[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

次世代医薬とバイオ医療

[スポンサーリンク]

次世代医薬とバイオ医療

次世代医薬とバイオ医療

¥4,444(as of 12/05 02:40)
Amazon product information

概要

医薬と医療を照らす近未来創薬研究、多様化するモダリティをまとめて解説。中分子医薬(ペプチド医薬、核酸医薬)、CAR-T細胞療法を始めとする細胞治療、MSCやiPS細胞を用いた再生医療、ゲノム編集などを応用した遺伝子治療、mRNAワクチン、エクソソーム創薬、コンパニオン診断薬、PROTAC、DEL、iChip、AI創薬など、話題の創薬研究・手法をわかりやすく紹介。(内容説明 より)

対象

  • 次世代型医薬モダリティについて網羅的に学びたい人
  • 創薬研究を志す大学院生と研究者
  • 最先端創薬事情や規制についてのとっかかりを知りたい人

内容

本書は、「創薬化学―メディシナルケミストへの道」「バイオ医薬―基礎から開発まで」に続く、創薬科学シリーズ教科書三部作の第3巻です。

現代はモダリティの多様化時代。この2巻だけでは到底記述しつくせる様子がありません。昨今の革命的成果であるmRNAワクチンも、従来の創薬概念に乗らないものであり、モダリティ多様化がもたらした一つの到達点です。このような潮流は医薬の幅を広げ、私たちの生命の安心・健康に日々貢献し続けているわけです。

第1巻の「創薬化学」は古典的王道の低分子創薬、第2巻の「バイオ医薬」はこの20年の製薬業界を牽引してきた抗体をメインとする高分子創薬を主として取り上げてきています。第3巻はそれを補完する位置づけをとりつつ、従来の枠を飛び出した「他のあらゆる創薬モダリティ」と、事例としてのマイルストーン上市薬を網羅的に取り上げています。

章立てを見ても分かるとおり、いわば「モダリティカタログ」として活用するのがよい書物だと思われます。特に抗体医薬の次世代を担うとして最近注目されている中分子医薬品を包括的に取り上げている教科書は大変希少です。また再生医療・細胞治療については、我が国の規制(法令・品質管理など)についても丁寧に触れられています。さらにはCOVID-19の対応に尽くしたmRNAワクチンの最新事情も1章を割いて記されています。第III部以降は記述の少ないところもありますが、これはまだまだ発展途上のものが多い実情を反映してもいます。

核酸医薬の章における1ページ(化学同人の立ち読みサイトより引用)

 

【章立て】
第Ⅰ部 中分子医薬および関連医薬
第1章 次世代医薬としての中分子医薬
第2章 ペプチド医薬およびペプチド様医薬
第3章 核酸医薬
第4章 mRNAワクチン

第Ⅱ部 遺伝子治療,再生医療・細胞治療および関連医薬
第5章 遺伝子治療
第6章 再生医療・細胞治療
第7章 エクソソーム創薬
第8章 個別化医療に向けた診断用医薬品-コンパニオン診断薬

第Ⅲ部 次世代医薬開発において注目すべき創薬手法・技術
第9章 新しい創薬手法-標的タンパク質を分解するPROTAC
第10章 創薬のための新スクリーニング手法-DEL(DNAコード化化合物ライブラリー)
第11章 創薬のための新たなデバイス-iChip未培養微生物
第12章 AI創薬

コラム

筆者が学生のころは、国内でも低分子創薬の勢いが強く、猫も杓子もそればかりだった記憶があるのですが、20年ほど経った今、現代創薬がこれほどまでに多様な広がりを見せていることに、隔世の感を隠しきれません。このような群雄割拠では何が今後台頭するのかさっぱり分からないと一見して思われるのですが、一個人のリソースは有限である以上、どのような技術が求められてくるはずなのかを大きな流れに沿って先読みし、一歩先んじるやり方を選びってべきであろうと常々痛感しています。

本書で記述されるモダリティは個性の強いものばかりです。これらモダリティの勃興・発展史を学び、どのような構想がその裏に流れているのかを学ぶことは、そのような力を育む大きな助けになるでしょう。

次世代医薬とバイオ医療

次世代医薬とバイオ医療

¥4,444(as of 12/05 02:40)
Amazon product information

関連書籍

創薬化学: メディシナルケミストへの道

創薬化学: メディシナルケミストへの道

¥4,290(as of 12/04 19:25)
Amazon product information
バイオ医薬: 基礎から開発まで

バイオ医薬: 基礎から開発まで

¥4,840(as of 12/05 13:30)
Amazon product information
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 先制医療 -実現のための医学研究-
  2. マンガでわかる かずのすけ式美肌化学のルール
  3. よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解…
  4. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5
  5. 密度汎関数法の基礎
  6. Innovative Drug Synthesis
  7. まんがサイエンス
  8. セレンディピティ:思いがけない発見・発明のドラマ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 好奇心の使い方 Whitesides教授のエッセイより
  2. 大学の学科がクラウドファンディング!?『化学の力を伝えたい』
  3. ティム・ジャミソン Timothy F. Jamison
  4. ケムステV年末ライブ2021開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  5. 腎細胞がん治療の新薬ベルツチファン製造プロセスの開発
  6. Lectureship Award MBLA 10周年記念特別講演会
  7. 有機電解合成プラットフォーム「SynLectro」
  8. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜留学サバイバルTips〜
  9. Utilization of Spectral Data for Materials Informatics ー Feature Extraction and Analysis ー(スペクトルデータのマテリアルズ・インフォマティクスへの活用 ー 特徴量抽出と解析 ー)
  10. 有機合成化学協会誌2019年1月号:大環状芳香族分子・多環性芳香族ポリケチド天然物・りん光性デンドリマー・キャビタンド・金属カルベノイド・水素化ジイソブチルアルミニウム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP