Chem-Station-WhatsNew!-BBS-GuestBook-Chat-オークション-サイトマップ


相関移動触媒

  

 まず初めにSn2反応における溶媒効果について説明しよう。

 

Sn2反応における溶媒効果

 

 Sn2求核置換反応を DMSO(ジメチルスルホキシド) や DMF(ジメチルホルムアミド) のような 極性非プロトン性溶媒 polar aprotic solvent 中では、反応が速やかに進行する。それはこのような極性非プロトン性溶媒中では求核試薬はほとんど溶媒和されておらず(水素結合することができないから。)、そのため非常に強い反応性に富んでいるからである。

 求核試薬の反応性を高めるとことは重要な意味を持っている。もしかしたら何時間とか、何日もかかる反応が、数分間で終わるかもしれない。

 それじゃあどんどん使えばいいんじゃない?と思われる方もいるかもしれないが、残念なことにDMSOやDMFのような溶媒は、いろいろな欠点を持っている。
  
  第一にこれらの溶媒は沸点が以上に高いので、除去するのが困難であるとい うこと。
  第二に精製に時間がかかる上に、高価であるということ。
  第三に高温では一部分解してしまうということ。
  である。
  
 それでは、どのような溶媒を使ったらいいか?
 Sn2反応の理想的な溶媒は、炭化水素や塩素化炭化水素のような 無極性非プロトン性溶媒 nonpolar aprotic solventであろう。これらは低沸点で、しかも比較的安定である。しかし、炭化水素や塩素化炭化水素はイオン性の化合物を溶解しにくいため、Sn2反応にはほとんど用いられてなかった。

 

 そこで考え出されたのが「相関移動触媒」という方法である。

 

Sn2反応における溶媒効果

   

 例としてシアン化ナトリウムとハロゲン化アルキルのSn2反応における相関移動触媒を 図1 に示す

相関移動触媒をもちいる反応では、溶媒として互いに混じりあわない二相系が用いられる。
     

 図1 相関移動触媒を使った反応の例


 一方は、イオン性の反応物を溶かす水相で、もう一方は有機反応気質を溶かすベンゼンやクロロホルムなどの有機相である。このように二つの物質を別々の相に分けて反応させたのでは互いに接触しないから普通は反応しない。
  ところがこれに相関移動触媒Q+X-を加えると、イオン性の反応物が有機相に移動し反応しやすくなる。その上、溶媒が非プロトン性であるからSn2反応は速やかにおこる。
  

 有機相に入ったイオン対の求核試薬(CN-)は基質RXと反応する。陽イオンQ+は再び同じことを繰り返す。このサイクルはすべての求核試薬、または基質が反応してしまうまで繰り返される。
  

  相関移動触媒Q+X-としてはハロゲン化テトラブチルアンモニウムのようなハロゲン化第4級アンモニウム(R4N+X-)がよく用いられる。また、ホスニウム塩、クラウンエーテルcrown etherも相関移動触媒として用いられる。
  
  相関移動触媒を使った反応の例を次にあげる。
   
   CH3(CH2)7Cl               →              CH3(CH2)7CN (95%)
                      R4N+Br-、NaCNaq : 105℃         


  反応は2時間以内で完了し、置換生成物を95%という高い収率で与えた。
  
   
 このように相関移動触媒を使って、Sn2反応性を上げ、反応時間を短くすることができる。また、これはその他の反応にも応用できる。
  なお、参考までに E.J.Corey.JACS 1998 , 120 ,1300-13001 では相関移動触媒として第4級cinchonidinium塩を使って、3位酸化プロピオンエステルのアルキル化を高いエナンチオ選択性で得ることができるということが紹介されている。

各自勉強してみよう!有機って面白いよね!                                                                    

 (2000/6/15 ブレコミン)

 

参考文献
・E.J.Corey J.Am.Chem.Soc.120,13000 (1998)

・ソロモン有機化学

・大学院講義有機化学 野依良治等

【用語ミニ解説】

 

DMSO,DMF

 

 

 

SN2反応

 

二分子求核置換反応。求核剤が炭素に対して、脱離基の背面から衝突することで反応が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

光学活性相間移動触媒

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E.J.Corey

 

(写真:nobelprize.org)

 

Elias James Corey。ハーバード大教授。合成化学の権威。1990年「有機合成の理論および方法論の開発」でノーベル化学賞を受賞。Corey-Bakshi-Shibata還元向山-Corey法Corey-Winter法 Corey-Kim酸化Corey-Fuchsアセチレン合成と多数の人名反応を開発し、これらの反応を用いて多くの天然物の全合成を行った。