[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

(+)-ゴニオトキシンの全合成

[スポンサーリンク]

A Stereoselective Synthesis of (+)-Gonyautoxin 3
Mulcahy, J. V.; Du Bois, J. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, ASAP doi:10.1021/ja805651g

ゴニオトキシン3(gonyautoxin 3, GTX3)は麻痺性貝毒の一種であり 、電位依存性Naチャネルをブロックすることで薬理作用を示します。

スタンフォード大学のDuBoisらは、過去に独自に開発した方法論を用い、難関化合物サキシトキシン(STX,上図)の全合成を達成しています[1]。今回は、この成功を受けて、構造がさらに複雑になったゴニオトキシン全合成へと挑戦しています。しかし、同様の戦略では、より酸化度・官能基密度の高い骨格にアプローチすることは難しかったようで、STX合成から大幅なルートの変更を迫られています。

 

それでは鍵反応を詳しく見てみましょう。

GTX3_2

まずはPictet-Spengler反応。適切な酸化度をもつピロールを基質としてチョイスしています。近傍に存在するセリン由来の不斉炭素により、完全なジアステレオ選択性で反応が進行しています。

続いてはDuBoisアミノ化条件による2-アミノイミダゾリン形成[2]。独自に開発した活性なRh2(esp)2触媒を用いています。この場合には、試薬由来のアセテートが付加した生成物が取れてきます。トリクロロ基を持つTces, Tca保護基は、還元条件(H2, Pd/C, CF3CO2H, MeOH)にて、一度に脱保護が出来ます。

引き続きオスミウムを用いるジヒドロキシル化に伏す事で、最後の立体中心の導入に成功しています。モデルによるとβ位のほうが空いてるために、このようなジアステレオ選択性が発現するそうです。

ように、効率的なプロセスにて、高度に官能基化された三環性骨格を構築しています。非常に綺麗な合成だと思います。

関連文献

[1] (a) Fleming, J. J.; Du Bois, J. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 3926. DOI: 10.1021/ja0608545 (b) Fleming, J. J.; McReynolds, M. D.; Du Bois, J. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 9964. DOI: 10.1021/ja071501o

[2] Kim, M.; Mulcahy, J. V.; Espino, C. G.; Du Bois, J. Org. Lett. 2006, 8, 1073. DOI: 10.1021/ol052920y

関連試薬

Aldrich


mfcd08457636.gifRh2(esp)2錯体
:Bis[rhodium(α,α,α′,α′-tetramethyl-1,3-benzenedipropionic acid)]

分子量:758.47

 CAS:819050-89-0

製品コード:662623

用途:触媒

説明:C-H結合のアミノ化反応(Du Boisアミノ化反応)に非常に有効な触媒である。

文献:(a) Du Bois, J. et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 15378. (b) Du
Bois, J. et al. Angew. Chem., Int. Ed. 2004, 43, 4349

その他のDu Boisアミノ化反応に関する記述: 新しい触媒(Aldrichオンラインカタログ、PDFファイル)

 

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. SciFinder Future Leaders 2017: プ…
  2. 「一家に1枚」ポスターの企画募集
  3. 有機合成化学協会誌2023年10月号:典型元素・テトラシアノシク…
  4. 真空ポンプはなぜ壊れる?
  5. 引っ張ると白色蛍光を示すゴム材料
  6. 光刺激で超分子ポリマーのらせんを反転させる
  7. NMRのプローブと測定(Bruker編)
  8. 「医薬品クライシス」を読みました。

注目情報

ピックアップ記事

  1. 田中耕一 Koichi Tanaka
  2. マニュエル・アルカラゾ Manuel Alcarazo
  3. 2006年度ノーベル化学賞-スタンフォード大コンバーク教授に授与
  4. ギ酸ナトリウムでconPETを進化!
  5. スターバースト型分子、ヘキサアリールベンゼン合成の新手法
  6. クロスカップリング用Pd触媒 小ネタあれこれ
  7. 有機合成反応で乳がん手術を改革
  8. 研究開発分野におけるセキュリティ対策の傾向と、miHubでのセキュリティへの取り組み
  9. 日化年会に参加しました:たまたま聞いたA講演より
  10. 【書籍】「メタノールエコノミー」~CO2をエネルギーに変える逆転の発想~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP