概要
化学分野の諸問題に潜む線形代数の要素を,化学専攻の目線から解体・解説する。(引用:コロナ社)
対象者
- 化学を専攻している大学院生
- 意欲ある学部生
目次
1.分子構造
1.1 分子の形を数値で表す
1.1.1 座標軸と基底
1.1.2 ベクトルの計算規則
1.2 平面分子の並進と回転
1.2.1 分子の並進
1.2.2 分子の回転
1.2.3 座標軸の回転
1.3 行列計算のルール
1.3.1 行列の積
1.3.2 逆行列
1.3.3 移動と逆移動
1.4 非平面分子の並進と回転
1.4.1 三次元の並進と回転
1.4.2 鏡映
1.4.3 反転
1.5 移動操作の線形性
1.5.1 線形変換
1.5.2 線形変換の性質2.結晶格子
2.1 二次元の結晶格子
2.1.1 二次元の格子ベクトル
2.1.2 分率座標
2.2 逆行列と行列式
2.2.1 逆行列の形
2.2.2 行列式の形
2.2.3 行列式の意味
2.3 三次元の結晶格子
2.3.1 三次元の格子ベクトル
2.3.2 晶系の変換
2.3.3 7種の晶系
2.4 いろいろな変形操作
2.4.1 拡縮・せん断
2.4.2 射影
2.4.3 変形と行列式
2.5 実格子と逆格子
2.5.1 ベクトルの内積
2.5.2 転置行列
2.5.3 双対基底
2.6 反変成分と共変成分
2.6.1 座標変換と成分
2.6.2 計量テンソル3.対称性と群論
3.1 対称性と点群
3.1.1 対称操作の群
3.1.2 点群の要素
3.2 指標表と既約表現
3.2.1 指標と群の表現
3.2.2 既約表現
3.2.3 対称操作の類
3.3 アフィン変換
3.3.1 並進対称性
3.3.2 アフィン代数
3.4 壁紙群(文様群)
3.4.1 二次元の並進と回転
3.4.2 分率座標系における対称操作
3.4.3 鏡映と映進
3.5 空間群
3.5.1 三次元の並進対称性
3.5.2 三次元特有の対称操作4.分子力学
4.1 分子の並進と回転
4.1.1 並進運動
4.1.2 回転運動
4.1.3 慣性テンソル
4.2 行列の対角化と固有値
4.2.1 慣性主値
4.2.2 行列の対角化
4.2.3 固有値の意味
4.3 行列とテンソル
4.3.1 直積集合
4.3.2 テンソルの代数
4.3.3 独立変量のテンソル表記
4.4 分子内部の変形と振動
4.4.1 分子力学法
4.4.2 分子の振動
4.5 基準振動と対称性
4.5.1 質量加重座標系
4.5.2 基準振動解析
4.6 基底の直交化
4.6.1 座標軸の回転
4.6.2 直交化の方法5.多変量解析
5.1 データの統計値
5.1.1 データの平均
5.1.2 データの分散
5.1.3 共分散行列
5.2 最小二乗法と相関係数
5.2.1 最小二乗法
5.2.2 相関係数
5.3 多重線形回帰
5.3.1 行列型データ
5.3.2 回帰式の意味
5.4 主成分分析
5.4.1 行列の因数分解
5.4.2 次元削減
5.4.3 主成分分析
5.5 固有値分解と特異値分解
5.5.1 固有値分解
5.5.2 特異値分解
5.6 連立一次方程式の解
5.6.1 一意解と不定解
5.6.2 最小二乗解
5.6.3 分子構造への応用6.量子化学
6.1 ベクトルの抽象化
6.1.1 基底と成分表示
6.1.2 ブラケット記法
6.1.3 行列の抽象化
6.2 状態をベクトルで表す
6.2.1 状態と確率
6.2.2 状態の観測
6.2.3 独立系のテンソル表記
6.3 シュレディンガー方程式
6.3.1 離散から連続へ
6.3.2 波動関数
6.4 分子軌道理論とLCAO近似
6.4.1 分子軌道理論
6.4.2 LCAO近似
6.4.3 永年方程式
6.5 永年方程式の解の意味
6.5.1 ヒュッケル近似
6.5.2 電子密度と結合次数
6.5.3 分子軌道と対称性付録
付録1 壁紙群の一覧表
付録2 慣性テンソルの導出
付録3 Z-マトリクスから直交座標への変換参考文献
索引・全206ページ
内容
本書は化学を専攻している人の視点で書かれた線形代数の本です。
線形代数について書かれた本は数学・物理の分野で多く存在しますが,化学を専攻する人が触れるトピック (分子力学,多変量解析,量子化学) に焦点を当てた本は少ないように思います。
また,化学専攻の学生がそれらのトピックでつまづくポイントの多くは化学ではなく,数学にあることが多いようにも思います。
本書はそのような化学のトピックを理解するために必要な線形代数をピックアップし,丁寧に解説をしています。
構成
ここでは特に5章「多変量解析」について述べます。
化学を含め実験科学においてはデータの信頼性が重要であることは言うまでもありません。
また,大量のデータ群のから人間の目では気づけない相関関係を見つけ,因果関係を推測することも重要です。
多変量解析は以上の2点を解決する上で必要なアプローチを提供します。
本書ではまず吸光度を例に多変量解析を行う際に必要な用語から丁寧に導入します。
次に初学社がつまづきがちな共分散行列や相関係数はもちろん,主成分分析や特異値分解についてもUV-Visスペクトルや分子構造解析を例に解説します。
数学や物理の本では解説されることの少ないそれら手法の使い方などにも触れられています。
本書の各所には問題があります。
この問題は,それまでの本の内容の理解を確認することやちょっとした応用を行うことが多く,内容をきちんと理解できているのかを適宜確認しながら読み進めることができます。
関連書籍
次の本では Python を用いて多変量解析をどのように実装するか,について詳しく解説しています。
本書を読んで実際に解析を行いたい!と思った方には是非おすすめです。