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化学つれづれ草【ある研究者の回想】

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概要

物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生を自由に綴る.福井謙一研究室在籍時の思い出から,アメリカのベンチャー企業で働いたときの経験,そして長く大学教員として教育と研究に携わり,思索した様々を語る.化学・工学分野の学生,教員,研究者それぞれの立場で,示唆に富む話題に出会うだろう.一般の方々も,化学研究の世界や化学者の人となりを知るきっかけになるに違いない.月刊『化学』で8年にわたり連載された好評エッセイが待望の書籍化.

(引用:化学同人

対象者

  • 高校生〜大学生で、研究や科学者の生き方に興味がある人
  • 化学を専門的に学び始めた学生
  • 将来研究者になろうか迷っている人
  • 「なぜ研究をするのか」を知りたい人

目次

Part 1
1 理屈っぽい化学?
2 福井研究室の日常
3 博士課程 考
4 米国のベンチャー企業
5 米国の研究資金事情
6 日本の大学と研究資金
7 妄想と基礎研究資金
8 企業と大学の研究
9 オリジナルな研究
10 理論化学と計算化学
11 分割統治と化学
12 論文不正
13 教育と研究
14 無用の用
15 フロンティア軌道理論
16 頭がよいということ?
17 面白そうな研究テーマ?
18 サイエンスと野暮
19 海外留学のすゝめ
20 ロアルド・ホフマンさん(前編)
21 ロアルド・ホフマンさん(後編)

Part 2
22 伝統と効率
23 思い出の研究
24 人にわかってもらうこと
25 量子力学三題噺
26 プレゼン能力と研究能力
27 専門書籍を書き残すこと
28 外国の研究者との交流
29 お気に入りの教科書
30 理論と実験の研究
31 先生の師匠のこと
32 リチウムイオン二次電池
33 平成時代の回顧
34 統計学の逆襲
35 応用的研究の具体化
36 変わりゆく「学び」のカタチ
37 お隣さんの業界事情
38 新型コロナウイルス感染症と自触媒反応
39 プレゼンに思うこと
40 日本の化学産業界の事情

Part 3
41 女性研究者について
42 応用開発研究にまつわる思い出
43 CNT関連のウラ話
44 研究人生での激ヤバニアミス二題噺
45 経済学賞
46 アーカイブというもの
47 昔の先生がた
48 書いてみたい論文
49 論文の査読
50 思い出の研究 2
51 非晶質材料 more
52 国際的標準化
53 波動関数の一乗
54 気になる用語三つ
55 蒙亨
56 今年のノーベル物理学賞
57 専門書を書き残すこと more
58 一味違うエントロピー
59 歴史的化学論文大賞って何?
60 データコレクトの面白さ

Part 4
61 産高学低?
62 統計学の逆襲more
63 論文投稿とレジリエンス
64 小学生とヘリウム
65 電子相いろいろ
66 データ改ざん again?
67 エントロピー 番外編
68 調和振動幻想
69 鳶が鷹を生むか?
70 諸葛孔明と天然ガス
71 局在性と鏡の国のアリス
72 ノイズの効用
73 悩ましい論文
74 バイオマスと発酵
75 ムーアの法則と日の丸半導体
76 Climb Every Mountain
77 今どき産業スパイ?
78 注目度の高い論文って?
79 朱と水銀
80 パラレルワールドと夢物語

Part 5
81 イノベーション・ボックス税制とは
82 Schrödinger-Zimmer
83 現象のモデル化
84 思想家ボルツマン
85 音楽と情報エントロピー
86 複雑性とフラクタル次元
87 レジリエンス確保?
88 マクスウェルの考え方
89 鉄精錬の歴史
90 物理学者コーンさん
91 霧のカレリアと天然 C60
92 C60 とシュレーゲル図
93 AI讃歌?
94 世の中とのつながり
95 ハゲタカジャーナルって?
96 ラムゼー数?
97 化学史家のもつ興味
98 昔の福井研究室
99 イノベーション今昔
100 最終のご挨拶

内容

本書は、ノーベル化学賞受賞者である福井謙一の下で学んだ田中一義先生が、自身の経験をもとに研究者としての考え方や科学との向き合い方について語った随筆集である。

本書では化学の専門知識そのものよりも、研究者がどのように物事を観察し、疑問を持ち、考察していくのかが中心に描かれている。
さらに、学問分野の壁を越えて学ぶことの重要性や、独創的な研究を生み出すために必要な姿勢についても述べられている。

そのため本書は化学の解説書というよりも、一人の科学者の思考法や研究観を知ることができる読み物となっている。

感想

本書 Part 1 「理屈っぽい化学?」 を読んだ感想を示す。
当該項目はこちらの試し読みより,閲覧可能である。

この一節を読んで印象に残ったのは、先生が最初から明確な目的を持って化学者になったわけではないという点である。
分野の最前線で活躍する研究者というと、若い頃から一直線に研究へ進んだ人物を想像しがちだが、この文章ではむしろ、興味の向くままに進んでいった姿が描かれている。

特に、「理屈っぽい化学」という言葉に惹かれて石油化学科に入ったという話が面白い。
化学は暗記の多い学問だと思われることもあるが、先生にとっては、現象を理由から理解する学問だったのだと感じた。
これは、化学の見方を少し変えてくれる部分である。

また、数学や物理が得意ではなかったと書きながらも、大学で物理化学や量子化学に強く惹かれていった点も印象的だった。
得意かどうかよりも、面白いと思えるかどうかが、その後の学びを大きく変えるのだと思った。
最初から完璧に理解できる分野だけを選んでいたら、新しい研究にはつながらないのだろう。

全体として、この一節からは、研究者になることが特別な才能だけで決まるのではなく、何かを面白がる感覚や、分からないことをそのままにしない姿勢から始まることが伝わってくる。
化学を学ぶ学生にとって、自分の興味の持ち方を考えるきっかけになる本だと感じた。

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