有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年9月号がオンラインで公開されています。
5件の総合論文に加え、横島先生(名古屋大)の「感動の瞬間」が掲載されています。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:「やってみなはれ」の前と後 Part 2【オープンアクセス】
今月号の巻頭言は、公益財団法人サントリー生命科学財団 島本啓子 氏による寄稿記事です。
AIの発展により研究費申請と審査は変化の局面を迎えているのかもしれませんが、どのような時代であっても「変えてはならないもの」について考えさせられました。
光エネルギーを駆動力とする水素放出型カップリング反応の開発
石田直樹*, 河﨑泰林(京都大学大学院工学研究科化学理工学専攻)
本稿では、グリーンケミストリーの理念に基づき,副生成物を本質的に抑制可能な脱水素カップリング反応について包括的に論じている。特に、著者らが見出したアルデヒドとアルキルベンゼンとの脱水素カップリング反応によるベンジルケトン合成を起点として、反応適用範囲の拡張ならびに特異な選択性を支配する反応機構の解明に関する研究成果を体系的にまとめている。高原子効率型反応の設計指針を提示するものであり、持続可能な有機合成化学の発展に貢献する内容となっている。
小員環カルボニル化合物を活用する官能基選択的光反応
三代憲司*(金沢大学医薬保健研究域薬学系)
本論文は、小環状カルボニル化合物であるシクロプロペノンおよびシクロブテンジオンの光化学反応に関する最新の研究成果を紹介します。これらの化合物は独特の環構造と環ひずみに起因する特異な性質をもち、光分解によりユニークな活性種を高効率で生成する光反応性官能基として優れた機能を示します。今後の有機合成化学や生命科学分野における新たな応用展開が期待されます。
触媒反応ツールの創製が拓く選択的臭素化法:炭素を基盤にした分子設計
浅野圭佑*(北海道大学触媒科学研究所)
古くから研究されてきた臭素化反応であっても、着眼点を変えることで、これほど豊かな化学の世界が広がることに驚かされました。本稿では、浅野先生がこれまで培ってこられた反応や分子の設計とその理念が丁寧に記されており、学生から第一線の研究者に至るまで、多くの示唆を得られる内容となっています。
協奏機能型銅触媒を用いるダイレクト型触媒的不斉アルドール反応の展開:チオアミドからグリシンシッフ塩基まで
竹内倫文*、熊谷直哉*,**、柴﨑正勝*(*公益財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究所, **慶應義塾大学薬学部)
本論文は著者らが精力的に進めてきたsoft Lewis acid/Hard Bronsted baseコンセプトに基づくカルボン酸酸化状態アルドール供与体を用いる直接的不斉アルドール反応に関するものです。その発展の初期から現在の展開に至るまで、背景にある考え方に触れながら丁寧に説明されており、非常に参考になります。
エクテナサイジン743骨格リデザイン戦略
天然物が本来もつ生体制御能を活かしつつ、合成展開に適した分子骨格を起点として、多彩な構造と機能を生み出す ――本論文の「骨格リデザイン戦略」は、天然には存在しない新たなケミカルスペースを切り拓き、天然物化学と創薬化学の未来を感じさせると内容となっています。
Review de Debut【オープンアクセス】
今月号のReview de Debutは1件です。
・ホルミル基を起点とするTDG戦略を用いた不斉還元的Heck反応の最近の進展(広島大学大学院医系科学研究科)白井孝宏
十字路【オープンアクセス】
・吸エルゴン反応 シクロプロペノン 協奏機能型触媒 天然物骨格リデザイン(石田直樹, 三代憲司, 竹内倫文, 熊谷直哉, 柴﨑正勝, 谷藤涼, 大栗博毅)
感動の瞬間:天然物合成でフラスコの中を覗く【オープンアクセス】
今月号の感動の瞬間は、名古屋大学大学院創薬科学研究科 横島聡 教授による寄稿記事です。
Melognineの合成で出会った「瞬間」について述べられています。「フラスコの中」での分子の挙動を把握して展開されていくプロセスを追うことができ、大変勉強になりました。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。






































