材料の数理モデリング
概要
材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するための入門書。(引用:コロナ社)
対象者
- 材料科学のシミュレーションを行う研究者,技術者
- 大学教養の数学,物理,化学を学んだ学生
目次
1.本書の目的,全体像
1.1 はじめに
1.2 各シミュレーション手法の概説
1.3 まとめ2.量子化学計算
2.1 古典の波動方程式からの展開
2.2 水素様原子の波動関数とエネルギー
2.3 磁石としての電子
2.4 多電子原子
2.5 多電子・多核分子の波動関数とエネルギー
2.6 分子の位置エネルギーと最適構造
2.7 分子振動と光との相互作用
2.7.1 分子の振動と赤外線吸収スペクトル
2.7.2 分子の振動と回転による赤外線吸収スペクトルの複雑化
2.8 連続体の量子化学計算
章末問題3.第一原理計算
3.1 第一原理計算に必要な基礎知識
3.1.1 結晶構造
3.1.2 周期系に対するシュレーディンガー方程式
3.1.3 電子状態密度
3.1.4 逆空間
3.1.5 結晶の電子状態の見方
3.1.6 第一原理計算の分類
3.1.7 計算手順
3.2 第一原理計算の実際
3.2.1 結晶構造の最適化
3.2.2 相安定性の評価
3.2.3 欠陥をもつ結晶の計算
3.2.4 圧力印加時の計算
3.2.5 電子状態計算
章末問題4.分子動力学計算
4.1 分子動力学計算の原理
4.1.1 初期条件および境界条件
4.1.2 原子間に働く力
4.1.3 運動方程式の数値計算
4.1.4 温度および圧力の制御
4.1.5 計算結果の解析
4.2 分子動力学計算の実例
章末問題5.有限要素法
5.1 有限要素法の原理
5.1.1 形状関数(Nマトリックス)
5.1.2 変位とひずみの関係(Bマトリックス)
5.1.3 応力とひずみの関係(Dマトリックス)
5.1.4 要素剛性マトリックス(Kマトリックス)
5.1.5 全体剛性マトリックス
5.2 シミュレーションによる実例
5.2.1 解析モデル形状
5.2.2 要素分割および境界条件設定
5.2.3 応力解析
章末問題6.伝熱・凝固解析
6.1 伝熱・凝固解析の計算原理
6.1.1 熱伝導方程式
6.1.2 有限差分法
6.1.3 境界条件
6.1.4 凝固潜熱補正
6.2 伝熱・凝固解析の実例
6.2.1 凝固潜熱補正を伴わない1次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
6.2.2 接触熱抵抗を取り入れた計算
6.2.3 凝固潜熱補正を伴わない2次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
6.2.4 凝固潜熱補正を伴う2次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
章末問題7.粒子法による流体運動の計算
7.1 流体運動の方程式
7.1.1 流体運動の記述法
7.1.2 連続の式
7.1.3 ナビエ-ストークス方程式
7.1.4 ニュートン流体
7.1.5 流体方程式の数値計算
7.2 粒子法の計算原理
7.2.1 SPH法
7.2.2 SPH法による非圧縮性流体の計算
7.2.3 MPS法
7.3 材料プロセスにおける応用例
7.3.1 流体の大変形計算
7.3.2 熱伝導方程式や化学反応速度式との連成
7.3.3 非ニュートン流体の計算
章末問題8.状態図計算
8.1 状態図概説
8.1.1 2成分系状態図
8.1.2 3成分系状態図
8.1.3 化学ポテンシャル状態図
8.2 状態図計算の原理
8.2.1 ギブスエネルギーと状態図
8.2.2 CALPHAD法
8.2.3 溶液モデルによるギブスエネルギーの計算法
8.2.4 熱力学データベース
8.3 状態図計算の実例
8.3.1 正則溶液モデルを用いた2元系状態図の作成
8.3.2 市販ソフトウェアの紹介
章末問題引用・参考文献
章末問題解答
索引
内容
本書は、量子・原子スケールからマクロスケールまでの多様な計算手法を1冊で学べる、材料シミュレーションの横断的入門書です。
量子化学計算・第一原理計算・分子動力学計算というミクロ側の手法から始まり、有限要素法・伝熱凝固解析・粒子法・状態図計算(CALPHAD法)というメゾ〜マクロの手法まで、7つのシミュレーション手法を網羅的に解説しています。
各章では原理の説明に続いて具体的な計算事例が示されており、理論と実践が結びついた構成になっています。
本書の背景には、材料科学の研究者・技術者が「自分の専門分野以外のシミュレーション手法を学ぼうとすると、それぞれの専門書を1冊ずつ読まなければならない」という現実的なハードルがあります。
本書はその障壁を取り除くべく、各スケールにおける指導原理を一望できるよう設計されています。
構成
全8章構成で、ミクロ→マクロの順にスケールを上げながら学習が進む流れになっています。
第1章で本書全体の地図を提示したあと、第2〜4章でミクロスケール、第5〜7章でメゾ〜マクロスケール、第8章で材料設計に不可欠な状態図計算を扱います。
各章末には章末問題と解答が用意されており、自習・演習の双方に使える構成となっています。
本書は早稲田大学大学院の必修科目「数理の材料モデリング」の講義・実習内容を核として編まれており、教育的な一貫性と実践的な内容のバランスが両立しています。
特徴
本書の最大の強みは、「マルチスケール」という一本の軸で多様な手法を串刺しにした点です。
多くの研究者は自分の専門に近いスケールのシミュレーションには精通していても、異なるスケールの手法には不慣れなことが多いです。
本書は、各手法の基礎を「なぜそのような取り扱いが必要なのか」という物理的背景とともに説明しており、単なる計算手順の羅列ではなく、シミュレーション結果を正しく解釈する力を養う内容になっています。
また、早稲田大学の各専門分野の教授6名による共著である点も見逃せません。
量子化学計算から状態図計算まで、それぞれの章の執筆を専門家が担当しているため、各手法の記述の質と信頼性が担保されています。
初学者にとっては「広く浅く」で終わらない、確かな入門ができる一冊です。
166ページというコンパクトなボリュームに7手法を収めているため、まず全体像を把握したいという読者にとって最適な取っかかりとなるでしょう。
各章を足がかりとして、さらに専門的な書籍へ進むためのロードマップとしての役割も担っています。
関連書籍
次の本は分子動力学法(MD)を固体材料の強度評価や物性解析に応用するための理論と実践を体系的にまとめた入門書です。































