概要
化合物の化学構造データやオミクスデータを情報解析するケモインフォマティクスを解説。(引用:コロナ社)
対象者
- ケモインフォマティクスの基礎から最新トピックまでを学びたい大学院生・研究者
- 医薬品開発や材料設計に機械学習・AIを活用したい技術者
- バイオインフォマティクスからケモインフォマティクスへ関心を広げたい研究者
目次
1.ケモインフォマティクスの基本的な考え方
1.1 ケモインフォマティクスとは
1.2 化合物の表現法
1.2.1 グラフ表現
1.2.2 文字列表現
1.2.3 記述子表現
1.2.4 化合物の命名法
1.2.5 その他の化合物の表記法
1.3 化合物データ
1.3.1 基本的なデータの形状
1.3.2 データベース
1.4 分子設計の指針と構造活性相関
1.4.1 構造活性相関の基本
1.4.2 活性に影響を与える化学構造
1.4.3 定量的構造活性相関と各種指標
1.5 シミュレーション
1.5.1 ドッキングシミュレーション
1.5.2 量子化学計算
1.6 機械学習
1.6.1 機械学習の分類
1.6.2 機械学習モデルの解釈性
1.7 ケミカルスペース2.化合物・タンパク質間相互作用解析
2.1 化合物の標的タンパク質・オフターゲット予測
2.1.1 インシリコ創薬
2.1.2 薬のゲノムワイドなスクリーニングの枠組み
2.1.3 化合物の表現法
2.1.4 既知の化合物・タンパク質間相互作用
2.1.5 新たな化合物・タンパク質間相互作用の予測
2.2 化合物の効能予測
2.3 ドラッグリポジショニング3.化合物のオミクス解析
3.1 トランスクリプトーム解析
3.1.1 トランスクリプトームとは
3.1.2 化合物応答トランスクリプトーム
3.1.3 化合物の標的タンパク質・オフターゲット予測
3.1.4 化合物の標的タンパク質・オフターゲット予測の性能評価
3.1.5 疾患の治療候補薬の予測
3.1.6 欠損値の予測
3.1.7 欠損値補完の性能評価
3.1.8 疾患の治療候補薬の予測における欠損値補完の影響
3.2 ディジーゾーム解析
3.2.1 疾患を特徴づける遺伝子発現データ
3.2.2 遺伝子発現パターンを用いた疾患の共通性解析
3.2.3 疾患を特徴づける分子
3.3 レギュローム解析
3.3.1 レギュロームプロファイルの構築
3.3.2 レギュロームに基づく疾患の特徴づけ
3.3.3 疾患と承認薬の相関解析
3.3.4 疾患の治療候補薬の予測
3.3.5 予測された疾患治療候補薬の実験検証
3.4 パスウェイ創薬
3.4.1 パスウェイエンリッチメント解析
3.4.2 既知の抗がん剤のパスウェイレベルでの特性評価
3.4.3 抗がん作用が期待される新たな薬物の予測
3.4.4 パスウェイ創薬手法の性能
3.5 1細胞トランスクリプトーム解析
3.5.1 1細胞トランスクリプトーム
3.5.2 欠損値の予測
3.5.3 欠損値補完の性能評価
3.5.4 欠損値補完の応用―パスウェイ軌道解析―4.分子設計
4.1 分子設計とは
4.2 構造活性相関・構造物性相関
4.2.1 化学構造の表現法
4.2.2 化合物データセットの表現方法
4.2.3 化学構造の数値化
4.2.4 回帰分析手法・クラス分類手法の選択
4.2.5 モデル構築時の注意点
4.2.6 構造活性相関・構造物性相関の例
4.3 化学構造生成
4.3.1 モデルの適用範囲
4.3.2 コンピュータによる自動的な化学構造生成
4.3.3 化学構造生成の例および活性・物性の推定5.構造生成器
5.1 構造生成器とは
5.2 深層生成モデルの基本
5.2.1 全結合型ネットワーク
5.2.2 畳込みニューラルネットワーク
5.2.3 再帰的ニューラルネットワーク
5.2.4 注意機構とTransformer
5.2.5 深層生成モデル
5.3 深層生成モデルを用いた構造生成器
5.3.1 Chemical VAE
5.3.2 REINVENT
5.3.3 TRIOMPHE
5.3.4 EMPIRE6.材料設計
6.1 材料設計とは
6.2 実験計画法・適応的実験計画法
6.3 ベイズ最適化
6.4 一般的なモデルの逆解析とベイズ最適化のそれぞれの特徴7.スペクトル解析
7.1 スペクトル解析の活用例
7.2 スペクトルの前処理
7.3 スペクトルのモデリング例8.ソフトセンサー
8.1 ソフトセンサーとは
8.2 時系列データの特徴
8.3 適応型ソフトセンサー
8.4 適応型ソフトセンサーによる解析例
8.5 プロセス管理付録
A.1 データセットの表現
A.2 最小二乗法による線形重回帰分析
引用・参考文献
索引
内容
本書は、化学と情報科学の融合分野であるケモインフォマティクスの基礎理論から最新トピックまでを体系的にまとめた専門書です。
化合物の化学構造を情報解析する従来の枠組みにとどまらず、化合物応答のトランスクリプトームデータやメタボロームデータといったオミクス情報の解析まで視野に入れた、広い意味でのケモインフォマティクスを扱っています。
医薬品開発(創薬・ドラッグリポジショニング)から材料設計、プロセス管理(ソフトセンサー)まで、産業応用と直結した多彩なテーマを網羅している点が際立っています。
また、各研究項目において機械学習がどのように活用されるかを応用例とともに解説しており、ニューラルネットワーク・カーネル法・ブースティング・スパースモデリングといった手法の実際の使いどころが具体的に示されています。
特に第5章の深層生成モデルを用いた構造生成器では、近年急速に発展したTransformerやVAEベースの手法(Chemical VAE・REINVENTなど)まで踏み込んでおり、最前線の内容をカバーしています。
構成
全8章構成で、第1章で基礎固め → 第2〜5章で生命科学・創薬系の応用 → 第6〜8章で材料・化学工学系の応用という流れで進みます。
生命科学よりの読者も化学工学よりの読者も、それぞれ自分の関心分野から読み進められる構成になっています。
各章はケモインフォマティクス分野で活躍する若手研究者4名が専門領域ごとに分担執筆しており、各テーマの記述に深みと最新性が保たれています。
付録には線形重回帰分析の数理的な補足が収められており、理論的な裏付けも丁寧に整備されています。
なお、3章にはカラー図の関連資料ダウンロードも用意されており、学習の補助として活用できます。
特徴
本書の最も大きな特徴は、ケモインフォマティクスを「化合物の構造解析」という従来の定義を超えて、オミクスデータまで含む広義の枠組みで捉えている点です。
バイオインフォマティクスとの境界が曖昧になりつつある現代的な研究動向を正確に反映しており、両分野の知識をつなぐブリッジ的な役割を果たしています。
また、AIと機械学習を軸に据えた構成も本書の強みです。
各章が独立したテーマを扱いながらも「機械学習をケモインフォマティクスにどう生かすか」という共通の問いで貫かれているため、読者は個別トピックを学びながら自然と機械学習の実践的な知識を身につけることができます。
さらに、医薬品開発から材料設計、プロセス管理まで応用領域を横断している点も見逃せません。
単一の応用分野に限定せず、ケモインフォマティクスが関わるさまざまな産業領域の事例を提示しているため、化学・薬学・材料・情報など異なるバックグラウンドを持つ読者が自分の専門と本書の内容を結びつけやすくなっています。
コロナ社「バイオインフォマティクスシリーズ」の第8巻として位置づけられており、シリーズ全体を通じてバイオ・ケモインフォマティクスを体系的に学ぶ際の重要な一冊といえます。
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