[スポンサーリンク]

一般的な話題

ケミカル・ライトの作り方

[スポンサーリンク]

ケミカル・ライトは複数の化学薬品を混ぜることで光を発する、化学発光現象(chemiluminescence)を利用したアイテムです。

一般には商品名のサイリュームもしくはルミカライトで通っており、ご存知のようにコンサートを盛り上げたり、お祭りの露店を彩るのによく使われています。

化学を身近に感じられる面白いアイテムなのですが、その中身がどうなっているかは、あまり知られていないように思えます。

というわけで今回のテーマは、「ケミカル・ライトの作り方」です!


化学の実演動画をたくさん提供している、Youtube・NurdRageチャンネルでは、ケミカル・ライトの自作動画が公開されています。

解説が英語というのが難点ですが、ぼーっと見ているだけでもなかなか楽しい動画です。

ここで行われているのは以下の化学反応。基本的に混ぜるだけで進行します。

活性シュウ酸エステルと過酸化水素が反応し、1,2-ジオキセタンジオンという高エネルギー化合物が生成します。これが二分子の二酸化炭素に開裂する際、エネルギーを放出します。近くにある色素がそれを受け取って励起し、蛍光を発するという仕掛けです。

この方式のメリットは、色素をさまざまに変えてやるだけで、多種多様な発色が実現できるという点。例えば↑の動画で使われていたのは、以下のような色素たちです。

実際の商品としては、シュウ酸エステル+色素と過酸化水素が別々の容器につめたものが売られています。スティックを折り曲げてガラスアンプルを割ると、2つの溶液が混ざって化学反応が起こり、発光が始まります。このため残念ながら使い捨てですが。

見た目にかなり面白いですし、合成系の研究室ならば余っている試薬で簡単にできそうな実験です。

とはいえこういった薬品自体は、一般人が気軽に買えるかというとそうでもありません。そして最も残念な点は、ライトそのものを買ったほうがカンタンで安上がりということ・・・(涙)。家庭でやるのはそこまで簡単ではなさそうです。

とはいえこのブログの定期読者たる化学GEEKの皆さんならば、ラボの飲み会・パーティや見学会などを彩るために、一度は試してみても悪くないかも?(笑)

関連書籍

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 表裏二面性をもつ「ヤヌス型分子」の合成
  2. ヤモリの足のはなし ~吸盤ではない~
  3. ライバルのラボで大発見!そのときあなたはどうする?
  4. 力学的エネルギーで”逆”クリック!
  5. SNS予想で盛り上がれ!2021年ノーベル化学賞は誰の手に?
  6. ダイヤモンド構造と芳香族分子を結合させ新たな機能性分子を創製
  7. 緑色蛍光タンパク質を真似してRNAを光らせる
  8. 超若手科学者の発表会、サイエンス・インカレの優秀者インタビュー

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. SDGsと化学: 元素循環からのアプローチ
  2. クラウス・ミューレン Klaus Müllen
  3. ハンチュ エステルを用いる水素移動還元 Transfer Hydrogenation with Hantzsch Ester
  4. 化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学メーカー編~
  5. 有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料
  6. 北九州における化学企業の盛んな生産活動
  7. ラリー・オーヴァーマン Larry E. Overman
  8. 生命が居住できる星の条件
  9. 「もはや有機ではない有機材料化学:フルオロカーボンに可溶な材料の創製」– MIT・Swager研より
  10. 製薬会社のテレビCMがステキです

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP