[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

次世代医薬とバイオ医療

[スポンサーリンク]

次世代医薬とバイオ医療

次世代医薬とバイオ医療

¥5,390(as of 07/27 11:03)
Amazon product information

概要

医薬と医療を照らす近未来創薬研究、多様化するモダリティをまとめて解説。中分子医薬(ペプチド医薬、核酸医薬)、CAR-T細胞療法を始めとする細胞治療、MSCやiPS細胞を用いた再生医療、ゲノム編集などを応用した遺伝子治療、mRNAワクチン、エクソソーム創薬、コンパニオン診断薬、PROTAC、DEL、iChip、AI創薬など、話題の創薬研究・手法をわかりやすく紹介。(内容説明 より)

対象

  • 次世代型医薬モダリティについて網羅的に学びたい人
  • 創薬研究を志す大学院生と研究者
  • 最先端創薬事情や規制についてのとっかかりを知りたい人

内容

本書は、「創薬化学―メディシナルケミストへの道」「バイオ医薬―基礎から開発まで」に続く、創薬科学シリーズ教科書三部作の第3巻です。

現代はモダリティの多様化時代。この2巻だけでは到底記述しつくせる様子がありません。昨今の革命的成果であるmRNAワクチンも、従来の創薬概念に乗らないものであり、モダリティ多様化がもたらした一つの到達点です。このような潮流は医薬の幅を広げ、私たちの生命の安心・健康に日々貢献し続けているわけです。

第1巻の「創薬化学」は古典的王道の低分子創薬、第2巻の「バイオ医薬」はこの20年の製薬業界を牽引してきた抗体をメインとする高分子創薬を主として取り上げてきています。第3巻はそれを補完する位置づけをとりつつ、従来の枠を飛び出した「他のあらゆる創薬モダリティ」と、事例としてのマイルストーン上市薬を網羅的に取り上げています。

章立てを見ても分かるとおり、いわば「モダリティカタログ」として活用するのがよい書物だと思われます。特に抗体医薬の次世代を担うとして最近注目されている中分子医薬品を包括的に取り上げている教科書は大変希少です。また再生医療・細胞治療については、我が国の規制(法令・品質管理など)についても丁寧に触れられています。さらにはCOVID-19の対応に尽くしたmRNAワクチンの最新事情も1章を割いて記されています。第III部以降は記述の少ないところもありますが、これはまだまだ発展途上のものが多い実情を反映してもいます。

核酸医薬の章における1ページ(化学同人の立ち読みサイトより引用)

 

【章立て】
第Ⅰ部 中分子医薬および関連医薬
第1章 次世代医薬としての中分子医薬
第2章 ペプチド医薬およびペプチド様医薬
第3章 核酸医薬
第4章 mRNAワクチン

第Ⅱ部 遺伝子治療,再生医療・細胞治療および関連医薬
第5章 遺伝子治療
第6章 再生医療・細胞治療
第7章 エクソソーム創薬
第8章 個別化医療に向けた診断用医薬品-コンパニオン診断薬

第Ⅲ部 次世代医薬開発において注目すべき創薬手法・技術
第9章 新しい創薬手法-標的タンパク質を分解するPROTAC
第10章 創薬のための新スクリーニング手法-DEL(DNAコード化化合物ライブラリー)
第11章 創薬のための新たなデバイス-iChip未培養微生物
第12章 AI創薬

コラム

筆者が学生のころは、国内でも低分子創薬の勢いが強く、猫も杓子もそればかりだった記憶があるのですが、20年ほど経った今、現代創薬がこれほどまでに多様な広がりを見せていることに、隔世の感を隠しきれません。このような群雄割拠では何が今後台頭するのかさっぱり分からないと一見して思われるのですが、一個人のリソースは有限である以上、どのような技術が求められてくるはずなのかを大きな流れに沿って先読みし、一歩先んじるやり方を選びってべきであろうと常々痛感しています。

本書で記述されるモダリティは個性の強いものばかりです。これらモダリティの勃興・発展史を学び、どのような構想がその裏に流れているのかを学ぶことは、そのような力を育む大きな助けになるでしょう。

次世代医薬とバイオ医療

次世代医薬とバイオ医療

¥5,390(as of 07/27 11:03)
Amazon product information

関連書籍

創薬化学: メディシナルケミストへの道

創薬化学: メディシナルケミストへの道

¥4,290(as of 07/27 11:03)
Amazon product information
バイオ医薬: 基礎から開発まで

バイオ医薬: 基礎から開発まで

¥4,780(as of 07/27 11:03)
Amazon product information
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 交響曲第6番「炭素物語」
  2. 英会話イメージリンク習得法―英会話教室に行く前に身につけておきた…
  3. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方
  4. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際ま…
  5. 絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている
  6. Cyclopropanes in Organic Synthes…
  7. 学問と創造―ノーベル賞化学者・野依良治博士
  8. Illustrated Guide to Home Chemis…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 進化する電子顕微鏡(TEM)
  2. 不安定な合成中間体がみえる?
  3. トビン・マークス Tobin J. Marks
  4. 有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ
  5. 三原色発光するシリコン量子ドットフィルム―太陽光、高温、高湿への高い耐久性は表面構造が鍵―
  6. フォン・リヒター反応 von Richter Reaction
  7. 陰山 洋 Hiroshi Kageyama
  8. 有機硫黄ラジカル触媒で不斉反応に挑戦
  9. 第164回―「光・熱エネルギーを変換するスマート材料の開発」Panče Naumov教授
  10. 科学技術教育協会 「大学化合物プロジェクト」が第2期へ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP