[スポンサーリンク]

分析化学

物質科学を学ぶ人の空間群練習帳

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4339066532″ locale=”JP” title=”物質科学を学ぶ人の 空間群練習帳”]

概要

◆書籍の特徴◆
本書は230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説することを趣旨とし,実際に手を動かしながら理解できるように練習問題を多数用意しました。これから X線構造解析を始める人や,大学院や企業で結晶工学に携わる人はもちろんのこと,単に数学的な対象として空間群に興味をもつ人などにとって,本書が手ごろな練習帳,便利帳,辞書代わりとなることを期待しています。(引用;コロナ社書籍紹介より)

対象

  • 有機結晶や無機結晶を扱う人
  • 物質機能と結晶構造の対称性との関係に興味があるが、対称性の扱い方がよくわからない人
  • 空間群の数学的な取扱いに興味がある人

出版社の書籍紹介に「卒業研究で初めて結晶学にふれる大学生,研究テーマで結晶構造を扱うことになった大学院生,仕事で結晶構造解析に携わることになった企業研究者」とある通り、結晶構造解析で避けて通れない”空間群”について基本からまとめてあります。初めて結晶構造解析をする人ももちろんですが、いくつか構造解析の経験があり、何か具体的な結晶構造と空間群の対応が思い浮かぶ人には特に学びやすい書籍だと思います。空間群の記号の意味をちゃんと知りたい人にもおすすめ。

内容

全6章から構成されています。第1章では結晶構造やその分類に関する基本的な用語・概念の導入と関連性の解説、第2章では対称性・対称操作を数学的に表現するための用語や概念の導入があり、基礎知識の整理と数学的な考え方が簡潔にまとまっています。第3,4章では有機結晶で重要な三斜晶、単斜晶、直方晶の対称操作と空間群の一覧が、第5,6章では正方晶、三方晶、六方晶、立方晶の対称操作と空間群の一覧がまとめられており、辞書的な章になっています。

4章までの具体的な構成は以下のようになっています(全体の目次はこちら)。導入部である1,2章はそれぞれ10ページ程度で、系統的かつ簡潔にまとめられています。また、有機結晶にとって重要な(頻出の)対称操作と空間群が前編として取り上げられており、有機化学者にとっても利用しやすいよう工夫されています。

1.結晶格子
1.1 単位格子
1.2 分率座標
1.3 7個の晶系
1.4 14個のブラべ格子
1.5 32個の点群
1.6 230個の空間群

2.対称操作と変換行列
2.1 線形変換の群
2.2 対称性と点群
2.3 アフィン変換

3.結晶の対称操作〈前編〉
3.1 並進
3.2 反転
3.3 2回回転
3.4 2_1らせん
3.5 鏡映
3.6 映進

4.空間群の等価点一覧表〈前編〉
4.1 三斜晶
4.2 単斜晶
4.2.1 単斜晶系の群
4.2.2 軸の設定と原点の選択
4.3 直方晶
4.3.1 222点群
4.3.2 mm2点群
4.3.3 軸変換
4.3.4 mmm点群

また、「練習帳」と銘打っている通り本書には練習問題があり(解答はWebサイトで公開されています)、ごく簡単な数学的取り扱いがどのように空間群の理解につながっていくのか、練習問題を通してクリアになっていく点も大きな特徴です。

感想

非対称要素とは? 対称性が高いとは? 点群と空間群の違いは?
このような基礎的な疑問を明快に解決できるため、初学者は第1,2章の導入部だけでも読む価値が十分あると感じました。対称操作を行列を用いて表現する方法についても丁寧に書かれていたので、行列が記憶の底に眠っていた私でもそこそこ理解することができました。これらは、以降の章で様々な対称操作や空間群をイメージしたり理解する見通しを立ててくれました。
例えば化学同人さんのX線結晶構造解析入門: 強度測定からCIF投稿まででは、同様の基本事項について、対称操作のイメージや結晶構造解析の実例を交えながら読みやすく書かれていますが、「対称要素→晶系→ブラべ格子→空間群→点群」という流れで説明されています。用語(概念)の関連について系統的にまとまっているという意味で、今回紹介する本書は明快に感じました。

P21/cってどこで意味のまとまりが切れているの? 「1」だけ下付きで書いているのは誤植? C2/cの最初のCは大文字で最後のcは小文字だけど意味が違うの?
このような有機結晶を扱う初学者によくある疑問は、1,2章に続いて3,4章を読むことで解決します。第3章以降は読み物として読むにはやや難解な印象がありましたが、具体的な構造解析の経験があれば理解しやすいと思います。ただし、タイトルにあるような「物質科学を学ぶ」上での空間群の関わりなどが書かれていることを期待しましたが、そのような内容ではありませんでした。例えば私はキラルな空間群や中心対称性のない空間群について興味があったのですが、こうした「物性にかかわる特徴から空間群を俯瞰的に学ぶ(探す)」ような目的には向いていないかもしれません。
一方で、対称操作や空間群、およびそれらの様々な表記法(対称操作の名称・記法や対称要素の記号、等価点のリストなど)については大変丁寧に記述されていました。個人的には様々な記号の対応がとれないことは初学者が空間群を学ぶハードルの一つだと感じているので、非常にありがたく感じました。実用的には、例えば単結晶X線構造解析によって(半ばブラックボックス的に)見慣れない空間群が得られたときに、その対称性について理解するには大きな助けになると思います。また、関連書籍や日本結晶学会誌で「結晶構造解析において取り違えやすい空間群」や「物質機能の観点から重要な空間群」など特定の空間群について興味をもった際にも、本書は心強い参考書になるでしょう。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759815759″ locale=”JP” title=”X線結晶構造解析入門: 強度測定からCIF投稿まで”] [amazonjs asin=”478270741X” locale=”JP” title=”結晶構造精密化SHELXLの使い方”] [amazonjs asin=”4759811435″ locale=”JP” title=”固体有機化学”] [amazonjs asin=”4621079913″ locale=”JP” title=”有機化合物結晶作製ハンドブック 原理とノウハウ”]
Avatar photo

arrow

投稿者の記事一覧

大学で有機金属触媒について研究している学生→発光材料や分子性電子素子を研究している大学教員になりました。 好きなものはバスケとお酒、よくしゃべりよく聞きよく笑うこと。 日々の研究生活で見、聞き、感じ、考えたことを発信していきます。

関連記事

  1. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際ま…
  2. Hazardous Laboratory Chemicals D…
  3. 次世代シーケンサー活用術〜トップランナーの最新研究事例に学ぶ〜
  4. なぜあなたは論文が書けないのか
  5. The Merck Index: An Encyclopedia…
  6. 天然物の全合成―2000~2008
  7. 基礎から学ぶ機器分析化学
  8. ワールドクラスの日本人化学者が語る研究物語―『化学者たちの感動の…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ゲルマニウム触媒でアルキンからベンゼンをつくる
  2. 創薬におけるモダリティの意味と具体例
  3. ダイセル発、にんにく由来の機能性表示食品「S-アリルシステイン」
  4. 無保護アミン類の直接的合成
  5. ヘリウムガスのリサイクルに向けた検討がスタート
  6. 日本プロセス化学会2018ウインターシンポジウム
  7. 英グラクソスミスクライン、抗ウイルス薬を大幅値引きへ
  8. Skype英会話の勧め
  9. 「坂田薫の『SCIENCE NEWS』」に出演します!
  10. 液相における粒子間水素移動によって加速されるアルカンとベンゼンの脱水素カップリング反応

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP