは東京ドーム138杯分(ごみの比重0.3とする)になるという。産業廃棄物排出量約4億5100万トン(前年より多少減少)であった。表1にデータをまとめてみよう。

 

種類

一般廃棄物

産業廃棄物

排出量

5170万トン

4億5100万トン

一人当たり

1112グラム

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リサイクル率

11.0%

40.7%

 表1 平成9年ごみ排出量とリサイクル率(日本)

※リサイクル率(%)={(資源化量+集団回収量)/(ごみの総処理量+集団回収量)}×100

 

 排出量は両方とも前年比で横ばいであり、最終処分場の残余年数(ごみを処理できる期間)も増加しているが、市町村別で見ると残余年数が5年未満の県も6県ある。

 また、産業廃棄物に比べてリサイクル率が悪いことに気付いただろうか?この値を覚えておいて次にリサイクルについて学んでみよう。

 

リサイクル(廃棄物処理)の化学

 

 リサイクルという言葉は goo大辞林 によると「資源の節約や環境汚染の防止のために,不用品や廃物を再生して利用すること。」と説明がなされている。

 つまり人間の血液の循環のように内臓(製造)から酸素、栄養を受け取って心臓から押し出された血液が動脈(流通)を通って、体内で使われた血液が静脈、肺(再処理への道)を通り心臓へ行き・・・・という形が理想ですね。(図1)

 

 しかし実際は、ほとんどの製品が図の静脈や、肺、心臓がの不稼動により、この循環はなされていません。これには経済的、技術的なさまざまな問題が関係してくるからです。それでは実際のリサイクル現状を例をあげて少し見てみましょう。

図1 リサイクルの理想

 

金属材料のリサイクル

 

 金属材料は単体として使われているものが多いため、リサイクルしやすい材料と言える。

 自動車金属材料を例にとってみると、マフラーには排気ガスを清浄化するための三元触媒(NOx,HC,COの3つを同時に低減する触媒)が使われており、プラチナ、パラジウム、ロジウムといったレアメタルが使われているためある程度高値で売却される。その他、エンジン部分等の部品は金属の種類別に分けられこれもリサイクルされる。しかし、塗料が塗られているボディーは、塗料中に水銀、カドミウム、クロム等が含まれているため、純金属としても利用できずリサイクルのコストも高くなる。しかも水銀、カドミウム、クロム等は毒性があるため環境に悪影響を与えかねない。ちなみに車にはプラスチックが多く使われているが、そのプラスチックを分別し再利用することは困難であまり利用されていない。

 

有機化合物(主にポリマー)のリサイクル

 

 ポリマー(プラスチック)には皆さんご存知のように多種類存在する。もちろん有機化合物なので「燃えるごみ」であるのだが、焼却炉の性能等より塩化水素、ダイオキシンを発生したり炉が痛む可能性があるので地域によっては「燃えないごみ」として扱われる。

 プラスチックは3つのリサイクル方法がある。

1、サーマルリサイクル(thermal recycle)

 熱源として再利用する。基本的に石油から出来ていて、炭素と水素、酸素を含んでいる有機化合物なので燃やせば石油よりは燃焼率は低いが燃料となる。だからごみと燃やせばよく燃える。

2、ケミカルリサイクル(chemical recycle)

 種類別にプラスチックを分別し、化学的に処理すれば燃料油や燃料ガスとして使用することができる。コスト面で厳しい。

3、マテリアルリサイクル(material recycle)

  2のケミカルリサイクルもここに入るのだが、単一樹脂に選別して、再び加工原料に再生する方法。これがもっとも身近で多く実施されている方法。

 

 (超臨界での分解や生分解プラスチックにする方法もあるが、まだ運用段階ではないので省きます。)

 

 しかし、すべてのプラスチックにおいてそれが適用できるわけではない。ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン(図2)等の塩ビ樹脂は単一樹脂としては最もマテリアルリサイクルされている樹脂であるが、PETボトルの材料であるポリエチレンテレフタラート(図3)等に一定以上混入するとPETボトルはマテリアルリサイクルできなくなる。

 また、これらの塩素を含む樹脂はサーマルリサイクルするとき炉の性能が悪いと塩化水素やダイオキシンが発生する可能性がある。

図2 ポリ塩化ビニル(左)とポリ塩化ビニリデン(右)

図3 ポリエチレンテレフタレート(PET)

 よってこれらは「分別」が大事になってくる。前述したリサイクル率の差はここででてくる。つまり、産業系廃棄物は量がまとまるため再生業者によって分別され回収されているが、一般廃棄物の場合、捨てる際の分別が非常に大事になる。もちろん、処理場でも分別はしているのだが、正確な分別はできません。これはプラスチックだけでなく他の材料にも言えることである。

 プラスチックの分別ガイドというページがありましたのでこれを見て分別しましょう。(塩ビについては一部誤解文章あり。)

 

ガラス材料のリサイクル

 

 完全再生できる数少ない工業製品のひとつである。ガラスは単純に言うと珪砂(ケイ素化合物)、ソーダ灰(Na2CO3)、石灰(CaO等)を混ぜて高熱融解したものであるから、再び熱してやれば元に戻る。しかし、1升ビンとビール瓶は90%の回収率であるが、その他のビンは10%も満たない。なかには回収されていないものもある。これは回収コストの問題で静脈経路が発達していないという問題がある。

 

以上簡単に述べてみたがどうだったであろうか?意外と知ってそうで、知らなかったことがあったと思います。

リサイクルはその方法やものの種類によって一概に資源の節約や、環境汚染の防止にはなっているとは言えませんが、有効な手段である。

 結論として本当は技術的な解決を書きたかったのですが、私は現段階での経済面を含めた考えではリサイクルの限界を感じました。もっと根本的なものから変えていかなくてはならない気がします。そこにはコストがかかります。しかしそれを避けていては未来は無いように思う。消費者にできることは「ごみの性質を知り分別すること」はもちろんのことだが、将来もしごみを廃棄するのににお金がかかるような場合にそれに協力することではないでしょうか。そこで協力できなければ後々自分に障害が降りかかってくるのは防ぐことができないでしょう。

さっぱり化学とはかけ離れたお話になってしまいました。

 

 ちなみに私の両親は市に現状を話したところ、ごみ処理場に直接もっていくことになり、実際ごみ処理場に直接持っていくとお金がかかるのですが無料で処理してもらっています。もちろん分別はしなくてはなりませんが。

(2000.1.15 by ブレビコミン)

 

参考、関連文献

 

・プラスチックのリサイクル100の知識 プラスチックリサイクル研究会 東京書籍(2000)

 

・リサイクルの幻想と現実 黒井尚志 ダイヤモンド社(1994) 

 

リサイクルのための化学 日本化学会編 大日本図書(1991)

 混ぜればゴミ、分ければ資源。地球環境にやさしく限りある資源を有効に利用するためのリサイクルに必要な役割と現状を知ろう。

 

高分子とそのリサイクル―分ければ原料、混ぜれば焼却高分子とそのリサイクル―分ければ原料、混ぜれば焼却

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関連リンク

 

NIPPOINTERNET > 一般廃棄物の排出量 産業廃棄物排出量

goo大辞林

プラスチック分別ガイド

環境化学関連サイト