有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。
5件の総合論文に加え、高橋先生(慶応大)のMyPR、有澤先生(九州大・東北大)の「感動の瞬間」が掲載されています。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:フェンシングから考える有機化学の裾野【オープンアクセス】
今月号の巻頭言は、京都大学大学院薬学研究科 高須清誠 教授による寄稿記事です。
高須先生の学生時代の貴重なエピソードから始まる本寄稿では、フェンシングと有機化学、一見すると共通点のないような両者を支える「裾野を広げる」ことの重要性を述べられています。
医薬品プロセス開発における失敗からの学び
山本裕平*(武田薬品工業株式会社)
本論文は、医薬品候補化合物の製造プロセスにおける予期しなかったトラブルと、その後の対応に関して詳細に述べられたもので、プロセス化学の真骨頂である化合物物性の理解や後処理方法の改良を学ぶことができる、優れたケーススタディーである。実際の事例をもとに、臨場感あふれる表現で執筆されており、プロセスケミストの業務を追体験するのにうってつけである。
σ芳香族性に関する理論および合成化学
斎藤雅一*、宮沢涼平(*埼玉大学大学院理工学研究科)
芳香族性と聞くと、多くの化学者はベンゼンを代表とするπ電子系を思い浮かべる。しかし、芳香族性は本当にπ電子に由来するものだけなのだろうか。本稿では、σ対称性軌道を介した電子非局在化により生じる「σ芳香族性」を取り上げ、理論的背景から近年の合成化学的展開までを概観する。
金触媒による連続反応を基盤とする含窒素複素環のde novo合成法の開発
杉本健士1*、小菅周斗2、松谷裕二3*(1*京都府立大学大学院生命環境科学研究科、2東北大学大学院薬学研究科、3*富山大学学術研究部薬学和漢系)
三重結合へのヒドロアミノ化によるアゾメチンイリドの発生法からスタートし、1-アザブタジエンの発生と、その延長線上に見出されたアザエニンメタセシス反応を基盤として、幅広い含窒素複素環分子の合成に展開されています。シンプルな反応形式も、基質デザインの発想一つで幅広い研究へと展開できることを示した論文となっています。
Ganoderma由来メロテルペノイド二量体の全合成研究

加茂翔伍*(星薬科大学薬学部)
古代より薬効が注目されてきた「霊芝」由来のメロテルペノイド二量体。本作は、いまだ合成知見の限られていたこの薬用資源を標的とし、世界初の全合成を達成した著者たちならではの軌跡を描く総合論文です。最大の見どころは、構築が困難な連続四級炭素立体中心をクリアした、生合成仮説に基づく鮮やかな環化戦略。未だ見ぬ霊芝の薬効メカニズムを分子レベルで紐解く未来の一石となる、有機合成のロマンが詰まったその全貌をぜひ見届けてください。
高歪み化合物の分子変換:テトラヘドランとシクロブタジエン、およびピラミダンの合成と構造

*中本真晃、吉田拡人、関口章(*広島大学大学院先進理工系科学研究科化学プログラム)
シクロブタジエン、テトラヘドラン、ピラミダン。構造を目にしたときには「本当に存在するのか」と疑いたくなるような高歪み・高反応性分子を、これほど自在に合成・変換できるとは。有機化学には広大な未踏の分子空間が広がっており、分子設計の可能性がまだ尽きていないことを思い知らされる。そんな魅力的な化合物が次々と登場する、有機化学の醍醐味が詰まった論文です。
Review de Debut【オープンアクセス】
今月号のReview de Debutは1件です。
Message from Young Principal Researcher (MyPR):精密合成と機能解析が切り拓く新たなグライコサイエンス【オープンアクセス】
今月号のMyPR(Message from Young Principal Researcher)は慶應義塾大学理工学部 高橋大介 教授による寄稿記事です。
高橋先生の学生時代から現在に至るまでのお話に加え、研究の「オリジナリティ」と「クオリティ」について、どのように向き合われてきたかを知ることができるご寄稿だと感じました。
十字路【オープンアクセス】
感動の瞬間:植物の乾燥耐性を制御する合成有機小分子の開発:非対称二環性ウレア【オープンアクセス】
今月号の感動の瞬間は、九州大学大学院農学研究院・東北大学大学院医学系研究科 有澤美枝子 教授による寄稿記事です。
生物活性有機小分子の非対称二環性ウレアの研究に関するご寄稿です。生物活性有機小分子の分子設計において考慮すべき要素から詳しく説明されているため、多くの方にとってためになるとともに、有澤先生の非対称二環性ウレアに関する研究について、どのように展開されてきたのかを追うことができるご寄稿文だと感じました。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。







































