株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発のディープテック・スタートアップです。北海道大学の伊藤肇先生、久保田浩司先生らが中心となり、2023年11月に設立されました。
ボールミルなどを用いた物理的・機械的な力を駆動力として、省溶媒・無溶媒系でさまざまな反応を実現するメカノケミストリーの産業応用に向け邁進されている注目の企業であり、同社取締役でもある伊藤先生・久保田先生らのご成果はケムステでも度々取り上げさせていただいております (下部・関連記事参照)。
今回は、昨今の中東情勢に伴う危機的な溶媒不足と価格高騰を受けて、設立当初の紹介記事から大幅な成長を遂げたメカノクロス様に、満を持しての再インタビューをお願いしました。以下、インタビュー内容となります。ぜひともご一読いただき、メカノケミストリーにご興味をお持ちいただけますと幸いです。
はじめに –2026年の中東情勢を受けて–
先日ケムステで公開された『2026年、過去最大規模の「有機溶媒危機」が始まった?』という記事を、私たちメカノクロス社のメンバーも非常に強い共感と危機感を持って拝読しました。
まさに今、日本の化学業界が直面している「有機溶媒」にまつわる大きな危機。今回は、この歴史的な危機に対する「メカノケミカル有機合成」の果たす役割についてお話しさせてください。
1.「有機溶媒危機」が突きつけた限界と、メカノケミストリーの真価
ケムステ様の記事でも克明にレポートされていた通り、現在、私たちを取り巻く化学産業は極めて深刻な課題に直面しています。
昨今の中東情勢の悪化をはじめとする地政学リスクを背景に、原油価格が高騰し、グローバルなサプライチェーンが分断されています。日々の実験室の分液漏斗から、工場の巨大な反応釜に至るまで、私たちが当たり前に使っているヘキサンやアセトン、トルエンといった石油由来の汎用有機溶媒に大きな影響が出ています。
「ターゲット化合物を有機溶媒に溶かし、反応を実施するために大量の溶媒を使用する」
これは有機合成における長年の常識でした。しかし現在、そうした溶媒の供給不安が起きています。加えて、PFAS 規制やカーボンニュートラルの要請といった外的要因の煽りを受ける形で、従来法の持続可能性が問われるような状況に陥りつつあると捉えています。
このような困難な状況下において、有機溶媒に依存しない新たな有機合成法である「メカノケミカル有機合成」の真価は発揮されると考えます。
メカノケミカル有機合成は、機械的な攪拌によって有機溶媒をほとんど使わずに反応を成立させます。当技術では、特に溶液系で出発原料が不溶/難溶性であるために反応しない場合において、従来法に比べて大幅な反応速度の向上や、大量の溶媒削減効果に加えて従来法では合成が難しかった新たな化合物を生み出し得るといった効果に期待が寄せられています。
当技術は、従来法と異なり、反応における有機溶媒が削減できるため、グリーンケミストリーの観点から注目を浴びるとともに、有機合成のプロセスそのものの根底から革新をもたらすと自負しています。
溶媒使用量を大幅に削減できれば、海外からの調達リスクや、防爆設備・廃液処理に伴うコスト負担の低減にもつながる可能性があります。私たちはこの技術によって有機合成プロセスのパラダイムシフトを起こし、次世代化学をリードすることを目指しています。
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小スケール向けボールミル装置と反応生成物の写真 |
2. 創業3期目、メカノクロスの現在地
現在創業3年目の私たちは、これまでに累計で20社程度と成約し、有機 EL 材や電池材を含む電子材料領域から化粧品まで多岐に渡る業界の案件に取り組んできました。さらに、一部企業案件では量産化に向けたスケールアップフェーズにも移行しており、着実にメカノケミカル有機合成技術の社会実装に向けた歩みを進めている状況です。
また北海道大学の最先端の知見をコアに据えつつ、日揮様やナード研究所様といった日本屈指の企業様とスクラムを組み、量産機の開発や受託合成事業における連携を推進しています。
こうした活動や支えてくれる顧客の皆さまのおかげ様で、昨今はアカデミック領域からビジネス領域に至るまで、多くの表彰を頂戴し、社会的な認知も進んできたと考えています。
「メカノケミカル有機合成といえば、メカノクロス」
と誰もが認知し、日本を中心とした多くの化学・製薬メーカの皆さまから、いつでも頼られる頼もしいパートナーとなるべく、これからも邁進して参ります。
3. さらなる社会貢献、次世代の化学人材育成への取り組み ~大分上野丘高等学校のみなさんとの「探究学習」を通じて~
私たちのミッションは技術のスケールアップだけではありません。前途有望な若者に「未知の世界にふれる喜び」を届け、次世代の化学をリードする人材を育成することも、重要な役割だと考えています。
こうした想いから、昨年、大分県立大分上野丘高等学校の「グローバルスタディー(GS)」とタイアップして「探究学習」を実施いたしました。
まずはこちら側から提示したテーマについて生徒さん自身に調査・考察をしていただき、実際に来社されるまでの間、佐々木テクニカルフェローがメンターとしてオンラインで質問に答える期間を設け、来社当日は、佐々木フェローが生徒さんたちの調査内容を丁寧に講評し、その後ラボ見学を実施しました。
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*写真の掲載に関しては大分県立大分上野丘高等学校様のご許可を頂いております |
「今回、生徒さんと話して多くの学びがありました。学習に対する姿勢、未知の内容を理解しようとする探究心、自身の将来に対する考え方、そして何事も楽しむこと。私は有機化学に出会って、仕事への向き合い方や考え方が変わりました。ただ、知らなければ出会うことはない。だからこそ、高校生をはじめ多くの子どもたちに知っていただける活動をしたいと思っています」と、佐々木テクニカルフェロー。
当プロジェクトを通して、私たち自身が学びと刺激を得られたことも、非常に嬉しく思っています。
これからも、私たちの掲げるタグライン「Lead Next Chemistry」を実現するべく、未来をリードする次世代人材の教育に積極的に取り組んでいきます。
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<メカノクロス 会社概要>
企業名:株式会社メカノクロス
本社所在地:北海道札幌市北区北 21 条西 12丁目2
北大ビジネス・スプリング
開発拠点:北海道札幌市北区北 21 条西 10 丁目
国立大学法人北海道大学内 北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD) 04-108
代表者名:齋藤 智久
設立:2023年11月
URL:https://mechanocross.com
事業概要:
・溶液有機合成反応のメカノケミカル化技術の開発
・不溶性高機能材料の開発
・上記の製造プロセス導入の実証検証、および、製造装置提供
・メカノケミカル有機合成関連情報発信
本件に対するお問い合わせ
メカノクロス社で一緒に働いてみたい方、また、メカノケミカル実装研究会、弊社との協業にご興味のある方は、以下からお気軽にご連絡ください。
問い合わせフォーム:https://mechanocross.com/contact/
メールアドレス:haruka.kazetani@mechanocross.com
採用フォーム:https://mechanocross.com/recruit/
Linkedin : https://www.linkedin.com/company/mechanocross/
instagram : https://www.instagram.com/mechanocross/
Facebook : https://www.facebook.com/mechanocross
おわりに
メカノクロス社へのインタビューは以上となります。わずか 3 年での大きな発展に、驚きを隠しえません。
裾野が広がりますますの盛り上がりを見せているメカノケミストリー。グリーンケミストリーの観点からのみならず、これまでになかった規模での溶媒の入手困難という新たな問題の解決策としてさらなる期待が寄せられます。
不安定な世界情勢や続く物価高、円安など、研究界隈を含む日々の活動を取り巻く問題は未だ根本的解決の目処が立っていません。そのような状況を打破すべく、基礎から応用までをカバーするメカノクロス社は、ますます目の離せない企業として発展していくでしょう。
関連動画
メカノクロス取締役/北海道大学教授 伊藤肇 先生のケムステVシンポご講演動画
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・メカノケミカル有機合成反応に特化した触媒の開発
・空気下、室温で実施可能な超高速メカノケミカルバーチ還元反応の開発




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