有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年8月号がオンラインで公開されています。
5件の総合論文に加え、布施先生(名古屋大)の「感動の瞬間」が掲載されています。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:小さな発見から,アイデアを紡いでいくには? [オープンアクセス]
今月号の巻頭言は、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 大栗博毅 教授による寄稿記事です。
「特殊知見」と相性の良い有機合成化学を土台として、特殊知見の体系化や一般知見との往復をトレーニングすることにも価値があると感じられました。
ホウ素アート錯体のπ結合駆動型メタレート転位反応の開発
溝口玄樹*(岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域)
2024年度有機合成化学奨励賞受賞
ホウ素を用いた反応には多彩な味付けがありますが、本総合論文ではアルケニルホウ素アート錯体を主役とした1,2-メタレート転位に焦点を当てています。「π結合を求電子剤として転位を駆動する」をキーワードに、アラインやケテンを用いて連続的に結合を形成し、多置換アルキルボロン酸誘導体を合成する手法について紹介されています。
ラジカル的C(sp3)-H結合官能基化による複素環骨格構築法の開発
熊田佳菜子*(産業技術総合研究所 触媒化学研究部門)
不活性なC(sp3)–H結合の直接官能基化は,有機合成における重要課題の一つである。本総合論文では,ラジカルの生成およびその制御を鍵とした合成戦略について体系的に概説されている。さらに,ラジカル反応の設計指針を整理するとともに,構造多様化へと展開する可能性について包括的に論じている。
アレロケミカルを端緒とする植物に対する重力屈性阻害化合物の開発
アレロケミカルであるシスケイ皮酸を起点に、植物の「重力を感じて根を曲げる」しくみへ迫る研究。精密有機合成により、重力屈性を選択的に制御する分子を創製した点が際立つ。蛍光プローブによる可視化から阻害剤開発まで、化学と植物科学の融合が新たな展開を示す。ぜひ本文でその魅力を確かめてほしい。
既存の分子骨格から着想を得た刺激応答性分子結晶の開発
関 朋宏*(静岡大学理学部化学科)
外部刺激に応じて色が変わり,さらには飛び跳ねる,そんなダイナミックな振る舞いを示す分子性結晶を金属錯体から有機顔料まで横断的に紹介。さらに基本骨格からの分子変換により多彩な機能発現へと展開し,刺激応答性結晶の新たな可能性を示している。今後の分子設計に指針を与える興味深い総合論文。
β-プロティック金属錯体の金属-配位子協奏触媒作用
桑田繁樹*(立命館大学生命科学部応用化学科)
本総説は、β位にNH 基を有するピラゾール錯体およびプロティック NHC(pNHC)錯体を「β-プロティック錯体」として統一的に捉え、これらが鍵となる触媒反応への応用の観点から包括的に整理されている。特に水素化/水素移動反応に焦点を当てつつ、C–C 結合形成や環化反応など多様な反応への展開にも触れられており、本分野の現状がよく理解できる内容となっている。
Review de Debut [オープンアクセス]
今月号のReview de Debutは1件です。
・第一級アミンの効率的な脱アミノ的官能基化 (北里大学大村智記念研究所)中原大生
感動の瞬間:研究を通しての成長 [オープンアクセス]
今月号の感動の瞬間は、名古屋大学大学院創薬科学研究科 布施新一郎 教授による寄稿記事です。
感動だけでなく、そこに至るまでの苦しみも追体験できる、臨場感あふれる寄稿です。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。









































