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ケムステしごと

β-CDの7つの水酸基から1つだけ選ぶ。位置選択的シクロデキストリン化学への挑戦

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~シクロデキストリン誘導体の合成技術と受託合成~

シクロデキストリン(Cyclodextrin、CD)は、グルコースが環状に連結した環状オリゴ糖であり、その内部に形成される疎水性空孔を利用して様々なゲスト分子を包接できることで知られています。CDとゲスト分子との間で形成されるHost-Guest相互作用は可逆的であり、分子の包接・放出を繰り返すことができます。この特性を利用して、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、分子認識センサー、消臭剤、香料保持剤、特定物質の吸着回収材など、多岐にわたる分野で応用されています。

近年では、CD単分子の包接機能だけでなく、CDを高分子へ導入した機能性材料の研究が盛んに行われています。例えば、Host-Guest相互作用を架橋点として利用した自己修復材料、刺激応答性ゲル、高強度・高靭性材料などが数多く報告されており、CDは超分子材料化学における重要な分子ビルディングブロックとして注目を集めています。

 

~CD誘導体合成における課題~

このような機能性材料の開発において重要となるのが、CDの位置選択的修飾です。CDには多数のヒドロキシ基が存在しており、例えばβ-CDでは7個のグルコピラノースユニット由来の21個のヒドロキシ基を有しています。そのため、目的とする位置のみに官能基を導入し、高純度な誘導体として単離することは容易ではありません。

特に第一級アルコールである6位ヒドロキシ基は比較的高い反応性を示す一方で、

  • モノ置換体
  • ジ置換体
  • 多置換体

が同時に生成しやすく、目的物のみを高純度で得るためには反応選択性と精製技術の両立が必要となります。

また近年は、

「CDの特定位置に特定官能基を導入したい」

というニーズが増加しており、研究用途では構造が明確な高純度CD誘導体が求められています。

 

~ユシロの位置選択的修飾技術~

ユシロでは10年以上にわたりCD誘導体の研究開発を進めてきました。

もともとは自社で開発した自己修復性材料

  • ウィザードゲル®
  • ウィザードエラストマー®

への応用を目的としてCD誘導体の開発を開始し、その過程で多様な官能基化技術と精製技術を蓄積してきました。

当社が特に得意としているのは、

β-CDの7つの6位ヒドロキシ基のうち、1か所だけを選択的に修飾するモノ置換技術

です。合成条件の最適化により、未精製段階でも90%以上のモノ置換体選択性を実現しており、さらにカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、研究用途に求められる高純度品の供給が可能となっています。

また、

  • α-CD
  • β-CD
  • γ-CD

のいずれにも対応しており、

  • 6位一級アルコール
  • 2位二級アルコール
  • 3位二級アルコール

への選択的修飾についても検討実績を有しています。

 

~CDAAの合成と機能性材料への展開~

当社が開発した代表的なCD誘導体の一つが、

Mono-6-deoxy-6-(acrylamide)-β-cyclodextrin(CDAA)

です。

図 β⁻CDからCDAAの合成経路

 

β-CDを位置選択的にモノトシル化した後、アミノ化反応を経て6位アミノ体を合成し、その後アクリロイル化を行うことでCDAAを得ています。用途に応じてアセチル化を施し、疎水化誘導体へ展開することも可能です。

CDAAはCDの包接能とアクリルアミド基の重合性を兼ね備えた分子であり、ラジカル重合を利用して高分子中へ導入することができます。

そのため、

  • 自己修復材料
  • 刺激応答性材料
  • 分離材料
  • 超分子ネットワーク材料

など、多様な機能性材料設計に活用することが可能です。

 

~学会発表がきっかけとなった受託合成~

当社ではこれらの技術について国内の学会や研究会で発表を行ってきました。

その結果、「この位置に官能基を導入したCDを合成できないか」 「既製品には存在しない構造のCD誘導体を合成したい」

といった相談を大学や研究機関の研究者から多数いただくようになりました。近年ではそれらのニーズに応えるため、CD誘導体の受託合成を行っています。

 

~CD誘導体受託合成~

対応可能なスケールは、

  • 数gレベル
  • 数十gレベル
  • 最大100g程度

です。

対応内容の一例は以下の通りです。

  • 指定位置への官能基導入
  • モノ置換CD誘導体の合成
  • 高純度化・精製
  • α・β・γ-CDへの展開
  • 新規CD誘導体の合成検討

研究テーマに応じた構造設計についてもご相談いただけます。

~常時在庫品の一例~

研究用途向け高純度CD誘導体として、

・MON-100

・Mono-6-deoxy-6-(acrylamide)-β-cyclodextrin

・MON-500

・MON-100のアセチル化(疎水化)誘導体

を取り扱っています。

~最後に~

シクロデキストリン研究において、分子設計と同じくらい重要なのが『欲しい構造を実際に合成できること』です。

我々、株式会社ユシロは、位置選択的修飾技術を基盤として、研究者のアイデアを実際の分子へと具現化する支援を進めています。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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