有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。
5件の総合論文に加え、井貫先生(徳島大)の「MyPR」、安藤先生(岐阜大)の「感動の瞬間」が掲載されています。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:ものを分けるということ [オープンアクセス]
今月号の巻頭言は、愛知淑徳大学食健康科学部 吉田久美 教授(愛知工業大学工学部客員教授・名古屋大学名誉教授)による寄稿記事です。
有機合成において「分離・精製」は欠かせない技術です。技術はますます発達しますが、分離やその原理・原則を理解することの重要さも忘れずにいたいです。
固体高分子電解質(SPE)型リアクターを基盤とした分子変換技術
信田尚毅*、跡部真人*(横浜国立大学大学院工学研究院)
本稿では、膜電極接合体に基づく固体高分子電解質リアクターを用いた有機電解合成の展開を概説している。三相界面における電子移動・イオン輸送・物質移動の協奏的制御に着目し、反応設計の進展を体系的に整理している。特に、水素ガスを用いない高選択的水素化反応や、マイルドな選択的酸化反応を実現している点が特徴である。加えて、オペランド分光による活性種および反応中間体の同定を通じて、反応機構の分子論的理解にも踏み込んでいる。本分野の基盤と今後の展開を示す総合論文である。
電子ドナー・アクセプター錯体を基盤とした光レドックス反応の設計と展開
松隈翔路、田湯正法*、大類 彩、齋藤 望*(明治薬科大学)
著者らのジフェニルスルフィドとN–ヒドロキシフタルイミドエステルから形成される電子供与体–受容体(EDA)錯体の発見の経緯と、触媒的EDA反応および電子豊富なアルケンと触媒フリーのアミノアルキル化反応などを紹介。精緻な反応メカニズム解析もあります。合成化学的に有用なケーススタディであり、この系のみならず光レドックス反応におけるEDAの汎用性と将来展望を示した総合論文です。
有機光増感剤を対象とした機械学習法の開発
納戸直木*、斎藤 進*(名古屋大学学際統合物質科学研究機構)
AIが有機合成化学にも変革をもたらしえるかどうかは大きな関心事ですが、これまでは両者をどのように統合するかについて試行錯誤されてきた段階でした。このような状況の中で、有機化学と機械学習の双方に通じた著者らが取り組んできた、有機光増感剤を対象とした機械学習研究に関する総合論文です。
酸化的分子骨格構築を基盤とするtrichodermamide類の統一的合成戦略
君嶋 敦*(大阪大学大学院薬学研究科)
膵がん細胞等に活性を示す天然物trichodermamide類の統一的合成を、独自の「酸化的脱芳香族化戦略」で完遂。光励起一重項酸素とフロー合成の融合により、複雑な酸化骨格の単工程構築と実用的供給を実現した。全合成により10年来の構造誤認を正した成果は、合成による構造検証の重要性を実証するものである。精密な論理設計と革新技術が結実した至極の一報である。
新規エナンチオ選択的スキップジエン合成法の開発と連続不斉環状化合物への展開
平野雅文*(東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門)
天然物や生理活性分子の部分構造としてよく見られる「スキップジエン(1,4-ジエン)」は、一般に合成が難しいです。本総合論文では、キラルジエン配位子をもつルテニウム(0)触媒を用いることで、高収率・高エナンチオ選択的にスキップジエンを合成する新手法を紹介しています。さらに得られた化合物から、連続不斉中心をもつ環状化合物への誘導も達成しています。
Review de Debut [オープンアクセス]
今月号のReview de Debutは1件です。
・有機セレン触媒による効率的ペプチド合成 (慶應義塾大学理工学部応用化学科)藤木翔吾
MyPR:環境がつくる研究のかたち [オープンアクセス]
今月号のMyPR(Message from Young Principal Researcher)は、徳島大学大学院医歯薬学研究部 井貫晋輔 教授からの寄稿です。
「有機化学者として自分は何を担うべきなのか」という考えは、有機合成を扱う研究者として常に意識するべきだと感じます。
感動の瞬間:シアル酸、よく味わうと甘かった [オープンアクセス]
今月号の感動の瞬間は、岐阜大学糖鎖生命コア研究所 安藤弘宗 教授による寄稿記事です。
感動の瞬間に至るまでの思考や努力が臨場感をもって感じられる、素晴らしい寄稿です。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。










































