[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

[スポンサーリンク]

マリンス有機化学(上): 学び手の視点から

マリンス有機化学(上): 学び手の視点から

R. J. Mullins
¥7,260(as of 11/05 06:52)
Amazon product information

概要

親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.「有機化学を学びたい人」の立場に立って書かれた新タイプ.引用:東京化学同人

対象者

  • 有機化学初心者
  • 学部生
  • 有名な教科書のハードルが高いと感じる人

目次

1. 有機化学への招待
2. 一般化学とのつながり:電子をみつけよう
3. アルカンとシクロアルカン:性質と立体配座解析
4. 酸と塩基/電子の流れ
5. 化学反応解析:熱力学と速度論
6. 立体異性:空間における原子の配置
7. 有機化学におけるグリーンケミストリーの基本
8. アルケンⅠ:性質と求電子付加反応
9. アルケンⅡ:酸化と還元
10. アルキン:求電子付加反応と酸化還元反応
11. ハロアルカン(ハロゲン化アルキル)の性質と合成:ラジカル反応
12. 置換反応と脱離反応:ハロゲン化アルキルの反応
13. アルコール,エーテルとその関連化合物:置換反応と脱離反応
14. 構造の同定Ⅰ:赤外分光法と質量分析法
15. 構造の同定Ⅱ:核磁気共鳴分光法

内容

有機化学のスタンダードな内容を取り扱っている本で,初めて有機化学を勉強する人や,もう一度有機化学を勉強してみたい人におすすめです.扱っているトピックとしてはマクマリー有機化学やボルハルトショアー有機化学といった有名な本と同じですが,本の副題にもあるように「学び手の視点」を意識して書かれています.

具体的には多くの初学者が困ってしまうポイントを重点的に説明してくれることや,覚えておいた方がよい値や事柄の強調がなされています.しかし,何といっても一番目を見張るのは先生が本の中で話しかけてくれることです.

有機化学の説明の中では,先生のコメントやつぶやきが [コメント] という形式で現れる他にも,本の色んな場所に友達や先輩のキャラクターが現れて勉強の手助けをしてくれます.有機化学に関するコメントだけでなく,勉強の仕方などについてもコメントしてくれています.

マリンス有機化学(上)より抜粋(許可を頂いて掲載しております.)

この本の1章では,著者の学生時代の話や有機化学の勉強方法,著者がこの本を書こうと思った理由,この本の構成について詳しく説明しており,他の本では全く見ない章になっています.どの章の内容も興味深く,面白いことはもちろんですが,特に1章に著者の教育に対する愛が感じられました.

いくらかの大学生にとって有機化学は試験で点数をとるためであったり,大学の単位をとるためであったりするもので,その勉強は楽しいとは言えないと思います.

もし読んでいる教科書が味気なく,勉強がなかなか進まない人は是非この本を手に取ってみてはいかがでしょうか.

実はこの本の著者も学生時代は有機化学が特別得意ではなかったのですが,その時の先生が親身になって(学び手の視点に立って),教えてくれたことが人生に大きな影響を与えてくれたそうです.

私はこの本を読んでいく中で,まるでオフィスアワーや大学のカフェテリアで先生と雑談を交えながら勉強をしているように感じました.

私が有機化学を初めて勉強したときに,もしこの本があったらより楽しく勉強できたのかもしれない…と少しばかり若い方々がうらやましくなりました.

関連書籍

関連記事

  1. 顕微鏡の使い方ノート―はじめての観察からイメージングの応用まで …
  2. 化学の歴史
  3. 研究室で役立つ有機実験のナビゲーター―実験ノートのとり方からクロ…
  4. Zoomオンライン革命!
  5. 初歩から学ぶ無機化学
  6. まんがサイエンス
  7. 【書籍】機器分析ハンドブック3 固体・表面分析編
  8. 有機化学イノベーション: ひらめきと直観をいかにして呼び込むか

注目情報

ピックアップ記事

  1. 生体医用イメージングを志向した第二近赤外光(NIR-II)色素:①単層カーボンナノチューブ
  2. カーボンナノチューブの毒性を和らげる長さ
  3. 遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
  4. ロビンソン・ガブリエルオキサゾール合成 Robinson-Gabriel Oxazole Synthesis
  5. 読むだけで身につく化学千夜一夜物語 食品、日用品から最先端技術まで75話
  6. シグマトロピー転位によるキラルα-アリールカルボニルの合成法
  7. アメリカの研究室はこう違う!研究室内の役割分担と運営の仕組み
  8. エチオ・リザード Ezio Rizzardo
  9. 「富士フイルム和光純薬」として新たにスタート
  10. 第97回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

産総研の研究室見学に行ってきました!~採用情報や研究の現場について~

こんにちは,熊葛です.先日,産総研 生命工学領域の開催する研究室見学に行ってきました!本記事では,産…

第47回ケムステVシンポ「マイクロフローケミストリー」を開催します!

第47回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!第47回ケムステVシンポジウムは、…

【味の素ファインテクノ】新卒採用情報(2026卒)

当社は入社時研修を経て、先輩指導のもと、実践(※)の場でご活躍いただきます。「いきなり実践で…

MI-6 / エスマット共催ウェビナー:デジタルで製造業の生産性を劇的改善する方法

開催日:2024年11月6日 申込みはこちら開催概要デジタル時代において、イノベーション…

窒素原子の導入がスイッチング分子の新たな機能を切り拓く!?

第630回のスポットライトリサーチは、大阪公立大学大学院工学研究科(小畠研究室)博士後期課程3年の …

エントロピーの悩みどころを整理してみる その1

Tshozoです。 エントロピーが煮詰まってきたので頭の中を吐き出し整理してみます。なんでこうも…

AJICAP-M: 位置選択的な抗体薬物複合体製造を可能にするトレースレス親和性ペプチド修飾技術

概要味の素株式会社の松田豊 (現 Exelixis 社)、藤井友博らは、親和性ペ…

材料開発におけるインフォマティクス 〜DBによる材料探索、スペクトル・画像活用〜

開催日:10/30 詳細はこちら開催概要研究開発領域におけるデジタル・トランスフォーメー…

ロベルト・カー Roberto Car

ロベルト・カー (Roberto Car 1947年1月3日 トリエステ生まれ) はイタリアの化学者…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP