[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2021年2月号:デオキシプロピオナート構造・遠隔不斉誘導反応・還元的化学変換・海洋シアノバクテリア・光学活性キニーネ

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2021年2月号がオンライン公開されました。

大学関係者は激務の時期に突入してまいりました。ウイルスに負けることなく、日々逞しく乗り越えていきたいものです。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、デオキシプロピオナート構造・遠隔不斉誘導反応・還元的化学変換・海洋シアノバクテリア・光学活性キニーネです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:もっと日本語を大切に

今月号は、大阪大学大学院薬学研究科 赤井周司 教授による巻頭言です。

○論がひと段落してきたこの時期にうってつけの巻頭言です。博論は別ですが、卒論や修論を書き終わった今こそ、自身の日本語文章作成能力を見直して改善するタイミングであると個人的には感じています。オープンアクセスですので学生のみなさん、ぜひ読んでください。

プロピレンの立体特異的オリゴマー化によるデオキシプロピオナート構造の単段階構築

 

村山駿輝、野崎京子*

*東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻

本総合論文ではプロピレン重合の立体特異的オリゴマー化と、デオキシプロピオナート構造をもつ天然物合成への展開について述べています。オリゴマー化反応では、過剰量の有機金属種を連鎖移動剤として添加する配位連鎖移動重合によって鎖長制御と末端官能基化を実現しています。

新奇遠隔不斉誘導反応によるポリアセテート型およびアセテートプロピオネート混合型ポリケチドの合成

 

細川誠二郎*

*早稲田大学先進理工学部

この論文では、多数の不斉炭素原子を含むポリケチドを、立体配置に縛られることなく自由自在に構築できるビニロガス向山アルドール反応の開発の経緯を、余すことなく詳細に、わかりやすく論じています。

コバルトやニッケル触媒を用いた有機(擬)ハロゲン化物の還元的化学変換

 

米山公啓*

2017年度有機合成化学奨励賞受賞

*広島大学大学院工学研究科

有機ハロゲン化物からグリニャール試薬を調製して求電子剤と反応・・・学生実験や研究室で頻繁に行われるこの多段階の反応も、触媒と還元剤をうまく組み合わせることで有機ハロゲン化物を直接用いることができるんです!触媒の選定に著者の鋭い洞察が垣間見られます。

海洋シアノバクテリア由来、新規天然物に関する生物有機化学的研究

 

岩﨑有紘、末永聖武*

*慶應義塾大学理工学部化学科

海洋シアノバクテリア由来のペプチド系二次代謝産物の構造決定などについての総合論文である。有機合成が構造決定や結合タンパク質の決定の強力な手段となることがよくわかる内容となっている。また、合成以外のサンプル採集の話なども随所に出ており、とても興味深い。

光学活性キニーネの全合成

 

塩見慎也1*、石川勇人2*

1*東北大学大学院理学研究科
2*熊本大学大学院先端科学研究部

G. Storkに始まる重要天然物キニーネの不斉全合成をまとめた優れた総説である。9つの不斉全合成について、合成化学者が気になる点を簡潔に説明しており、この天然物の合成戦略を知る上で欠かせない総説になろう。各時代に開発された様々な新手法を駆使した全合成を楽しむこともできる。

Review de Debut

今月号のRebut de Debutは1件です。オープンアクセスなのでぜひ。

(I)錯体への酸化的付加を起点とするカップリング反応 (早稲田大学先進理工学部)伊藤 守

ラウンジ:Gilbert Stork 先生の思い出

今月号のラウンジは、東京工業大学 辻 二郎 栄誉教授による寄稿記事です。

 

辻 二郎 教授

Gilbert Stork先生を知らない合成化学者はいないと思いますが、先生の開発した反応のみでなくその人生を知ることが、我々化学者を勇気づけてくれます。辻先生の書く文章だからこそ重みがあり、読み込んでしまいました。ぜひお読みください。

感動の瞬間:世の中の常識を覆す(人まねはしない

今月号の感動の瞬間は、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 長瀬 博 教授による寄稿記事です。

長瀬先生は非常に著名な先生なのでその仕事を知っている人も多いかと思いますが、このようにまとめて読むと改めて大きな感動がありました(読者にとっての「感動の瞬間」ですね)。“感ピューター”という言葉も好きです。必見です。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 治療応用を目指した生体適合型金属触媒:② 細胞外基質・金属錯体を…
  2. 葉緑素だけが集積したナノシート
  3. 超原子価ヨウ素反応剤を用いたジアミド類の4-イミダゾリジノン誘導…
  4. 2008年イグノーベル賞決定!
  5. フラーレンの“籠”でH2O2を運ぶ
  6. iPhone/iPod Touchで使える化学アプリ-ケーション…
  7. 実験器具・設備の価格を知っておきましょう
  8. Reaxys PhD Prize 2016ファイナリスト発表!

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケムステイブニングミキサー2019に参加しよう!
  2. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartIII+薬学会も!
  3. 特定の場所の遺伝子を活性化できる新しい分子の開発
  4. 無保護アミン類の直接的合成
  5. カルボニル基の保護 Protection of Carbonyl Group
  6. 第142回―「『理想の有機合成』を目指した反応開発と合成研究」山口潤一郎 教授
  7. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり : ② 「ポスト・イット アドバンス」
  8. ストラディバリウスの音色の秘密は「ニス」にあらず
  9. 背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?
  10. 福井鉄道と大研化学工業、11月に電池使い車両運行実験

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728

注目情報

最新記事

【十全化学】新卒採用情報

当社は行動指針の一つとして、「会社と仕事を通じて自己成長を遂げ、仕事を愉しもう!…

【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦

「核酸医薬」と聞いて、真っ先に思い起こすのは、COVID-19に対するmRNAワ…

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

材料・製品開発組織における科学的考察の風土のつくりかた ー マテリアルズ・インフォマティクスを活用し最大限の成果を得るための筋の良いテーマとは ー

開催日:2024/03/27 申込みはこちら■開催概要材料開発を取り巻く競争や環境が激し…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP