概要
固体を対象とした,原子レベルのシミュレーションをプログラム演習つきで習得する入門編。(引用:コロナ社)
対象者
- 分子動力学法(MD)を固体材料の強度・物性評価に応用したい学生,若手研究者
- 意欲ある学生
- 他分野の研究者
目次
1.分子動力学法とは
1.1 分子動力学法の概要と歴史
1.2 材料強度物性評価における分子動力学法の位置づけ
1.2.1 分子動力学法の長所と短所
1.2.2 モデリングなのか,数値実験なのか
1.3 汎用ソフトウェア2.分子動力学法の基礎
2.1 原子に働く力とポテンシャル関数
2.2 運動方程式と数値積分
2.2.1 Verlet法
2.2.2 速度Verlet法
2.2.3 Gearの予測子・修正子法
2.3 周期系における計算
2.3.1 周期境界条件
2.3.2 カットオフ距離
2.3.3 bookkeeping(粒子登録)法
2.3.4 領域分割(セルインデックス)法
2.4 アンサンブルと温度・応力制御
2.4.1 速度スケーリング法による温度制御
2.4.2 Nosé–Hoover法による温度制御
2.4.3 圧力(応力)制御法
2.4.4 圧力・温度制御法
2.4.5 拡張系MDにおける仮想質量設定
2.5 構造緩和計算
2.5.1 BFGS法
2.5.2 gloc
2.5.3 FIRE
2.6 ポテンシャル計算に関連する手法
2.6.1 クーロンエネルギーの計算法
2.6.2 カットオフの取扱い
コーヒーブレイク:シミュレーションの「地位」3.原子間ポテンシャル
3.1 2体間ポテンシャル
3.1.1 モースポテンシャル
3.1.2 LJポテンシャル
3.1.3 Buckinghamポテンシャル
3.1.4 BMHポテンシャル
3.1.5 2体間ポテンシャルの問題点
3.2 3体間ポテンシャル
3.2.1 SWポテンシャル
3.2.2 Tersoffポテンシャル
3.3 多体ポテンシャル
3.3.1 EAM(原子挿入法)ポテンシャル
3.3.2 MEAMポテンシャル
3.3.3 ADP
3.4 ボンドオーダーポテンシャル(BOP)
3.4.1 EDIP
3.4.2 Brenner(REBO)ポテンシャル
3.5 より複雑なポテンシャル
3.5.1 シェルモデル・ダイポールモデル
3.5.2 電荷移動ポテンシャル・反応力場(ReaxFF)
3.5.3 機械学習ポテンシャル
コーヒーブレイク:機械学習ポテンシャルの商業化4.分子動力学法による物性評価
4.1 表面・界面のエネルギーと応力
4.1.1 表面・界面エネルギー
4.1.2 表面応力
4.2 バルク部の応力の評価
4.2.1 原子系における応力の定義
4.2.2 ビリアル定理による応力の算出
4.2.3 応力分布の評価法
4.3 理想強度評価と結晶すべり
4.3.1 理想強度
4.3.2 GSF(一般化積層欠陥)エネルギー
4.3.3 結晶すべりの可視化
4.4 構造安定性と臨界荷重の評価
4.4.1 変形解析と構造緩和
4.4.2 不安定平衡の問題
コーヒーブレイク:MDは「異端」?5.プログラミング演習
5.1 MDコア部分の実装
5.1.1 原子3個の配置
5.1.2 Verlet法の実装
5.1.3 3次元への拡張とエネルギー計算
5.1.4 cfgファイルの書き出しと可視化
5.2 周期境界条件の実装
5.2.1 結晶構造ファイルの作成
5.2.2 結晶モデルの計算
5.2.3 bookkeeping法の実装
5.2.4 温度制御
5.2.5 応力計算
5.2.6 平衡状態の格子定数の計算
5.3 ナノワイヤモデルの引張解析
5.3.1 1次元周期境界の適用
5.3.2 原子構造緩和
5.3.3 準静的引張解析
5.3.4 引張解析の継続
5.3.5 緩和前加熱
5.4 EAMの実装
5.4.1 メッシュデータの利用
5.4.2 メッシュデータの作成
コーヒーブレイク:コードを書くべきか補遺
A.1 Ewald法の式の導出
A.1.1 式(A.3)の証明
A.1.2 式(A.15)の証明
A.1.3 式(A.19)の証明
A.2 Tersoffポテンシャルにおける力の表式
A.2.1 初期バージョン
A.2.2 bの微分項
A.2.3 ζの微分項
A.2.4 Multicomponentバージョン
A.2.5 カットオフ関数の微分項
引用・参考文献
索引
内容
この本は分子動力学法(MD)を固体材料の強度評価や物性解析に応用するための理論と実践を体系的にまとめた入門書です。
従来のMD解説書が液体や気体を主な対象としてきた中で、固体の変形・破壊・界面現象といった機械的特性に焦点を当てている点が大きな特徴です。
単に教科書的な説明にとどまらず、周期境界条件、構造緩和、応力・界面エネルギーの計算法、長距離クーロン相互作用の取り扱いなど、固体を扱う上で必須となる実務的な手法を丁寧に解説しており、初学者に対してもおすすめです。
さらに、それぞれの手法がなぜ必要なのかという物理的背景まで踏み込んで説明されており、研究への応用を見据えた視点も得られます。
また、Pythonによる簡易MDプログラムの構築演習が用意されている点も大きな魅力です。
既存ソフトウェアを使いこなすだけでは得られない、アルゴリズムへの理解を深められる構成となっています。
著者のGitHubでプログラム例が公開されているため、読者の学習を後押しすること間違いなしです。
最後に、近年注目される機械学習にも触れており、現在から未来へとつながるMD研究の発展を見渡せる内容になっています。
構成
本書は全6章構成で、初学者が段階的に理解を深められるように工夫されています。
各章の間には コーヒーブレイク として小コラムが挟まれているため、専門性の高い内容でありながらも楽しく勉強が進められます。
特徴
本書の最も大きな特徴は,固体材料に焦点を絞った分子動力学法の入門書としての独自性です。
従来のMD教科書では扱いが十分でなかった固体の変形や破壊、界面現象について、物理的意味と実践的手法を結びつけながら解説しており、材料研究の現場でそのまま活用できる知識を提供しています。
また、理論解説と計算実務のバランスが非常に良いです。
周期境界条件や長距離相互作用の処理、原子間ポテンシャルの選択といった、初心者がつまずきがちな要点を丁寧に説明しており、単なる内部仕様の羅列に終わっていません。
なぜその取り扱いが必要なのかを理解しながら読み進められるため、シミュレーション結果を正しく解釈する力が身につきます。
さらに、Pythonによる自作プログラムの演習があることで、「わかったつもり」で終わらず、手法そのものに深く踏み込むことができます。
既存ソフトウェアに依存せず、アルゴリズムを自分の言葉で理解し改善していく力を養う構成は、初学者だけでなく経験者にとっても有益だと考えられます。
読みやすさへの配慮も見逃せません。
専門的な内容を扱いながら、平易な筆致と随所に挟まれたコーヒーブレイクにより、長丁場の学習を負担なく継続できるよう工夫されています。
さらに最新トレンドである機械学習ポテンシャルへ言及するなど、高度な話題も適切に取り込んでいる点は、今後の研究発展を見据えた構成として非常に良いと感じました。
関連書籍
次の本では Python を用いて多変量解析をどのように実装するか,について詳しく解説しています。
本書を読んで Python を用いた解析を他のトピックについても行いたい!と思った方には是非おすすめです。






























