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日本人化学者インタビュー

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

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第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講演者の一人、産業技術総合研究所・触媒化学研究部門 熊田佳菜子 主任研究員にお願いしました。

有機合成化学のバックグラウンドを武器に、自立型合成システムの開発を強力に推し進める研究を推進されています。最近、さきがけ研究者としても採択され、次代を担う女性化学者としても注目を集める存在です!

11月28日 13:00-18:00に開催されるVシンポでは、熊田先生のお話もうかがえます。登録ページに直接飛びたい方は こちらの登録ページリンク にどうぞ!

それではインタビューをどうぞご覧ください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

親戚ががんで亡くなったことが最初のきっかけです。身近な人が病気で苦しむ姿を見て、「人の命を救う薬を作りたい」と強く思い、薬学部に進学しました。大学では化学や生物など多くの授業を受ける中で、薬を設計し、実際に作り出すためには、有機化学の力が欠かせないことを知りました。最初は反応式や立体構造に戸惑いましたが、分子の形や結合を少し変えるだけで性質や活性が大きく変化することに感動し、次第に有機化学の奥深さに惹かれていきました。気づけば、有機化学の研究室に入り、「薬を作る」だけでなく、「新しい分子を生み出し、化学の力で未来の可能性を広げたい」と思うようになり、今の化学者の道を選びました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

もし化学者でなかったら、カフェを経営してみたいです。もともとコーヒーが好きで、大学時代の6年間、カフェでアルバイトをしていました。あのゆったりとした空間や、人と人との温かい交流が生まれる雰囲気が好きなんです。いつかは、自分の理想の空間をつくって、訪れる人がほっとできる時間を提供できたらいいなと思います。また、コーヒーそのものにも強いこだわりがあります。家で淹れるときには豆の種類や抽出方法をいろいろ試しながら、自分好みの味を探しています。もしカフェを開くチャンスがあったら、コーヒー豆を現地まで買い付けに行くような、味にも空間にもこだわったお店にしたいです!

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

産総研に異動してから、自律型有機合成実験システムの構築を行っています。これは、人工知能(AI)とロボット技術を組み合わせて、有機化学反応の設計・実行・解析・最適化を自動的に行うシステムのことです。産総研に入所する前は、「AIって何者ですか?」という状況でしたが、日々勉強しながら研究に取り組んでいます!将来的には、この自律型実験システムを社会に広く実装し、化学研究の新しい形をつくっていきたいと考えています。実用化が進めば、医薬品や化学産業の研究開発を加速し、国際競争力の向上にもつながります。さらに、これまで有機化学があまり活用されてこなかった分野にも応用の可能性が広がると考えています。今後も、実用的な技術の開発を通じて社会に貢献していきたいと思います!

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

日本の有機化学の祖ともいわれる真島利行先生です。先生は、私の母校である東北大学の教授として、研究と教育の両面で多大な功績を残されました。特に、漆の成分であるウルシオールの構造を決定し、さらにその合成にも成功されたことで知られ、日本の有機化学研究の礎を築かれた方です。また、多くの優れた弟子を育てられたことでも有名であり、弟子には野副鉄男先生、杉野目晴貞先生、孫弟子には向山光昭先生や正宗-Bergman反応で有名な正宗悟先生などがいらっしゃいます。夕食の席では、研究を続ける上で大切にされていた信念や、弟子たちに伝えた思い、そして現在の日本の有機化学をどのように見ておられるかを是非伺ってみたいです!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

先週です!現在、産総研内のバイオ系研究室と共同研究を行っており、詳細は言えないのですが、先週はその実験を行っておりました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

Go!Go!7188の「C7」です(知ってる人いるかな?)。バラードよりもアップテンポな曲が好きで、今でもよく聴いています。高校生のときは、Go!Go!7188のコピバンを組んでいたくらい大好きでした!解散してしまって、ライブに行けなかったのがとても心残りです…

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

グラスゴー大学のLeroy Cronin先生です!先生は、化学反応をデジタル化・自動化する「Chemputer」プラットフォームをはじめ、人工知能やロボティクスを融合させた自律型化学実験システムの研究において、先駆的な研究者の一人です。分子合成をアルゴリズムで制御し、誰もが再現可能な化学実験を実現するというビジョンは、まさに次世代の化学研究の方向性を示しています。私自身も自律実験システムの研究に携わる中で、先生の先見的な取り組みから多くの刺激を受けています。化学研究の新しい形を切り拓く先生の思想や、今後の化学のあり方について是非インタビューをして欲しいです!

 

*本インタビューは2025年11月4日に行われたものです

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投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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