概要
対話形式で本質に迫る,電気化学の入門書.
勘どころを押さえれば,複雑に見える現象の要点が明快に見えてくる!(引用:化学同人)
対象者
- 化学に興味のある高校生
- 化学専攻の大学生
目次
第1講 「電気分解」は忘れよう
電気分解?
大脱線:化学のカタカナ語はドイツ語読み
見かけによらず「分解」じゃない
「中高校ムラ」の外では「電解」!
「陽イオンが陰極で……」という大ウソ
まとめなど
復習問題第2講 電極のそばはワンダーランド
図で見る電解
いつも心に電位の軸を
1 Vかけた希硫酸——目には見えない大騒乱
電解の素顔(イオンの仕事:電解の舞台づくりと後始末)
復習問題第3講 根元をつかむ(その1)標準生成ギブズエネルギーΔfG°
今回のテーマ:自発変化の向き
粒子集団の気持ち: ① 涼しくなりたい
粒子集団の気持ち: ② 散らばりたい
合わせ技:ギブズエネルギー変化ΔG
反応のΔG値から,物質のΔfG値へ
復習問題第4講 根元をつかむ(その2)化学平衡
「単体」という語
活量のこと
ようい……ドン!
化学ポテンシャル:平衡を演出する量
平衡のイメージ
化学熱力学の心臓部
K値の計算:具体例
復習問題第5講 標準電極電位E°
電子授受平衡,電位のゼロ点
コインの表裏:ΔfG°とE°の相互変換
E°データが語ること: ① 還元体の還元力,酸化体の酸化力
E°データが語ること: ② 電子授受の向きと勢い
E°データが語ること: ③ 電池の最大電圧,電解の最小電圧
E°データが語ること: ④ 化学平衡定数の推算
復習問題第6講 電位の理論値・測定値,ネルンストの式
イオン化列の「ふしぎ発見」
基準電極のこと
式量電位
ネルンストの式:活量が1でなくなれば……
ネルンストの式を使いこなす
復習問題第7講 電解電流(その1)電位が決める電流
賢い生命
平衡論と速度論:化学を前に進めたクルマの両輪
変化の道筋:活性化エネルギーとは?
電位が促す峠越え:分極で変わる活性化エネルギー
電解電流の表現
バトラー・フォルマーの式:電位と電流を結ぶもの
過電圧:反応の「進みにくさ」を語る量
復習問題第8講 電解電流(その2)物質移動が決める電流
電圧のパワー:0.5 Vが3600 ℃ ‼
券売機と律速段階
拡散
電子移動律速から拡散律速へ
電流と時間の関係:拡散層と対流層
サイクリックボルタンメトリー:電子移動と拡散の競演
電解の効率:電流効率とエネルギー変換効率
復習問題第9講 電池(その1)一次電池
まずは雑談
原理は単純,製品は精緻:乾電池の世界
適材適所:身近な一次電池たち
電池の値段は電気代?
温故知新 ①:バグダッド電池?
温故知新 ②:ボルタとデーヴィーの大戦果
温故知新 ③:乾電池ができた1860~80年代
世界史に名を残せなかった男:屋井先蔵
復習問題第10講 電池(その2)燃料電池・二次電池
乾電池(補足):充電できない理由,かつて使われた水銀
燃料電池 ①:芽生えと原理
燃料電池 ②:初期の用途——宇宙開発
燃料電池 ③:民生用へ?
二次電池:古老と若手の共存共栄
気がかりなこと
復習問題第11講 光と電気化学(その1) 太陽電池・光電極反応
光は粒だ:アインシュタインの遺産
電子ボルト(eV)というエネルギー単位
電子は波だ:飛び飛びのエネルギー
光の吸収:アインシュタインの遺産 その2
色の秘密:光子と電子の共同作業
太陽電池の光と影
光電極反応
復習問題第12講 光と電気化学(その2)光合成
光のパワー:ともに強まる「酸化力」と「還元力」
光合成ドラマの舞台:超精巧な分子マシン
光合成の全体像
光合成の効率:驚異と堅実
光合成と生命圏:暮らしも社会も植物の恵み
CO2は悪者なのか?:根拠のあやしい大騒ぎ
復習問題復習問題の解答例
参考書
付録1 基礎物理定数
付録2 標準生成ギブズエネルギーΔfG°
付録3 標準電極電位E°
索引
内容
『電気化学の勘どころ』は、高校化学から大学初年次の電気化学へ進むときに、多くの学習者がつまずく部分を丁寧に扱った入門書である。
電気化学では、電極、電位、酸化還元、ギブズエネルギー、ネルンスト式などの概念が一気に現れる。そのため、式は覚えたのに何を意味しているのかがわからない、という状態になりやすい。
本書は、そのような混乱しやすい点を避けずに取り上げ、対話形式で少しずつ説明していく。
読者が疑問に思うところを会話の中で拾ってくれるため、講義を聞いているような感覚で読み進められる。
特に良いのは、電気化学を単なる公式暗記として扱っていない点である。
電極の近くで何が起きているのか、電位とは何を表しているのか、反応の進みやすさとエネルギーがどう結びつくのかを、イラストを交えながら説明している。
文章だけでは見えにくい現象が図で示されるので、頭の中で状況を組み立てやすい。
ここを文字だけで突破させようとする教科書もあるが、それはだいたい学習者への試練であって教育ではない。
演習問題が用意されている点もありがたい。
読んでわかった気になるだけでなく、自分で考えて確認できる。
本書は、すでに電気化学を専門的に学んでいる人向けの網羅的な教科書というより、電気化学の入口で一度つまずいた人、あるいは大学化学に入る前に考え方を整理したい人に向いている。
高校化学の酸化還元や電池の知識を、大学で扱う熱力学や電極反応の考え方へつなげる本として使いやすい。
電気化学に苦手意識がある人ほど、本書の価値は大きい。
苦手意識のある学生に是非すすめたい一冊である。































