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日本人化学者インタビュー

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

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第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講演者の一人、塩野義製薬株式会社 細谷昌弘 サブグループ長にお願いしました。

製薬プロセス化学の分野で、フロー合成の力をフル活用した取り組みを研究されています。

11月28日 13:00-18:00に開催されるVシンポでは、細谷先生のお話もうかがえます。登録ページに直接飛びたい方は こちらの登録ページリンク にどうぞ!

それではインタビューをどうぞご覧ください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

高校の頃は物理の方が好きでした。少ない法則から色々な公式を導き出し、様々な現象を演繹的に説明できる感じが魅力的でした。化学はというと、高校までは暗記や面倒な計算が多い印象でした。しかし、大学に入ってから特に有機化学において、電子の動きや軌道をイメージすれば多様な化学反応を説明でき、また物質の物性はその分子構造に起因するということを実感できてからは、有機化学に関する興味が深まりました。大学の研究室で有機化学の実験および研究を行う中、化学者として研究開発の仕事に就きたいと考えるようになりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

農業や食品の開発などもやってみたいですね。違う分野においても何らかモノづくりには携わってみたいと思います。

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

塩野義製薬株式会社に入社以来、主に低分子医薬品原薬の製造法開発に従事し、いくつかの医薬品の上市に貢献することができました。臨床開発の初期から後期にわたる幅広い開発ステージに携わる機会に恵まれ、自身が関わった医薬品が実際に製品として世の中に出ていく経験を出来たことは、私にとってかけがえのない財産だと思います。最近ではCOVID-19治療薬としてEnsitrelvirの上市にも携わることができ、これからも価値ある医薬品の創製に微力ながら尽力していきたいです。
革新的な医薬品原薬の製造法開発を目指して連続生産技術の開発についても尽力しています。その中で、多様な反応性状に対応できる連続フロー合成技術の開発およびそれに応じたフローリアクターの開発を行ってきました。本技術開発をきっかけに、対外的な講演依頼も増加し、社外の様々な方々と議論する機会が増えました。自社における技術開発にこだわりすぎず、外部との協業を通じて、本当に理想的な医薬品原薬の製造法とは何かを追求していきたいと考えています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

塩野義三郎さんですかね。弊社の創業者であり、今の我々の進む姿についてお話を伺いたいですね。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

今も研究室で実験を行っています。臨床試験入りを目指す医薬品候補化合物の合成方法の検討を行っており、高難易度のラジカル反応を工業スケールで制御する製造法開発に難儀しています。光反応や電解反応などはアカデミアで盛んに研究されているものの、その工業化という点においては十分な方法論が確立されていません。有用な合成技術をより簡便に工業化できるような方法論を提案していければと考えています。
研究開発に関する組織目標の設定、研究方針の決定や進捗管理などの管理業務が増加し自分で手を動かす機会が年を追うごとに減っているのは事実ですが、そのバランスを取りながら研究開発の質向上に貢献していきたいと思います。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

砂漠の島を「化学と工業」の定期購読先に指定できますか?

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

現在は小野薬品工業株式会社に所属している臼谷弘次さんです。同じプロセス化学、フロー合成化学の発展を目指す企業研究員として、これからも切磋琢磨していきたいと思います。

 

*本インタビューは2025年10月7日に行われたものです

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cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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