[スポンサーリンク]

一般的な話題

日化年会に参加しました:たまたま聞いたA講演より

[スポンサーリンク]

 先週の土曜から昨日まで、立命館大学(BKCキャンパス)で日本化学会年会が行われましたみんなオツカレ!

筆者は数年ぶり久々の参加で、発表なく聴講しただけでしたが疲れましたね何が疲れるって、社内の発表会とはやる気が違って発表してる方の真剣さが凄いですね!。特に一般A講演では「初めての発表」という方も多く、緊張がこちらに伝わってくるようでした。

もちろん特別講演や一般B講演は内容が濃く面白く、「なるほど」と説得性もある素晴らしい講演ばかり。一方で、10分で次、10分でまた次へと流れて行く一般A講演をくのは年会ならではの魅力。短時間で色々な研究を聞けてお得感満載、でも頭の切り替えが追いつかなくてパンク寸前でした。。。

今日はそんなA講演の中からたまたま聞いた1演題を、筆者の独断と偏見で紹介。

 

2-アルコキシピリジンからN置換ピリドンの合成

(3F5-44) 1価のイリジウムを触媒として用いた、炭素-酸素結合活性化を経る2-アルコキシピリジンからN置換ピリドンの合成
(早大先進理工)○笠直人・潘世光・柴田高範

130326-0002.jpg聴講メモ:演者らは(別目的での副反応から) 2-benzyloxypyridine がIr錯体触媒 10mol% [Ir(cod)2]BRAF により N-benzyloxypyridone へと変換される事を見いだした。一方、ベンジル炭素上をMe置換する(R2 = Ph, R3 = Me)と収率低下し、代わりに無置換ピリドンが副成する。副成物はβ-水素脱離によるものと考え、添加剤を検討したところNa塩 (1.1eq. NaOAc) 添加が効果的たっだ。アリル/ベンジル基のO→N移動ピリドン合成は既報であるが、本手法はアルキル基 (R2 = Et, R3 = Me)でも進行する (収率64%) 初例である。ベンジル位不斉炭素がキラルな基質では、残念ながら反応により光学収率が下がる。

 

置換ピリジンやピリドンは創薬化学ではよく用いる構造で、「水素結合能」「適度な脂溶性」「置換の多様性」などの面からドラッグデザインに使い易いフラグメントです。 一方、合成面ではこれらの作り分け、および構造解析が課題となります。

2-hydroxypyridine のアルキル化により合成しようとした場合、NとOの2つの反応点があるため、アルコキシピリジンとN-置換ピリドンの両方が得られる可能性があります。両方得られるたならば比較から構造決定し易いのですが、問題は選択的に一方が得られた場合で…

 「どうやって構造決定するの?」

いちおう、IR測定によりカルボニル振動が見えるかどうかは判断材料になりますが、「見えないからピリジン」って言って良いの?とか、そもそも他の位置にカルボニル置換基がある!とか、構造決定手段がIRのみというのはなかなかにリスキーです。かといってX線結晶構造解析する労力をかけるものか??

別経路として、2-halopyridineに求核置換でアルコキシを差す、という経路もあります。この場合、アルコキシピリジンのみが得られます。なので、構造決定に悩まずに済みますね。

 

「でもピリドン作りたかったら?」…困った

 そんなジレンマに悩むピリドンユーザーへの朗報。アルコキシピリジンを合成しておいて、それを移動させてN-置換ピリドンを合成するというのは、構造決定面でも有利な実にリーズナブルな分子変換だと感じました。まだearly workで「展開はこれから」という雰囲気でしたが、アルキル基のバリエーション、N2個の環への適用、光学収率の向上と夢が膨らみます。ぜひ使い易い反応に早く仕上げて頂きたいものです。期待しています。

 

 

年会の意義

読んだ人がどれだけ居るか知りませんが、プログラムの最初に玉尾会長と中條実行委員長の対談が載っております。年会の意義について「鍛錬と教育の”場”」「人と情報の出会いの”場”」と話しておられ、また「いろいろな方と出会うことによって”友=人脈”を作って欲しい」「年会に言ってこい。百人の友を作ってこい」と言われてます。

上記記事も(予習ではノーマークで)たまたま聞いた発表で「あれ?面白いかも」と思ったやつです。A講演の中でも素敵な”情報”との出会いがありますね。また”人”の面でも、ケムステスタッフ間交流のほか、お世話頂いた先生方/試薬会社さん、大学の先輩/後輩、あとはお世話になった「反応」の論文著者さん、面白かった講演演者さん等々様々な方々と交流させて頂きまして、大満足です。Facebookのお友達も10人増えました!

 

あれ、10人?玉尾会長設定の「100人」の1割ですか…残念w

 

関連記事

  1. すべてがFになる
  2. フラッシュ精製装置「バイオタージSelect」を試してみた
  3. タンパク質立体構造をPDBjViewerで表示しよう
  4. 細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発
  5. 化学者のためのエレクトロニクス講座~電解金めっき編~
  6. IASO R7の試薬データベースを構造式検索できるようにしてみた…
  7. 天然物の構造改訂:30年間信じられていた立体配置が逆だった
  8. Appel反応を用いるホスフィンの不斉酸化

注目情報

ピックアップ記事

  1. オゾンと光だけでアジピン酸をつくる
  2. ラジカル重合の弱点を克服!精密重合とポリマーの高機能化を叶えるRAFT重合
  3. 理化学機器のリユースマーケット「ZAI」
  4. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!
  5. 世界初 もみ殻からLEDを開発!~オレンジ色に発光するシリコン量子ドットLED~
  6. アセト酢酸エステル/マロン酸エステル合成 Acetoacetic Ester / Malonic Ester Synthesis
  7. 核酸合成試薬(ホスホロアミダイト法)
  8. 文化勲章・受章化学者一覧
  9. 来年の応募に向けて!:SciFinder Future Leaders 2018 体験記
  10. MOF-74: ベンゼンが金属鎖を繋いで作るハニカム構造

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2024年版】

今年もノーベル賞シーズンが近づいてきました!各媒体からかき集めた情報を元に、「未…

有機合成化学協会誌2024年9月号:ホウ素媒介アグリコン転移反応・有機電解合成・ヘキサヒドロインダン骨格・MHAT/RPC機構・CDC反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年9月号がオンライン公開されています。…

初歩から学ぶ無機化学

概要本書は,高等学校で学ぶ化学の一歩先を扱っています。読者の皆様には,工学部や理学部,医学部…

理研の研究者が考える“実験ロボット”の未来とは?

bergです。昨今、人工知能(AI)が社会を賑わせており、関連のトピックスを耳にしない日はないといっ…

【9月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ①

セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチック…

2024年度 第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブル ケミストリー ネットワーク会議(略称: …

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

開催日時 2024.09.11 15:00-16:00 申込みはこちら開催概要持続可能な…

第18回 Student Grant Award 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク会議(略称:JAC…

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分…

化学コミュニケーション賞2024、候補者募集中!

化学コミュニケーション賞は、日本化学連合が2011年に設立した賞です。「化学・化学技術」に対する社会…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP