[スポンサーリンク]

一般的な話題

キシリトールのはなし

[スポンサーリンク]

Tshozoです。 

35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を大々的に売り出しました。曰く北欧のある国ではその成分を使っているせいで虫歯になる人の数が少ない、曰くお医者様が推奨している、曰く…という内容だったはずですが、ちょうど筆者の家に初めてテレビが来た時期でもあり有意義情報として頭に刷り込まれましたが、裕福ではなかったのと結構な田舎で供給に問題がありすぐに体験することは出来ませんでした。

で、大学生になり日銭が多少自由に使えるようになったころその成分が含まれた菓子もコンビニに当然のように並んでいて、気になっていた筆者は大学に向かう前にドカっと購入。店を出てすぐ一粒食うと、マスカットのような強い甘さと爽快感があり、ジューシーな感じで確かに他に比べてずっとスッキリしたお味ですぐ気に入ってしまい、自転車に乗りながら信号で停まるたびに一粒口に放り込み、大学につく頃には6粒くらい口にした状態だったでしょうか。不良学生だったのでそれをモグモグ噛みながら授業に出席したわけですよ。確か電磁気学のK先生の授業だったかな…

すると、授業後半あたりからどうも腹具合がおかしい。当時は頑健で何を食べても次の日には回復していましたから心当たりはなく、一体何だと思いつつしばらく苦しみに耐えた後辛抱たまらなくなり、挙手してTeaching Assistantさんに事情を話して御手洗いに駆け込む、という小学生でもあまり見ない失態をしていたことが筆者の黒歴史ファイルの中に御座いました。

お気づきのとおり、筆者は「キシリトール」という成分が含まれたガム(と、たしかタブレットも)を大量に食うたのです。ずいぶん後で見直してみたら、「大量に食べるとおなかがゆるくなることがあります」という注意書きがあるではないですか。筆者はこれを食らったわけですね。

まさかメーカーさんも粒ガム6個とタブレット5個を
一気に食うバカがいるとは
思わないでしょう

で、今回その腹を下した原因が何なのか、、、ではなく、筆者の口腔内の一部が虫歯になってきてしまったため、冒頭の効果が一体どの程度あるものだったのか、当時の文献を含めて調べてみようと思い書く次第です。お付き合いを。

そもそもキシリトールとは 歴史と位置づけ

(本稿、(文献1)、(文献2)、(文献3)の内容を多用します)

キシリトールとは糖の一種で、C5H12O5であらわされる異性体を持った短鎖糖です。自然界に存在し、歴史上もドイツの著名化学者 Emil Fisherらによって1891年にブナの一種の樹皮やシラカバの樹木内から発見・合成されました(文献1)。ショ糖(スクロース)に対し60%のやや少ないカロリーを持ちしかし甘味は強く清涼感があり(佐藤健太郎さんのツイートによると水酸基が多いからだそうで)、体内でインシュリン代謝に関わらないため糖尿病患者に適した甘味料としての使い道があり(文献2・この点応用に重要な意味を持ちます)、在宅医療などの高カロリー輸液にも応用されています。天然物からはイチゴやラズベリー、特に一部の果物(イエロープラム・青スモモ)に非常に多く含まれる成分でもあります。また人間の体内でも生合成の中間体として合成されているらしく(文献1)。。。特徴的な特性としてはメイラード反応(≒砂糖コゲ反応)を受けにくいため黄変しにくいのと、水分と仲が良いことから乾燥につよく、また保存料としての用途があり得るなどの点で、ずいぶん前からどういうものなのかはわかっていたようです。

キシリトール 分子構造 (文献1)より引用 黒=C、赤=O、灰=H
同じ化学式をもつものにアラビトール・リビトールがあるらしい

ただ「希少糖」と呼ばれる部類のこの成分、医療とか薬品とかよほどのニーズが無い限りそうそう量は出ない。一般的な糖分が欲しければサトウキビとかサトウダイコンとか植えてスクロース(ショ糖)を採ればいいわけで。それでも研究開発は昔から実施されていて、たとえば1930年代にはアメリカでダイエット用糖分(文献2)として量産が検討されるなどしたようです。この時は動物実験で白内障を引き起こす可能性があるとのことで中断したのですが、実際猿や、特に犬にはあんまりよろしくなく(リンク)ヒトに対してもそれなりに注意して摂取する必要がある成分なのでしょう。毎日キシリトール入りのタブレットを数箱食う、とかやらなきゃ大丈夫なレベルだとは思いますが…

ということでしばらくはアングラ的な扱いだったのですが状況が変わった1回目は1940年代、戦争が激しくなり物流が思うようにいかなくなり砂糖等も払底し調達をどうすんねんとなったあたりでキシリトールをはじめとした希少糖に注目が注がれます。今回の主役になるフィンランドでは気候上サトウキビやサトウダイコンは育ちませんから、手近にあるもので糖分を得るしかなかった。そこで樹皮類から採れないものか、と合成方法を色々と工夫した、というのが背景にありました(文献3)。蛇足ながら、日本の誇る農学化学者薮田貞治郎もこのキシリトールの合成に取り組んだ時期があったことを初めて知った次第です(文献3)。

ただ異性体が何個もある糖分をうまく製造するのはおそらく難しいな…受験の時に異性体の問題でやらかしてあの大学を落っこちたな…とか思って調べるのを躊躇していたのですが意外と強引に出来るもので、その戦争の時代から開発されて現在の主力プロセスになっている方式はリグノセルロースを酸で加水分解してキシロースの高濃度液をつくり、クロマトグラフィーで分離(!)し、そこにラネーニッケルと水素で還元して更に精製してつくる」という力業(文献2)(下図)。当初はそれこそ3000円/kgくらいかかっていたそうなのですが数十年前には1500円/kg、現在では1000円/kgくらいまで来ているようで量産効果とはまことに恐ろしいものです。なおショ糖は100円/kg前後で、まだまだ10倍くらいの差がありますね。

(文献2)より筆者が編集して引用 思ったよりかなり強引
異性体とかちゃんと結晶化レベルで削除できるんだろうか…

ただこれだと金がかかってしかたない。たぶん適切な植物(リグノセルロース)原料を選ばないと採れる量が変わってくるでしょうし、クロマトを挟んでる時点でもう高額臭がプンプンする。またラネーニッケル還元での反応温度は最大200℃・数十気圧以上必要ですし(文献4)、残渣であるNi粉末は粒径次第で毒性が高くなるケースがあるらしく食品に残留させるわけにいかないので徹底的に排除する必要がありここでもカネがかかる。そしてしまいに粗キシリトール純度を上げるのに分離とか結晶化とかやんなくてはいけなくてこりゃ10倍の値段しますわな。(文献4)によると一般的な植物原料は昔からトウモロコシの軸・茎やサトウキビ、シラカバやナッツ?のようなものが使用されるらしく、ヘミセルロースであるXylanが多く含まれることが選定基準だそうです。なお意外かもしれませんが一部のシラカバはメープルシロップに負けないレベルの甘い樹液が採れるらしく、フィンランドの方はおそらくこのことをよく知っていて原料に適用したのでしょう。

しかしいずれにせよ燃費がよさそうなプロセスではない。もちろん他のルートであるエンザイムを使ったルートや発酵を使うルートがあちこちで開拓はされているのですが未だに上記ルートが製造方法のメインを占めている模様。確かにクロマトもラネーニッケル還元も精製も金や労働力の力業でねじ伏せてしまえるので。もちろん上記で挙げている環境負荷等も問題にはなると思うのですがそれを補って余りある商売サイクルが成り立っていると推定されます。そういう意味では収率が多少悪くてもリグノセルロースから一気にキシリトールを合成するマイルドなプロセス、とかの飛んだ開発などの方がいいのかもしれません。

で、こうして出来たキシリトールはお菓子を含む食品類、保湿剤、医療用糖分などなど、特に「替えが利かない」部分での希少糖として使用されるわけです。昭和のころにはここまで活躍する材料になるとはとても思えなかったので、地道に用途開拓を進めてきたメーカ各位の努力の結晶とも言えます。

キシリトールの齲蝕防止効果の信ぴょう性

人前で腹を下しそうになった恨みからキシリトールの効果に対し疑問をいだいていたのが正直なところ。だいたい筆者をはじめ昭和の人間は陰謀論にはまりやすくこの件も値段が高い糖分を消費者に買わせるための一つのキャンペーンだろう、科学的な信ぴょう性なんてなんとでもなる、と思っていたのが調査を始める前の偽らざる本音です。しかし調べていくとそれなりに科学的に立証されている部分があり、自分の反省と勉強も含めてここにまとめておくことにしました。

まず何故砂糖(いわゆるショ糖)が歯に悪いのかですが、(文献5)に初心者にもわかりやすい形で書かれていて、つまりは

ショ糖が口腔内へ進入→虫歯菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)が群れながらショ糖を分解→乳酸放出→口内pH低下→エナメル質溶解→溶解したところに更に虫歯菌増殖(齲蝕という)→以下ループ

という悪魔サイクルが繰り返されるためです。ところがキシリトールはこのミュータンスの分解代謝に乗らないため、乳酸を生成されることなくこのサイクルを止め得る、というのが虫歯の齲蝕を防止するキシリトールの作用原理というわけです。

幼少のころの筆者にトラウマを植え付けたかこさとし氏の名作
今読んでも普遍的 昔の本は基礎がしっかりした内容のものが多かった気がする

この作用についてはフィンランド最古の大学 University of TurkuのKauko K. Mäkinen教授が中心となった研究で、1970年以降50年以上にわたりキシリトールを中心とした糖類の研究を進めてきています。その経過をまとめたのが(文献6)で、多価アルコールとして金属イオンに配位する化学的特徴に興味があったのが同教授がキシリトールに目をつけたもともとの理由のようですが、1970年に歯科学科の教授とコラボし出してからそちらの特性に注力し、同国でキシリトール入りのキャラメルや飲料を使った初期的な臨床で、グルコースやスクロースを含んだものに比較しいきなり歯垢の量が半分近く削減したのがこの物語のはじまりでした。その結果、下記のような国でCaries(虫歯)が高い確率で抑制できたというのが示されています。

(文献6)から引用 ”Caries Reduction”の数値がフィンランドでの
85%以上というのをはじめ、カナダで52%など相当な成績をたたき出した

この表の一番左側を眺めると実施国はお膝元のフィンランドに始まり、旧ソ連、WHOにお願いしたポリネシア、ハンガリー、カナダ、地中海のベリーズ、エストニア…と旧共産圏を中心に確かそうな値が並び・・なんで先進国でトライしなかったのかな?・・・という疑問はさておき(注:フィンランドは旧ソ連と国境を接する関係上、1970~1980年代 西側と連携を進めるには消極的姿勢だったという政治的背景はある)、本丸であろうアメリカでもミシガン大学教授の協力を得て顕著な虫歯発生率の削減を示し、こうしたデータに基づきFDAを説得しようやく適用が承認された、というのが1986年まで。で、その後も確からしいエビデンスは挙がってきており、2000年以降も傾向としては変わらないことから様々な形で利用されているというのが彼の長年にわたる研究の経緯でした。

Kauko K. Mäkinen教授(終身名誉教授らしい)の壮年期のご尊顔
最近はさすがにもう少し御歳を召した感じになっている(リンク)
上図写真はresearchgateから引用 リンク

ただこれらの効果に疑問の声が上がっていなかったわけではありません。たとえばFDA承認後でも2004年に意見書的な文面(文献7)でオランダのC. van Loveren教授は真っ向から反論、「There is no evidence for a caries-therapeutic (筆者注:”preventive”でないのに注意) effect of xylitol. These conclusions are in line with those of recent reviews and with the conclusions of the Scientific Committee on Medicinal Products and Medical Devices of the EU Commission」(大意:証拠がねぇのにキシリトールに治癒的効果があるってどういうことだ、EUの医薬部局もツッコミ入れてんじゃねぇか)とケンカ腰な内容を発表しています。またカナダ Dowes教授からは「Xylitol as Caries Prevention?」と題し「(大意)何故(文献7)のような自分の研究に不利とも考えられる文献を引用しないのか?」「キシリトールの齲蝕防止効果は唾液(saliva)分泌促進の方が主要で、キシリトール本体による効果無くて副次的なもんなんじゃねぇか」という内容を含む質問状が飛んだりしていて(文献8/これに対するMäkinen教授のコメントも載ってますが正直歯切れが悪い印象を受ける)、特に後者の点は筆者がキシリトール入りのガムを噛んでいた時に確かに実感できたものだけに考えさせられるものでした。唾液だけならそれこそ糖分の少ないガムでも噛んどきゃいいんですもんね。

このように一部の再試で統計的に効果が発現できない(有意でない)という結果が出てきていたりしている。また、東側に偏った実証国の中でキューバのような製糖が盛んな国ならともかく、何故あまり経済発展していない、糖分摂取があまり多くなさそうな国を中心にデータを収集したのか、など、今考えてみれば色々疑問が残る調査だったというのも輪をかけているようです。

じっさい、その後発表された本件に関わる非常に重要な論文である(文献9)で、20歳以上の大人を中心としたClinical Trialで「効果ナシ」が結論づけられてしまって(Clinical Trial=治験で、より厳密な効果をみたもの)これはなかなか不利な話。特にこの(文献9)はJADA(アメリカ歯科学会)が中心になって行った、21歳から80歳にまたがるn=945もの参加者を募り、そこから不適格者などを除いたn=691という大規模な人数を対象にチューインガムでなくより材料の影響の大きいトローチを使い(唾液の影響が最小限になる)、プラセボ群、キシリトール投与群を分けて行うという綿密な準備を実施内容に基づいたもの(論文内でも”…this, to our knowledge, is the first large-scale, placebo-controlled, multisite, randomized, double-masked study of xylitol as a caries-preventive agent.”と書かれている)。この結果統計的にもかなり強い結果が得られており、いかにキシリトールが地道な研究に基づく成果であろうと言えどこれをひっくり返すのはほぼ不可能な話ではなかろうかと思うわけです。

(文献9)から筆者が追記して引用  赤線部の値(上のほう)がキシリトール2.69に対し
プラセボ(偽薬)群で2.98と、「効果がある」とはいいがたい数値
なお
サブグループ(論文内Table.3・虫歯治療数量のひどいグループで区分けした場合)では
プラセボに対しもう少し効果はみられるが、どう考えても劇的な効果ではなかった

また2022年に出た各論文データの比較検証(文献10)をみても、年代が古いものほど有利で新しいものほど微妙な効果であることが一目瞭然。こちらはまぁすでに出ている数値を比べただけのもの、という見方もできますし各論文の試験が同じ条件で行われていないのですが、上記(文献9)のデータを見てから解釈すると年代が新しくなるほど齲蝕抑制が悪くなっている印象があり、いかにもいかにもという感じにみえます(平均糖分摂取量が時代と共に増えていることと無関係ではないと思いますが)。というかこうしたメタデータ解釈ですら20%未満(正確には17%程度)しか抑制効果が無い的なものって意味あるんでしょうかね。

(文献10)より筆者が追記して引用 これを見て効果ありとは筆者には言い切れない
なお2006年の「?」を付けた論文はクウェートで障碍者に対し行われたもので
他のケースに比較して明らかに大きく外れており色々疑問が残る

またその一方で、比較的新しい(文献11)でも子供の口腔内の細菌がキシリトールガムで抑制できるか、という試験にたいしまぁボチボチ効果はあるけどよ(ストレプトコッカスミュータンス・SMは抑えた傾向はあるが、もう一つの原因菌と考えれるラクトバチルス菌は抑制できなかった/下図)、という結果に終わったりもしています。

(文献11)の代表図に筆者が加筆して引用 
キシリトール接種でミュータンス菌は「減った」人の割合が23.8%だったが
ラクトバチルス菌が「増えた」人が逆に23.8%いてトータルとしてあんまり意味ナシ、と
解釈できてしまう

このように発見から長期的に色々なされていて口腔内フローラがほぼ固定化してしまったであろう大人にはキシリトール単体では効かないんじゃねぇか、一部の子供にはまぁ効くかもしれんけどよ、というコンセンサスは出来上がっているのが現状のようです。というか糖分摂取量が多いところでは効きにくいというのはおそらく最初からわかっていたんじゃないでしょうか。なので効果が出やすい場所(国)で実施して証拠として広げていくような活動があったことがうかがえます。ただし、幼少~若年者向けの方々に効きやすいというのは比較的確かなようなので、そこらへんにターゲットを絞った虫歯防止活動には十分意義はあるのでしょうかね。ただ日本でのキシリトールの使用についてこうしたControversialな観点を含んで使用を提案するような動きがあんまり見られないのが筆者的に納得いかない点。

結局以上のことをよく見直してみると、筆者に効かないというのも年齢が当時既に範疇外で、また普通にキシリトールだけでなくショ糖を含んだ菓子等を平気でバクバク食べていた(いる)ためだったのでしょう。参考までに本丸のフィンランド歯科医師会が提示している適切な使い方をここで勉強のために記載しておくと(リンク)、

上記フィンランド歯科学会からそのまま引用

大意、「キシリトールは製品内に少なくとも30wt%含まれることを推奨する」「製品にはショ糖、グルコース、シロップ、炭水化物…などを含んではならない(must not)」「口腔内のpHが下がる(≒酸性に傾く)ような製品は避けるべき、ごく少量ならまぁええけど…ただしクエン酸はアカンで、0.05wt%以上なんて絶対アカンで」「以上、製品欄に書いとけよ、言うたからな」・・・ということなので、キシリトールの齲蝕防止効果は結構センシティヴなもので食べてりゃ万能的に防いでくれるというもんではない、とするスタンスが一番妥当かと。そもそも虫歯避けたけりゃ甘いものを避け、定期的に歯磨きを行い、フロスや糸ようじをうまく使って歯についた歯垢を払い、歯石を健康診断で取り除き、クエン酸を避けてマイルドな味の菓子を,,,・・・あれ? これって普通の虫歯防止方策では? とも思ってしまいますよな。

まぁ健康補助食品の先駆け程度の位置づけが一番妥当で、過度な期待は禁物、自分自身の防衛意識をサポートしてくれるアイテムであるという受け取り方がもっとも良いのだと思います。そりゃカロリーオフな甘味として使うとかならまぁいいんですけどキッチリ虫歯予防を謳う以上、なんらかの告知や議論の結果を踏まえた形でご提示頂くわけにはいかないのでしょうかとも思う次第です。仮にも特定ナンタラをうたう食品に使うならば。

おわりに

キシリトール使ってても全然健康な歯になる効果が出ねーぞという筆者の個人的な怨念に基づきそのウラを暴いてやるという邪な動機を育てて調査を開始したわけですが、なんともモニョる結果となりました。もうちょっとこう刺激的な調査結果が欲しかったのですがあんまりなかったですね。筆者の調べが悪いせいかもしれませんのでその都度ご指摘頂ければと思います。

ただ、たとえば鎮痛剤のような一般的に入手できるお薬も万人に聞くわけではなく、その効果はあくまで確率的に議論されるべきものであるという科学的認識に立たねばならんのが本来依って立つ土俵でなければなりません。そうはいってもナンタラ特定ナンタラ系は一言でいうとどうも「胡散臭」がするんですよね。ブルーベリーは目にいいとか、コラーゲンを飲むと肌がプルプルになるとかは信仰レベルの話。時々CMを見ていると・・・まぁ、そういうケースだと思ってしまったのですよ! 少し話はずれますが、キシリトール以前にはチクロやサッカリン、パラチノースなどいろいろな人工甘味料が開発されてきました。特に筆者が幼少の頃のチクロ騒動(発がん性があるという疑いをかけられた・長谷川町子さんの漫画「意地悪ばあさん」にもそういうネタがありました)のヒステリックさを実感として覚えていると、いわゆるショ糖など以外の新参者にはガードが上がってしまうわけで(キシリトールは合成甘味料ではないです)そうした先入観があったことも付記しておきます。

ともかく今回の調査を通じ、筆者が効かなかったのも怠惰な生活習慣や甘いもの好きが過ぎている等、不利に傾く原因があったからだと推測することが出来るようになりました。色々とモニョる部分もあるため今後も反証が出てくるケースもあるでしょうが、そこは何故なのか、という科学的な問いから議論が出来る土壌が出来ているでしょうから健全な形で進めていっていただきたいもんです。

それでは今回はこんなところで。

参考文献

1. “Xylitol : Production and Applications”, International Journal of Engineering & Scientific Research Vol.5 Issue 9, September 2017, リンク

2. “Processes for the Production of Xylitol—A Review”, Food Reviews International, 29:2, 127-156, リンク

3. “五炭糖の意外(?)な利用法” 生物工学会誌 92巻4号 P193, 榊原 祥清 リンク

4. “Xylitol: Production strategies with emphasis on biotechnological approach, scale up, and market trends”, Sustainable Chemistry and Pharmacy, Volume 35, October 2023, 101203, リンク

5. “Trends in Glycoscience and Glycotechnology”, Ilkka HAVUKKALA, 渋谷 直人, 1991 年 3 巻 13 号 p. 372-374 リンク

6. “The Rocky Road of Xylitol to its Clinical Application”, Journal of Dental Research 79(6):1352-5, リンク

7. “Effectiveness of Xylitol in Reducing Dental Caries in Children”, Pediatric Dentistry, Volume 39, Number 2, March-April 2017, pp. 103-110(8), リンク
8. “Xylitol as Caries Prevention?”, C. Dawes, Letters to the Editor, リンク
9. “Results from the Xylitol for Adult Caries Trial (X-ACT)”, J Am Dent Assoc. 2013 Jan; 144(1): 21–30. リンク

10. “Meta-analysis on the Effectiveness of Xylitol in Caries Prevention”, Journal of International Society of Preventive and Community Dentistry, 2022 Mar-Apr; 12(2): 133–138. リンク

11. “Effect of xylitol and sugar-free chewing gums on salivary bacterial count of streptococcus mutans and lactobacilli in a group of Egyptian school children of different ages: A randomized clinical trial”, Future Dental Journal 4 (2018) 216–220, リンク

Tshozo

投稿者の記事一覧

メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

関連記事

  1. 生命が居住できる星の条件
  2. 機能性ナノマテリアル シクロデキストリンの科学ーChemical…
  3. ケムステVシンポ、CSJカレントレビューとコラボします
  4. ラウリマライドの全合成
  5. Appel反応を用いるホスフィンの不斉酸化
  6. 粒子画像モニタリングシステム EasyViewerをデモしてみた…
  7. ナノ粒子応用の要となる「オレイル型分散剤」の謎を解明-ナノ粒子の…
  8. 磁石でくっつく新しい分子模型が出資募集中

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. シグマトロピー転位によるキラルα-アリールカルボニルの合成法
  2. 理研、119番以降の「新元素」実験開始へ 露と再び対決 ニホニウムに続く「連勝」狙う
  3. 高校生が河川敷で化学実験中に発火事故
  4. バイオディーゼル燃料による大気汚染「改善」への影響は…?
  5. ジェームス・ツアー James M. Tour
  6. 昭和電工、異種材接合技術を開発
  7. 第102回―「有機薄膜エレクトロニクスと太陽電池の研究」Lynn Loo教授
  8. 亜酸化窒素 Nitrous oxide
  9. 可視光によるC–Sクロスカップリング
  10. 核酸医薬の物語1「化学と生物学が交差するとき」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

ホウ素の力でイオンを見る!長波長光での観察を可能とするアニオンセンサーの開発

第 615回のスポットライトリサーチは、大阪大学大学院 工学研究科応用化学専攻 南方…

マテリアルズ・インフォマティクスと持続可能性: 環境課題の解決策

開催日:2024/05/29 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

Christoper Uyeda教授の講演を聴講してみた

bergです。この度は2024年5月13日(月)に東京大学 本郷キャンパス(薬学部)にて開催された「…

有機合成化学協会誌2024年5月号:「分子設計・編集・合成科学のイノベーション」特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年5月号がオンライン公開されています。…

電子のスピンに基づく新しい「異性体」を提唱―スピン状態を色で見分けられる分子を創製―

第614回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(松田研究室)の清水大貴 助教にお願い…

Wei-Yu Lin教授の講演を聴講してみた

bergです。この度は2024年5月13日(月)に東京大学 本郷キャンパス(薬学部)にて開催されたW…

【26卒】太陽HD研究開発 1day仕事体験

太陽HDでの研究開発職を体感してみませんか?私たちの研究活動についてより近くで体験していただく場…

カルベン転移反応 ~フラスコ内での反応を生体内へ~

有機化学を履修したことのある方は、ほとんど全員と言っても過言でもないほどカルベンについて教科書で習っ…

ナノ学会 第22回大会 付設展示会ケムステキャンペーン

ナノ学会の第22回大会が東北大学青葉山新キャンパスにて開催されます。協賛団体であるACS(ア…

【酵素模倣】酸素ガスを用いた MOF 内での高スピン鉄(IV)オキソの発生

Long らは酸素分子を酸化剤に用いて酵素を模倣した反応活性種を金属-有機構造体中に発生させ、C-H…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP