[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

常圧核還元(水添)触媒 Rh-Pt/(DMPSi-Al2O3)

[スポンサーリンク]

一般的な特長

Rh-Pt/(DMPSi-Al2O3)は、優れた活性を示す水素還元(水添)触媒です。ロジウムと白金の二元金属系ナノ粒子(粒子径:5-6 nm)が、ジメチルポリシランとアルミナに担持された固定化触媒であり、回収・再利用が可能、そして金属成分の溶出もありません。

一般的に芳香環の水添反応は高圧条件を必要としますが、本触媒は常圧(1 atm, H2)で進行します。例えば、内部を水素置換した通常のガラス容器に水素バルーンを接続するだけの簡便な操作です。また、触媒をカラムに充填すればフロー反応が可能です。

<特長>

  • バッチ反応、連続フロー反応に適用可能
  • 穏やかな条件で、幅広い基質の芳香環水素化が可能
  • 連続フロー法では、50日間以上の連続運転が可能
  • フロー反応の触媒回転頻度(TOF)はバッチ反応の最大27倍に到達

反応例

基質一般性があり、様々な芳香族化合物の核水添ができます。2環性のキノリンの場合は80℃、10 atmの条件で部分還元された生成物が得られます。

また、本触媒は幅広い医薬品や機能性材料への合成などに適用できます。例えば、アルツハイマー型認知症進行抑制剤であるドネペジルの中間体合成では、同一分子内に2つの芳香環(ピリジン環、4置換ベンゼン環)など複数の反応点がありますが、このうちピリジン環と二重結合のみが還元されます。そのままワンポット法で次工程のベンジル化まで進めて、目的物を高収率で得たと報告されています1)

さらに、還元的クロスアミノ化反応にも適用できます。芳香族アミンの還元条件に脂肪族アミンを存在させることで、N -アルキルシクロヘキシルアミンが効率よく得られます2)。金属ナノ粒子表面上に脂肪族アミンが強く引き寄せられ、アニリンから生じたシクロヘキシルイミンと即座に反応するため、ジシクロへキシルアミンの副生は少なくなります。

フロー反応への適用も・・・

フロー反応の場合は、反応時間が短縮できるこのような高活性触媒が適しています。バッチ反応では実現できない細かい条件設定によって、高選択性の発現、副生成物の大幅な低減などのメリットが得られる可能性があるので、特にフロー反応をご検討中の皆様にお勧めです。試薬の情報やフロー反応の条件など、詳細については関連サイトなどでぜひご確認ください!

 

1) Miyamura, H., Suzuki, A. Yasukawa, T., Kobayashi, S., J.Am.Chem.Soc., 140, 11325 (2018).

DOI: 10.1021/jacs.8b06015

2) Suzuki, A., Miyamura, H., and Kobayashi, S., Synlett , 30, 387 (2019).

DOI: 10.1055/s-0037-1611341

 

関連サイト

Avatar photo

富士フイルム和光純薬

投稿者の記事一覧

「次の科学のチカラとなり、人々の幸せの源を創造する」
みなさまの研究開発を支えるチカラとなるべく、
これからも高い技術とクオリティで、次代のニーズにお応えします。
Twitterでの情報提供を始めました。

関連記事

  1. アスピリンの合成実験 〜はじめての化学合成〜
  2. アカデミックから民間企業へ転職について考えてみる 第三回
  3. 低投資で効率的な英語学習~有用な教材は身近にある!
  4. ポンコツ博士の海外奮闘録⑧〜博士,鍵反応を仕込む②〜
  5. C–NおよびC–O求電子剤間の還元的クロスカップリング
  6. 世界⼀包括的な代謝物測定法の開発に成功〜ワンショットで親⽔性代謝…
  7. 今年の光学活性化合物シンポジウム
  8. 第9回慶應有機化学若手シンポジウム

注目情報

ピックアップ記事

  1. 真島利行系譜
  2. 知られざる有機合成のレアテク集
  3. ケムステV年末ライブ2023開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  4. シクロクラビン cycloclavine
  5. 平田義正メモリアルレクチャー賞(平田賞)
  6. ブルース・ギブ Bruce C. Gibb
  7. リンだ!リンだ!ホスフィン触媒を用いたメチルアミノ化だ!
  8. カンブリア爆発の謎に新展開
  9. 芳香族メタ光環化付加 Aromatic meta-photocycloaddition
  10. ケムステ新コンテンツ「化学地球儀」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP