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化学者のつぶやき

【書籍】パラグラフ・ライティングを基礎から訓練!『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』

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“文章力は経験では上達しないのです”

最近刊行された『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』(倉島保美 著)は、「論理的文章を書くための黄金律」であるパラグラフ・ライティングの基礎から実戦までを、徹底的に分かりやすく解説した書籍です。

今回は本書のエッセンスをもとに、パラグラフ・ライティングについて紹介してみたいと思います。

パラグラフ・ライティングとは何か?

パラグラフ(paragraph)には、「ある一つのトピックについて述べた文の集まり」という明確な定義があります。冒頭に置く要約文(主張)、それ以外の支持文(補足情報)の2つで構成されます。日本語訳の「段落」は要約文を持たず、複数の内容を混ぜ込んでもOKとされており、これとは明確に異なる概念とされています。

paragraph_writing_2

この構成をふまえたライティング方式が、パラグラフ・ライティングです。あらゆる科学文書(論文、レポート、研究提案など)はもちろん、ビジネスの企画書・成果報告書作成など、一般社会でも広く役立つ方式です。

「学振申請書を磨きあげる11のポイント」(前編後編)でも軽くふれましたが、本スタイルの肝要は「言いたいことを最初に書いてしまう」ことに尽きています。通常よく見る日本語文章=「結論は最後に書く」の真逆です。英語の実用文は、ほぼ全てがこのスタイルで書かれています。たとえば以下はその典型例[1]です。黄色が要約文で、ここだけ拾い読みすれば言いたいことが分かる構成になっています。

paragraph_writing_1
しかし日本語の実務文でも、このスタイルは徹底されるべきです。なぜなら、読み手側が飛ばし読み出来、理解に要する時間を最小限で済ませられるからです。パラグラフの冒頭だけを追えば、言いたいことが伝わる構成だからこそ可能なのです。

多くの実務文は読み手の意思決定に影響を与える目的で書かれています。しかし多忙をきわめる上司・意思決定者(エグゼクティブ)ほど、文書をじっくり読む時間はありません。パラグラフ・ライティングが徹底されないと、どこを拾い読みすれば良いかが分からず、読み手に多大な負担を強いてしまうわけです。もちろん最後まで読んで貰える保証など有りません。

この現実をして「習ってないから」「知らなかったから」で済まされるほど、世の中甘くありません。分かりにくいレポートは単に「認められない」だけです。伝わらない文書はほぼ100%「書き手の責任」なのです。

実践しなくては意味が無い。「沢山書けば上達する」は大間違い!

本書でも述べられていますが、そもそも日本語文章に存在しない概念なので、意識的に訓練しない限り身につきません。これは日本特有の問題というわけではなく、欧米の大学でも学生に1年をかけて教育し、定着させているほどだそうです。スタイルとして身につけるために絶対的な訓練量が必要というわけです。しかし意識的に取り組めば、誰でも身につけられる程度だとも思えます。

訓練の際には、貴重なフィードバック機会をフル活用して取り組むことをおすすめします。

たとえば教育的なラボであれば、学振申請や論文書きの際、文章を跡形もなく添削してくれると思います。日本の学生さんにとっては、実はその一つ一つが貴重な訓練機会なのです。日本の教育過程でパラグラフ・ライティングを訓練する機会は、きわめて限られているのです(少なくとも筆者は、英語・国語の授業で習った記憶はありません)。

またいったん大学を出てしまうと、懇切丁寧に教えてくれる機会もまずありません。他に覚えるべき実務スキルが山ほどあるため、「文章書きは実戦に取り組みながら覚えなさい」と言われるはずです。また実務文の宿命として、書いて配布したらお終い=フィードバックが得られること自体も稀です。

本書の特徴

流石にパラグラフライティングの原則を謳うだけあって、文章全てが徹底的なパラグラフライティングスタイルで書かれています。また、読者に効果を意識させる工夫として、冒頭文(要約文)を太字で表記しています。

つまり本書自体も、見出しと太字だけを読めばざっくり理解できるスタイルで執筆されているわけです。内容を短時間で追える文章の実効性を感じさせるための、教育的な構成となっています。

また学生に優しいお手頃価格(税込924円)であることも魅力でしょう。

今年の学振申請はもう終わりましたが、「時間が無くて上手くかけなかった」「実績が足りなかった」などの理由で消化不良になっている方も多いと思います。来年度のリベンジを果たすべく、今のうちから文章力強化をしておくことをおすすめします。

いくら優れた研究をしていても、伝わらなければ意味がありません。とはいえ何が良いやり方かを知らずして、訓練量だけ増やしても当然ながら大した効果は上がりません。是非本書を下敷きに、書き方の基礎固めをしてはいかがでしょう。

関連論文

  1. Whitesides, G. M.; Mathias, J. P.; Seto, C. T. Science 1991, 254. 1312. DOI: 10.1126/science.1962191

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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