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有機化学にコンピュータは必要か?

 

現在、パソコンと言ったら何それ?って言う人はほとんどいないだろう。

ここ10年でパソコンが急成長を遂げている。10年前はDOS/VパソコンにはGUIなどなく、MS-DOSという真っ暗な画面であった。はっきり言ってつまんなそうだった。事実そのころパソコンを触っていたひとは「おたく」と言われていた。しかしWindowsなど発達によりこんなにカラフルで面白いことができるようになった。

 

 また、インターネットにより、ほとんどの情報が引き出せるようになり、パソコンの利用を拡大させた。

 今後はどんなBusinessの上でも英語と同じようにできてあたりまえ、ないと仕事にならないという時代がやってくるだろう。

 

 さて、そんな時代に有機化学においてのコンピュータの使用はどうだろうか?

 

 俗に有機合成をやっている研究者は「職人」と言われ、実際に実験を行い、それには多大な技術と経験を必要とする。

 

有機にはコンピュータは必要だろうか?

有機にはパソコンなんてかんけいないのでは?

 

答えはNoである。

有機合成の世界にもパソコンはなくてはならないものである。

 

 まず、第一に報告書を書くぐらいならワープロでもできるが、有機化学に関しては構造式を描くことが重要である。

 

 そこで、構造式エディタとして代表的なものは「ChemDraw」である。ODOOSや有機って面白いね!!のページで使われている構造式も「ChemDraw」で描いたものである。

しかしこれは高い!グレードが一番いい、後に述べる力場計算などができるものになるとアカデミック版でも6万以上もする。

 

これが、買えない人のために、「ISISDraw」というものがある。これはなんとインターネット上で無料で手に入れることができるのだ!しかもエディタとしての機能は大して「ChemDraw」と比較してみても変わらない。

アメリカのHPでもちろん英語なのだがなぜか日本語版も出ている。

 

ダウンロードサイトは「ソフトウェア>構造式作成」のところからいけるので是非ダウンロードしてみてください。

 

さて、でもそんなの手書きでいいじゃん!やっぱりあんまり必要ないと思っている方もいるだろう。確かにそうだ。しかしこれからである。

 

分子構造とエネルギーを理論的に考察し、その化合物の安定な構造を決定する場合(例えば簡単な例としてシクロヘキサンのいす型配座の決定)分子軌道法によって行うのが正攻法であるが、これを大きな有機分子について精度よく行うのは計算時間、経済性の観点から限界がある。

 

つまり、シュレディンガー方程式をつかって、何十個、何百個の分子のエネルギーを計算していくのは至難の業であるということ。そのため、コンピュータを使って理論計算しようということである。これを「分子軌道法と分子力場計算」という

 

(これについては後に別途「分子軌道法と分子力場計算」というトピックスを書きます。)

 

これをつかえば、人間の手では何十年もかかる計算も1日か何時間ですることができ、かなり正確に安定な立体配座を求めることができる。また、前もって理論計算を用いた定量的な立体配座解析に基づいて合成中間体を設計することにより、効率的な合成計画の立案が可能となってきている。

 

これらは、現在でも、盛んに行われているものであるが、これからとなるとどうなるだろうか?

ひとつにコンビナトリアル合成というものがある。 

(これも後に別途「コンビナトリアル合成」で詳しく説明します)

 

これは簡単にいうと、今までのように1:1の反応ではなく100個、100個の原料を使い100×100=10000種類もの生成物をつくってしまおうということなのだが、これをコンピューターで制御してしまおうというという試みがなされている。

 

すごいなー。

ここまでいくと、もちろん基盤は有機合成なのだが、他の分野もかなり絡んでくるのでなんともいえないが、命題はコンピュータの利用にある。

 

これから先、もしかしたら大半の実験はパソコン上で!

という時代が近い未来やってきて、

「ちがうよ、その試薬をクリックして・・それをドラッグして・・ガチャンガチャン(分子の結合する音)」

という光景が見られるのかも知れない。

 

有機って面白いよね!!

        (2000/6/18 ブレビコミン)