[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

【書籍】パラグラフ・ライティングを基礎から訓練!『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4062577933″ locale=”JP” title=”論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)”]

“文章力は経験では上達しないのです”

最近刊行された『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』(倉島保美 著)は、「論理的文章を書くための黄金律」であるパラグラフ・ライティングの基礎から実戦までを、徹底的に分かりやすく解説した書籍です。

今回は本書のエッセンスをもとに、パラグラフ・ライティングについて紹介してみたいと思います。

パラグラフ・ライティングとは何か?

パラグラフ(paragraph)には、「ある一つのトピックについて述べた文の集まり」という明確な定義があります。冒頭に置く要約文(主張)、それ以外の支持文(補足情報)の2つで構成されます。日本語訳の「段落」は要約文を持たず、複数の内容を混ぜ込んでもOKとされており、これとは明確に異なる概念とされています。

paragraph_writing_2

この構成をふまえたライティング方式が、パラグラフ・ライティングです。あらゆる科学文書(論文、レポート、研究提案など)はもちろん、ビジネスの企画書・成果報告書作成など、一般社会でも広く役立つ方式です。

「学振申請書を磨きあげる11のポイント」(前編後編)でも軽くふれましたが、本スタイルの肝要は「言いたいことを最初に書いてしまう」ことに尽きています。通常よく見る日本語文章=「結論は最後に書く」の真逆です。英語の実用文は、ほぼ全てがこのスタイルで書かれています。たとえば以下はその典型例[1]です。黄色が要約文で、ここだけ拾い読みすれば言いたいことが分かる構成になっています。

paragraph_writing_1
しかし日本語の実務文でも、このスタイルは徹底されるべきです。なぜなら、読み手側が飛ばし読み出来、理解に要する時間を最小限で済ませられるからです。パラグラフの冒頭だけを追えば、言いたいことが伝わる構成だからこそ可能なのです。

多くの実務文は読み手の意思決定に影響を与える目的で書かれています。しかし多忙をきわめる上司・意思決定者(エグゼクティブ)ほど、文書をじっくり読む時間はありません。パラグラフ・ライティングが徹底されないと、どこを拾い読みすれば良いかが分からず、読み手に多大な負担を強いてしまうわけです。もちろん最後まで読んで貰える保証など有りません。

この現実をして「習ってないから」「知らなかったから」で済まされるほど、世の中甘くありません。分かりにくいレポートは単に「認められない」だけです。伝わらない文書はほぼ100%「書き手の責任」なのです。

実践しなくては意味が無い。「沢山書けば上達する」は大間違い!

本書でも述べられていますが、そもそも日本語文章に存在しない概念なので、意識的に訓練しない限り身につきません。これは日本特有の問題というわけではなく、欧米の大学でも学生に1年をかけて教育し、定着させているほどだそうです。スタイルとして身につけるために絶対的な訓練量が必要というわけです。しかし意識的に取り組めば、誰でも身につけられる程度だとも思えます。

訓練の際には、貴重なフィードバック機会をフル活用して取り組むことをおすすめします。

たとえば教育的なラボであれば、学振申請や論文書きの際、文章を跡形もなく添削してくれると思います。日本の学生さんにとっては、実はその一つ一つが貴重な訓練機会なのです。日本の教育過程でパラグラフ・ライティングを訓練する機会は、きわめて限られているのです(少なくとも筆者は、英語・国語の授業で習った記憶はありません)。

またいったん大学を出てしまうと、懇切丁寧に教えてくれる機会もまずありません。他に覚えるべき実務スキルが山ほどあるため、「文章書きは実戦に取り組みながら覚えなさい」と言われるはずです。また実務文の宿命として、書いて配布したらお終い=フィードバックが得られること自体も稀です。

本書の特徴

流石にパラグラフライティングの原則を謳うだけあって、文章全てが徹底的なパラグラフライティングスタイルで書かれています。また、読者に効果を意識させる工夫として、冒頭文(要約文)を太字で表記しています。

つまり本書自体も、見出しと太字だけを読めばざっくり理解できるスタイルで執筆されているわけです。内容を短時間で追える文章の実効性を感じさせるための、教育的な構成となっています。

また学生に優しいお手頃価格(税込924円)であることも魅力でしょう。

今年の学振申請はもう終わりましたが、「時間が無くて上手くかけなかった」「実績が足りなかった」などの理由で消化不良になっている方も多いと思います。来年度のリベンジを果たすべく、今のうちから文章力強化をしておくことをおすすめします。

いくら優れた研究をしていても、伝わらなければ意味がありません。とはいえ何が良いやり方かを知らずして、訓練量だけ増やしても当然ながら大した効果は上がりません。是非本書を下敷きに、書き方の基礎固めをしてはいかがでしょう。

[amazonjs asin=”4062577933″ locale=”JP” title=”論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)”]

関連論文

  1. Whitesides, G. M.; Mathias, J. P.; Seto, C. T. Science 1991, 254. 1312. DOI: 10.1126/science.1962191

関連書籍

[amazonjs asin=”B0058I7TFI” locale=”JP” title=”THE ELEMENTS OF STYLE (UPDATED 2011 EDITION)”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 【速報】HGS 分子構造模型「 立体化学 学生用セット」販売再開…
  2. 第93回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part I
  3. 薬学部ってどんなところ?(学校生活編)
  4. 超原子価ヨウ素試薬PIFAで芳香族アミドをヒドロキシ化
  5. 精密分子設計による高感度MRI分子プローブの開発 ~早期診断に向…
  6. 科学とは「未知への挑戦」–2019年度ロレアル-ユネスコ女性科学…
  7. オキソニウムイオンからの最長の炭素酸素間結合
  8. 光と励起子が混ざった準粒子 励起子ポラリトン

注目情報

ピックアップ記事

  1. ヘンリー反応 (ニトロアルドール反応) Henry Reaction (Nitroaldol Reaction)
  2. おまえら英語よりもタイピングやろうぜ ~上級編~
  3. 第6回慶應有機化学若手シンポジウム
  4. 衣笠反応 Kinugasa Reaction
  5. オンライン授業を受ける/するってどんな感じ? 【アメリカで Ph. D. を取る: コロナ対応の巻】
  6. 第41回ケムステVシンポ「デジタル化社会における化学研究の多様性」を開催します!
  7. 自由研究にいかが?1:ルミノール反応実験キット
  8. 天然物生合成経路および酵素反応機構の解析 –有機合成から生化学への挑戦–
  9. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑥:実験室でも長持ち「ステンレス定規」の巻
  10. 活性酸素を効率よく安定に生成できる分子光触媒 〜ポルフィリンと分子状タングステン酸化物を複合化〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP