有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年5月号がオンラインで公開されています。
5月は毎年恒例の特集号、今年は「次世代モダリティ」にフォーカスしており、今後の創薬に思いを馳せる、とても読み応えのある内容になっています。
昨年までの特集号も含め、分野を学ぶ良い機会として活用いただければと思います(過去の紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください)。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:モダリティ革新の最前線に立つ有機合成化学の使命 次世代モダリティを紡ぐ有機合成化学の力と展望 [オープンアクセス]
今月号の巻頭言は、公益財団法人第一三共生命科学研究振興財団常務理事 青木一真 氏による寄稿記事です。
シクロデキストリン二量体を活用した人工ヘモグロビン錯体の合成と火災等ガス中毒解毒薬としての創薬アプローチ
北岸宏亮*(同志社大学理工学部機能分子・生命化学科)
シクロデキストリン二量体を用いて、水中で機能する人工ヘモグロビン錯体「hemoCD」がいかにして生まれ、そして一酸化炭素中毒の解毒薬という社会的課題へとつながっていったのか。本論文では、超分子化学からの分子設計の妙から、生体内挙動、火災ガス中毒への応用までを一気通貫で解説する。基礎研究が社会実装へと進化する過程を、研究者自身の視点で描いた読み応えのある総合論文である。
211At/18Fセラノスティックペアの創成を志向したネオペンチルラジオハロゲン標識法の開発
上原知也、豊原 潤、田中浩士*(順天堂大学薬学部)
放射線医療の分野では、化学・生物学的特性が等しい分子プローブで体内を診断し、そして治療する「ラジオセラノスティクス」が盛んに検討されています。ここでは、有機合成化学を駆使して、いかに標的分子に対して極微量の放射線核種を化学的に結合させるかが重要なポイントです。本論文では、分子プローブの設計と最先端の化学標識法、そして本分野の将来展望が分かりやすく紹介されています。
核酸医薬創製に向けた新規架橋型人工核酸の開発
山口卓男*、小比賀 聡*(大阪大学大学院薬学研究科)
核酸医薬の作用機序や合成法の基礎から、新規架橋型人工核酸の開発事例までを体系的に解説した総合論文です。分子設計・合成ルートの確立・機能評価という一連の研究展開が詳細に記述されており、有機合成化学の視点から核酸医薬研究の実際と醍醐味を深く学べる充実の内容となっています。
BROTHERS™技術:アンチセンス核酸における有効性と安全性のジレンマに対する速度論的アプローチ
山本剛史*(リードファーマ株式会社)
核酸医薬の臨床応用を阻む「毒性の壁」を乗り越えるための新技術。人工核酸PNAを用いた「BROTHERS™」技術は、毒性の原因となる予期せぬ結合を排除し、いかにして真の標的だけを厳密に識別するのか?速度論的アプローチが生み出す、驚くべき特異性と安全性のメカニズムが解説されています。
有機電解反応と液相ペプチド合成の邂逅:電解ペプチド合成の開発
岡田洋平*、千葉一裕(東京農工大学農学部応用生物科学科生物有機化学研究室)
有機電解反応と液相ペプチド合成―相反する反応条件から本来は交わることのなかった二つの世界が出会い、まったく新しいペプチド合成法が誕生しました。試薬消費を抑えつつ高効率を達成したその戦略は、持続可能な有機合成の未来を感じさせます。電気でつくる次世代ペプチド合成の全貌を、ぜひ本文でご覧ください。
中分子ペプチド合成を指向した新規ジスルフィド結合形成法の開発
田口晃弘、林 良雄*(東京薬科大学生命科学部)
ペプチド合成技術の新展開は、創薬研究の可能性を大きく広げます。本論文では、Npys(3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル)基を基盤とした革新的なジスルフィド結合形成法を開発し、これまで困難だった環状ペプチドの高純度かつ高効率な合成を実現しました。本手法は自動合成機にも応用でき、複雑なジスルフィドペプチドを簡便に作製できます。ペプチド創薬や生体分子研究を加速する本技術の詳細を、ぜひご覧ください。
鏡像型タンパク質の化学合成と医薬探索への応用
岩本直也、大石真也*(京都薬科大学薬学部)
鏡の国にある小型抗体の効率的合成と医薬素材としての活用を目的とした研究を展開している。システインを適切に導入することで、 native chemical ligation (NCL) による小型抗体改変体の化学合成簡略化に成功している。鏡像型小型抗体が低免疫原性である点は興味深く、創薬化学研究へのさらなる活用が期待される。
ダウンストリーム技術革新が切り拓くペプチド・核酸製造の未来
越智俊輔*、國谷亮介、廣山裕太、森元貴之、根本圭崇(ペプチスター株式会社研究開発部)
ペプチドおよびオリゴ核酸合成における企業でのスケールアップ研究に関する論文です。有機合成化学において特に注目されるのは反応開発であることに異論はありませんが、ペプチドやオリゴ核酸などに代表される中~高分子原薬の製造においては、精製・単離プロセスが生産性の高い製造プロセスの構築にとって大きなハードルとなることが、企業研究の現場では広く知られています。筆者らは他企業との協業のもと、独創的なアプローチによって効率的な精製・単離プロセスを確立しています。本論文は企業研究の一端を垣間見ることができる貴重な報告であり、ぜひご一読ください。
タンパク質立体構造データと精密予測が拓く分子設計
山田悠介、田口真彦、南後恵理子*(東北大学多元物質科学研究所)
本論文では、タンパク質立体構造解析におけるX線結晶構造解析の最新動向を概説しています。特に、時間分解型構造解析を可能とするシリアルフェムト秒結晶構造解析や、NanoTerasuでの新たな実験ステーションの構築に焦点を当て、構造予測・分子設計ツールとの連携を含めた先端的な取り組みが紹介されています。











































