[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2020年8月号:E2212製法・ヘリセン・炭素架橋オリゴフェニレンビニレン・ジケトホスファニル・水素結合性分子集合体

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2020年8月号がオンライン公開されました。今回は担当が産休のため、代表が本誌を紹介いたします。

さて、皆様は夏休みまっさかりでしょうか。通常ならば経済活性化のため、Go to トラベル!といいたいところですが、ちょっとそんな雰囲気ではないですね。私は部屋に閉じこもってお仕事の真っ最中です。気晴らしにぜひ本誌でもいかがでしょうか。

有機合成化学協会誌、今月号も盛り沢山の内容になっております。

キーワードは 「E2212製法・ヘリセン・炭素架橋オリゴフェニレンビニレン・ジケトホスファニル・水素結合性分子集合体」です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:「伝えること」の大切さと難しさ 

北海道大学大学院工学研究院教授・フロンティア化学教育研究センター長の大熊 毅教授による巻頭言です。

コロナ禍でのオンデマンド講義やミーティング。簡便である一方「伝えること」の難しさがある。一方化学の世界を見てみると化学構造式で魅了できる化学を伝えることの大切さを説いています。是非ご覧あれ。

個人的にはみんな有機化学者(構造式がわかるひと)だったらいいのにと思います。化学以外のひとには僕らの共通言語がまったく使えないので。

迅速な臨床導入に向けたE2212原薬の効率的製法の開発

磯村峰孝、中村太樹

エーザイ株式会社

日本プロセス化学会賞も受賞したアルツハイマー病治療薬E2212のプロセス合成法の確立について述べられています。詳細な条件検討、反応機構や反応性の理解、フロー反応の利用という独自のアイデアと実行面での工夫、そして著者のプロセス化学への愛情がうかがえる総合論文になっています。

 

ヘリセンのらせん構造内部空間に着目した機能性分子の創製研究

臼井一晃

昭和薬科大学薬学部

「らせん」の中の「小さな」空間に潜む「大きな」可能性。ヘリセン内部に置換基を導入した内部置換型キラルヘリセンの巧みな合成と、不斉金属触媒配位子、結晶構造制御への展開が秀逸です。計算化学とX線結晶構造解析による解析、予測も参考になります。

剛直平面構造をもつ炭素架橋オリゴフェニレンビニレン(COPV)の合成、物性、応用

辻 勇人1中村栄一2

Synthesis, Property and Application of Rigid Planar Carbon-bridged Oilgo(phenylenevinylene)s Hayato Tsuji1 and Eiichi Nakamura2

1神奈川大学理学部化学科

2東京大学総括プロジェクト機構

本論文は炭素架橋を有するオリゴフェニレンビニレン (COPVn, n = 1 – 6) の合成と構造、基礎物性とそれらの応用について詳細に記述されている。優れた光物性や酸化還元特性、化学的安定性に基づく様々な応用展開が記述されており、この分子の優れた特性と広い応用性に驚きを感じる。

水素結合性分子集合体のダイナミクスと物性化学

武田貴志 、芥川智行

東北大学多元物質科学研究所

本総合論文では、集合構造とダイナミクスの制御を通じた水素結合性分子集合体の機能開発に関する、著者らのグループの取り組みについてまとめられています。機能物性科学の観点から見ると、シンプルな化合物でも多彩な機能が発現し得ることが明示されており、有機合成化学者にも大きなインスピレーションを与えるものと思います。ぜひご一読下さい!

 

芳香環縮環ジケトホスファニル骨格をコアとする機能性π共役分子の創製

武田洋平

大阪大学大学院工学研究科

有機半導体材料で有名な芳香環縮環ジイミドにインスパイアされたジケトホスファニル化合物について、合成だけでなくユニークな物性について紹介。当該骨格をビルディングとした共役系ポリマーの吸収域は、近赤外までの長波長化。ローバンドギャップ材料への応用が期待できる。

Review de Debut

DNA encoded library の多様性拡大を指向した有機合成 (京都薬科大学)浜田翔平

今回のReview de Debutは1件です。京都薬科大学の古田研助教の浜田翔平先生のミニレビューが掲載されています。こちらは会員でなくともみれますので、ぜひご覧ください。

感動の瞬間: 発見の喜び

今月号の感動の瞬間は、九州大学名誉教授・日本希土類学会顧問である稲永純二先生による寄稿記事です。

有機合成化学の重要な反応や反応剤の発見の歴史がわかるため大変おすすめです。私も知りませんでした。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759819320″ locale=”JP” title=”企業研究者たちの感動の瞬間: モノづくりに賭ける夢と情熱”] [amazonjs asin=”4759810803″ locale=”JP” title=”化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語”]

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 「野依フォーラム若手育成塾」とは!?
  2. (+)-ゴニオトキシンの全合成
  3. 第23回ケムステVシンポ『進化を続ける核酸化学』を開催します!
  4. シス優先的プリンス反応でsemisynthesis!abeo-ス…
  5. 生命由来の有機分子を見分ける新手法を開発
  6. 技あり!マイルドにエーテルを切ってホウ素で結ぶ
  7. 林 雄二郎博士に聞く ポットエコノミーの化学
  8. ピレスロイド系殺虫剤のはなし

注目情報

ピックアップ記事

  1. マイケル付加 Michael Addition
  2. ワイリー・サイエンスカフェ開設記念クイズ・キャンペーン
  3. NHCが触媒する不斉ヒドロフッ素化
  4. 掟破り酵素の仕組みを解く
  5. 多孔質ガス貯蔵のジレンマを打ち破った MOF –質量でもよし、体積でもよし–
  6. ケムステV年末ライブ2023開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  7. 第18回ケムステVシンポ『”やわらか電子材料” 有機半導体の世界』を開催します!
  8. こんなのアリ!?ギ酸でヒドロカルボキシル化
  9. シャープレス・香月不斉エポキシ化反応 Sharpless-Katsuki Asymmetric Epoxidation (Sharpless AE)
  10. エリック・アレクサニアン Eric J. Alexanian

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いていま…

インドの農薬市場と各社の事業戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、インド…

【味の素ファインテクノ】新卒採用情報(2027卒)

当社は入社時研修を経て、先輩指導のもと、実践(※)の場でご活躍いただきます。…

味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介します

食品会社として知られる味の素社ですが、味の素ファインテクノ社はその味の素グループ…

味の素ファインテクノ社の技術と社会貢献

味の素ファインテクノ社は、電子材料の分野において独創的な製品を開発し、お客様の中にイノベーションを起…

サステナブル社会の実現に貢献する新製品開発

味の素ファインテクノ社が開発し、これから事業に発展して、社会に大きく貢献する製品…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP