[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第22回 化学の複雑な世界の源を求めてーLee Cronin教授

第22回はグラスゴー大学化学科のリー・クロニン教授です。クロニン教授は機能性分子および材料の設計とその合成を研究されており、特に無機クラスター、配位子設計、そして化学(によって観察できる現象)の複雑性とその起源に関心があるそうです。それではインタビューをどうぞ。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

純粋に興味からです。ずっとサイエンティストになりたかったのですが、生物はサイエンスというよりも分類学に思えましたし、物理はなんだか特殊な状況の非現実的な事柄を研究しているように思えたこともあって、化学に辿り着いた感じですね。化学者の仕事は雑多で、(しかし)数えることができて、なんなら物理学者を手伝う事もできるわけです。例えばそういう雑多な研究の結果に出来た我々の化合物が、量子スピンチューブであることが判明しています。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

本当に他には何も思いつきません。サイエンスをすることが許されて、しかもそれで給料が貰えるなんてことは本当に素晴らしい。どうしても他に何かしなければいけなかったら、モダンアート専門のアーティストか数学者を目指しますかね。両者は全くの別物ですが、どちらも創造性と想像力に委ねる仕事という事です。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

基礎分野を研究し続け、己の興味に従ってそれを突き詰めることだと思います。近頃の”役に立つ研究をしなければいけない”というプレッシャーは、本当に世界を変えるような、とてつもない発見を逃してしまう危険性を帯びています。例えば水の確保や、エネルギー問題、地球温暖化だとかいうような人類が直面している大きな問題を化学が解決しなければいけないという状況は本当に深刻になっています。エネルギー問題も地球温暖化も、私にしてみれば一つの同じ問題に見えるのですけどね。どうして二酸化炭素を水と共に固定化して、もちろんそのプロセスは光エネルギーで回して、それでもって炭水化物を燃やしても”二酸化炭素酔い”にならないようなマテリアルをデザインしようとしないのか。もちろん、自然界では既にそういうことをしてくれているわけですが、我々がしなくてはならないことは、そのプロセスをスピードアップして、消費した炭水化物をすぐさまそうであったように作りなおすことです。実際私はメタノールを合成することを目指しているのですよ。ここまでにもう随分たくさんのメタノールを燃料電池で燃やしてしまっていますからね。

化学者はあるいは人類の最も興味深い謎の一つを解き明かす力になれるかもしれません。この世界の複雑さ、物事の発生の過程、私たちを生命の源とは何なのか、どこから来たのか。これは大きな疑問ですが、でも私はこういうことも可能だと考えています;ケミカルスープ(訳者:化合物をいろいろ混ぜあわせた溶液、をこう言っているのだと思います)から原始的な化学電池を作り出して、それは数百時間という程度であれば生きていると見なせるような。それから誰かに無限に長いカーボンナノチューブを作って欲しいですね。それでスペースエレベーターを作って、大きなロケットなんて使わずに皆で宇宙観光ができたら。

climberfromearth3_f

 

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

本当にたくさんのディナーをご一緒したい人たちがいますね。Bill and Ted’s excellent adventure(邦題:ビルとテッドの大冒険、訳者注:タイムマシンで偉人達を現代に連れてきて歴史の試験をパスしようとするコメディ映画。若き日のキアヌ・リーブスが出ています。続編アリ。)に飛び込んで、電話ボックス型タイムマシンで全員ウチのディナーパーティに招待なんてしていいですか?ニュートンとアインシュタインが会ったらどうなるか、面白いですよね。

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

数週間前に遷移金属クラスターのナノスケールでの自己集積を調べる際に、低温スプレーイオン化質量分析を使いました。素晴らしかったですね、ちゃんと使えたんですよ。普段私が実験室に入ると、研究室のメンバーは私を手伝うためにてんてこ舞いですが…

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ベン・オクリの「満たされぬ道」(原題:The Famished Road)です。本当に良い本で、もうこれまでに何度も読み返しましたが、これから先に何度読んでもきっと飽きることは無いでしょう。音楽CDは何を持っていくかちょっとわかりませんね。とりあえず裏がピカピカ反射するような、それで通りすがりの客船にでもシグナルを送って島から助けてもらうのに使えるようなCDを持って行きます。もしCDプレイヤーを動かすためのバッテリーや太陽電池を持って行ってもよいのなら、ColdplayPhilip Glassあたりから気分で選びます。

原文:Reactions – Lee Cronin
※このインタビューは2007年7月20日に公開されたものです。

The following two tabs change content below.
せきとも

せきとも

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第24回 化学の楽しさを伝える教育者 – Darre…
  2. 第27回 生命活動の鍵、細胞間の相互作用を解明する –…
  3. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …
  4. 第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授
  5. 第19回 有機エレクトロニクスを指向した合成 – G…
  6. 第31回 ナノ材料の階層的組織化で新材料をつくる―Milo Sh…
  7. インタビューリンクー時任・中村教授、野依理事長
  8. 第28回 錯体合成から人工イオンチャンネルへ – P…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジェフリー・ムーア Jeffrey S. Moore
  2. 四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)
  3. 過酸による求核的エポキシ化 Nucleophilic Epoxidation with Peroxide
  4. アンデルセン キラルスルホキシド合成 Andersen Chiral Sulfoxide Synthesis
  5. 反応の選択性を制御する新手法
  6. 品川硝子製造所跡(近代硝子工業発祥の碑)
  7. シンポジウム:ノーベル化学賞受賞の米教授招く--東北大、来月12日
  8. 有機合成のための触媒反応103
  9. 大久野島毒ガス資料館
  10. オカモト株式会社茨城工場

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

学部4年間の教育を振り返る

皆様、いかがお過ごしでしょうか。学部4年生の筆者は院試験も終わり、卒論作成が本格的に始まるまでの束の…

ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ

ダイセルといえば「キラルカラムの雄」として知られており、光学活性化合物を分離するキラルカラム「CHI…

台湾当局、半導体技術の対中漏洩でBASFの技術者6人を逮捕

台湾の内政部(内政省)刑事局は7日、半導体製造に使う特殊な化学品の技術を中国企業に漏洩した営業秘密法…

「低分子医薬品とタンパク質の相互作用の研究」Harvard大学 Woo研より

海外留学記第29回目は、Harvard大学のChiristina Woo研に留学されている天児由佳さ…

科博特別展「日本を変えた千の技術博」にいってきました

上野公園内の日本科学博物館で開催されている「日本を変えた千の技術博」をみてきました。科博の特…

ケミカルメーカーのライフサエンス事業戦略について調査結果を発表

 この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=川原喜治)は、ケミ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP