[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

食べず嫌いを直し始めた酵素たち。食べさせれば分かる酵素の可能性!?

[スポンサーリンク]

 

最近は一般の人でも耳にする、”酵素”。

以前は洗剤に入っていると言うくらいの知名度だったと思いますが、今やなんだか健康食品にまで入っているようです。

してその効果の程は、そもそも酵素はタンパク質で、消化管の中のタンパク質分解”酵素”で分解されるので・・・。

と言う当たり前の話は置いておいて、酵素はタンパク質でできた化学反応の触媒として働くものです。

今回は最近の論文を紹介しながら、酵素についてちょっとだけ興味を持ってもらいたく、つぶやいてみました。

 

酵素と言えば、上述したとおり化学反応の触媒。ある決まった基質を、ある決まった反応で、ある目的の生成物をはき出します。

他の触媒と比べて、水中で利用でき、常温常圧で反応速度を大幅に向上させることができるというすばらしい触媒なのですが、応用範囲が狭い、と言うことが欠点としてあげられます。

つまり、「決まり事しか守れない」わけです。

そんな生真面目な触媒である酵素は、いつも律儀に極められたことしかやっていないと思われがちでした。

しかし最近は、どうもそんな奴らばかりではないと言うことが分かりはじめてきました。その一つは、酵素は一つなのに構造を変えることにより二つの化学反応の触媒として働くという報告です。

なんちゃって解説をしたいところなのですが、筆者サイドからきちんとした解説がなされているので、こちらは東大のプレスリリースをご覧になり理解してください。

20111011-1-2

FBPアルドラーゼ/ホスファターゼ

 

 

もう一つは、本来エステルを加水分解する酵素であるリパーゼが、なんと、Ugi反応の触媒として働くという報告です。

Model Studies on the First Enzyme-Catalyzed Ugi Reaction

Kłossowski, S.; Wiraszka, B.; Berłożecki, S.; Ostaszewski, R. Org. Lett. 2013, 15, 566–569. DOI: 10.1021/ol3033829

 

ol-2012-033829_0006

とりあえず言えることは、なにやら便利な反応と言うことです。

 

ともかく、一般的なリパーゼの反応をおさらいしておくと、いわゆるセリンプロテアーゼ型の機構でエステルを加水分解します。

 

そんな触媒部位を持つリパーゼにこれら3つの化合物を反応させると、以下のような触媒サイクルでUgi反応が進行すると考えられています。

 

2015-08-11_16-46-59

 

メカニズムに関しては当然推測ですが、本来来るべき化合物とは異なる化合物が来ても、ある種の酵素は対応し、何らかの化合物を生成できるなんて非常に面白いことだと思います。

酵素が触媒できない反応はない、と言った人がいるとかいないとか。その真偽はともかく、まだまだタンパク質性触媒の可能性は広がりそうです。

 

Avatar photo

あぽとーしす

投稿者の記事一覧

微生物から動物、遺伝子工学から有機合成化学まで広く 浅く研究してきました。論文紹介や学会報告などを通じて、研究者間の橋掛けのお手 伝いをできればと思います。一応、大学教員で、糖や酵素の研究をしております。

関連記事

  1. 日本国際賞受賞者 デビッド・アリス博士とのグループミーティング
  2. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑤:ショットノ…
  3. THE PHD MOVIE
  4. 神経変性疾患関連凝集タンパク質分解誘導剤の開発
  5. 個性あるTOC
  6. House-Meinwald転位で立体を操る
  7. 博士の学位はただの飾りか? 〜所得から見た学位取得後のキャリア〜…
  8. Org. Proc. Res. Devのススメ

注目情報

ピックアップ記事

  1. メーヤワイン・ポンドルフ・ヴァーレイ還元 Meerwein-Ponndorf-Verley (MPV) Reduction
  2. テトラメチルアンモニウム (tetramethylammonium)
  3. 学会風景2001
  4. 米国の化学系ベンチャー企業について調査結果を発表
  5. モリブデン触媒
  6. ゲルハルト・エルトゥル Gerhard Ertl
  7. 米国の博士研究員の最低賃金変更
  8. 自動車の電動化による素材・化学業界へのインパクト
  9. 低分子化合物の新しい合成法 コンビナトリアル生合成 生合成遺伝子の利用法 Total Synthesis vs Total Biosynthesis
  10. ボロールで水素を活性化

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年2月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728  

注目情報

最新記事

MDSのはなし 骨髄異形成症候群とそのお薬の開発状況 その1

Tshozoです。今回はかなり限定した疾患とそれに対するお薬の開発の中身をまとめておこうと思いま…

第42回メディシナルケミストリーシンポジウム

テーマAI×創薬 無限能可能性!? ノーベル賞研究が拓く創薬の未来を探る…

山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi

山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう、1979年1月4日–)は日本の有機化学者である。早稲田大学教授 …

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP