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石油化学〜石油化学製品〜

 

 前回の「石油化学Part1」では、(1)石油化学概論と(2)石油製品について紹介しました。今回は得られた石油製品(原料ナフサ)からどのような石油化学製品がどのようにして作られているかを紹介していきたいと思います。

 

(3)石油化学製品概論

 

 石油化学とは、石油を原料として種々の化学製品を作る化学のことである。これは1920年代にアメリカで石油精製の分解工程において生成するオレフィンガスから化学製品を生産したことからはじまっている。現在では、石油のナフサ留分を主原料としている。

 

 石油化学製品は、大きく分けるとオレフィン系製品(ポリエチレンなど)、ポリエステル(合成繊維など)にわけることができる。また、石油化学製品も基礎製品、中間製品、最終製品がある。基礎製品としてはエチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィンのほか、芳香族であるBTXなどの合成原料がある。次に、中間製品にはエチレンから生成する塩化ビニル、プロピレンから生成するアクリロニトリル、ブタジエンから生成するアジピン酸、ヘキサメチレンジアミンなどがある。そして、基礎製品、中間製品を原料として、ポリエチレンなどのプラスチック、ナイロン6、6などの合成繊維、ブタジエンゴムなどの合成ゴムなどの最終製品が出来上がる。

 

 

 

原料

基礎製品

中間製品

最終製品

プラスチック

合成繊維

合成ゴム

オレフィン系

エチレン

プロピレン

ブタジエン

塩化ビニル

エチレングリコール

アクリロニトリル

ポリエチレン

ポリ塩化ビニル

アクリル繊維

ナイロン

ブタジエンゴム

イソプレンゴム

芳香族系

BTX

テレフタル酸

スチレン

ポリスチレン

ポリエステル

PET

SBゴム

表1 原料別の基礎製品、中間製品、最終製品の例

 

 石油ナフサの大半は、表1に示したプラスチック、合成繊維、合成ゴムの三大高分子製品に用いられる。1996年では、プラスチック57%、合成繊維11%、合成ゴム14%と全体の82%三大高分子製品に当てられている。

 

 

(4)石油化学製品の製造法

 

i)プラスチック

 

 a)ポリエチレン

 ポリエチレンはエチレンの付加重合によって得られる高分子で、密度によって低密度ポリエチレン(LDPE:密度 0.910〜0.940)と高密度ポリエチレン(HDPE:密度 0.940〜0.970)に分けられる。

 

図1 ポリエチレン合成概要図

 

 低密度ポリエチレンには、高圧法によって作られる高圧法ポリエチレンとエチレンにα-オレフィンを中・低圧で共重合させる直鎖状低密度ポリエチレンがある。

 高圧法ポリエチレンは約2000気圧の高圧化でラジカル開始剤を加えることによって重合している。多くの枝分かれ構造をもっているため密度が低くなっている。

 直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンに1-ブテン、1-ヘキサンを加え、中・低圧法もしくは気相法で合成される。分子構造は直鎖状であるが、1-ブテンや1-ヘキサンにもとづく分岐を持つために密度は低いが1-ブテンなどとの比によって密度を制御することができる。

 

 高密度ポリエチレンは、低圧法、中圧法、気相法が用いられる。低圧法は10気圧程度の圧力でチーグラー触媒を用いシクロヘキサンなどの溶媒中で合成される。中圧法は30から70気圧、200から300度の条件下シリカ担体のクロム触媒を用い重合させる。

 

 b)ポリプロピレン

 プロピレンの重合によって得られる高分子で、枝分かれのメチル基の立体配座によってアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックの三種類が存在するがアイソタクチック構造のもののみが用いられている。

 

図2 ポリプロピレン合成概要図

 

 四塩化チタン、塩化マグネシウム、有機ケイ素を触媒、トリエチルアルミニウムを助触媒として重合を行うと、高い立体選択性が得られ、アイソタクチック構造のポリプロピレンが得られる。

 

 c)ポリスチレン

 ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンを得た(Friedel-Craft反応)後、脱水素を鉄・クロム触媒で行いスチレンとし、これを重合することによってポリスチレンが得られる。

 

図3 ポリスチレン合成概要図

 

 重合はビニル基の付加重合でラジカル開始剤を加えることによって行われる。

 

ii)合成繊維

 

 a)ポリエチレンテレフタレート(PET)

 PETは、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合反応によって得られる。テレフタル酸はp-キシレンをコバルト・マンガン・臭素触媒で空気酸化することによって合成され、また、エチレングリコールはエチレンを空気酸化してエチレンオキサイドとしたのちに水の水和反応によって得られる。

 

図4 PET合成概要図

 

 b)ナイロン

 ナイロンにはナイロン6とナイロン66がある。ナイロン6は、ε-カプロラクタムの開環重合によって得られ、また、ナイロン66はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によって得られる。

 ε-カプロラクタムはベンゼンを水素化しシクロヘキサンとし、液相酸化によってシクロヘキサノンとし、これをヒドロキシルアミンと反応させオキシムを得た後、硫酸中で加熱するとBeckmann転位を起こし、ε-カプロラクタムが得られる。これを加熱すると開環重合してナイロン6が得られる。

 

図5 ナイロン6合成概要図

 

iii)合成ゴム

 

 a)スチレンブタジエンゴム(SBR)

 スチレンとブタジエンを乳化重合法もしくは溶液重合法によって共重合させることによって得られる。SBRは合成ゴムの中でも天然ゴムに近いため、汎用性が高い。

 

 b)ブタジエンゴム(BR)

 ブタジエンを重合することによって得られる。cis-型を多く含む高cis-BRとcis-型が少ない低cis-BRがあるが高cis-BRの方が優れているため、多く生産されている。高cis-BRの重合にはTi、Co、Ni、Nbのいずれかと有機アルミニウムの触媒が用いられ、低cis-BRの合成には有機リチウムが用いられている。

 

 ここにあげたのは石油化学製品の中でもごく一部のものである。一言でいってしまえば「石油」でかたづいいてしまうものからこれだけたくさんの物が作られる。

有機って面白いよね!!!            

  (by ボンビコール)

 

参考、関連文献

 

・石油のおはなし   小西誠一 著  日本規格協会(1999)

・石油化学とその工業  堤繁 著  南江堂 

・新石油化学プロセス  石油化学会編 幸書房(1986)