「現代化学」に連載されていた人気記事を書籍化。物理化学や量子化学の本質的理解に必要な数学的概念を、豊富な化学式と例題によって解説している。
対象
大学生、大学院生、研究者等
概要
化学に必要な数学を基礎から一冊で学べる入門書
●本書の三つの特徴
① 化学に必要な数学を過不足なく網羅
微分・積分や線形代数から、対称性・群論、フーリエ解析、統計まで。
化学の理解に不可欠な内容を体系的に収録。
②途中式を省かない丁寧な解説
計算の流れを一つひとつ追えるため、独学でも安心。
演習問題の解説も充実し、着実に理解を深められます。
③化学とのつながりが見える
数学を化学現象と結びつけて解説し、「なぜこの数学が必要なのか」が自然と理解できます。物理化学の数式でつまずいた方、数学と化学の関係をきちんと理解したい方に。
数学は目的ではなく、化学を理解するための道具にすぎない――
その使い方がわかると、化学の見え方は大きく変わります。
| 著者 | 田中 一義 著 |
|---|---|
| ジャンル | 物理学・数学 > 数学・統計 |
| 出版年月日 | 2025/03/04 |
| 書店発売日 | 2025/03/04 |
| ISBN | 9784807920624 |
| 判型・ページ数 | A5 ・ 256ページ |
| 定価 | 3,630円(本体3,300円+税) |
目次
1.微分と偏微分
1・1 はじめに
1・2 偏微分とは?
1・3 高次の偏微分
1・4 全微分
1・5 熱力学における偏微分のまとめ
1・6 量子力学と偏微分
1・7 シュレーディンガー方程式に出てくる偏微分
1・8 座標変換に伴う1次偏微分演算子∇の変化
1・9 座標変換に伴う2次偏微分演算子の∇2の変化
1・10 分子エネルギーの極小化
1・11 量子力学における偏微分のまとめ
演習問題と解答
2.1変数の微分方程式
2・1 微分方程式が必要な理由
2・2 熱力学と常微分方程式——クラウジウス-クラペイロンの式
2・3 化学反応速度論と常微分方程式
2・4 量子力学における常微分方程式
2・5 1次元の箱の中の電子
2・6 量子力学に現れる微分方程式の特徴
2・7 量子力学的な調和振動子
2・8 本章のまとめ
演習問題と解答
3.多変数の微分方程式
3・1 はじめに
3・2 3次元の箱の中の電子
3・3 水素原子のシュレーディンガー方程式
3・4 球面極座標を用いた水素原子のシュレーディンガー方程式
3・5 方位角φに対する常微分方程式
3・6 天頂角θに対する常微分方程式
3・7 球面調和関数
3・8 動径rに対する常微分方程式
3・9 実関数化した水素原子の軌道とエネルギー
3・10 本章のまとめ
演習問題と解答
4.積分
4・1 はじめに
4・2 重積分とヤコビアン
4・3 実用的な積分公式とその導出
4・4 スターリングの公式
4・5 積分の経路
4・6 正規直交系
4・7 期待値の求め方
4・8 量子力学と積分
4・9 本章のまとめ
演習問題と解答
5.行列と行列式
5・1 はじめに
5・2 永年方程式と行列式
5・3 行列式の展開公式
5・4 行列の固有値と固有ベクトル
5・5 分子の回転操作の例
5・6 分子の対称操作
5・7 対称操作の数学的表現
5・8 既約表現の指標
5・9 本章のまとめ
演習問題と解答
6.対称性と群論
6・1 はじめに
6・2 対称操作と点群
6・3 対称操作と基底関数
6・4 MOと既約表現
6・5 指標の規格直交性
6・6 積分への応用
6・7 本章のまとめ
演習問題と解答
7.基本的な関数の性質
7・1 はじめに
7・2 ボルツマン分布関数
7・3 マクスウェルの速度分布関数
7・4 量子力学の波動関数
7・5 ボルンの解釈と波動関数の規格化
7・6 波動関数の規格化と直交性
7・7 自由電子の波動関数
7・8 波動関数の軌道近似
7・9 テイラー展開
7・10 本章のまとめ
演習問題と解答
8.フーリエ解析
8・1 はじめに
8・2 周期関数とフーリエ展開
8・3 フーリエ係数の複素形式
8・4 任意周期の関数とフーリエ展開
8・5 非周期関数とフーリエ変換
8・6 本章のまとめ
演習問題と解答
9.統計と分布
9・1 はじめに
9・2 確率変数と確率密度
9・3 平均と分散
9・4 正規分布
9・5 二項分布
9・6 ポアソン分布
9・7 母集団と標本集団
9・8 母平均の推定
9・9 本章のまとめ
演習問題と解答
10.次元解析とデータ処理
10・1 はじめに
10・2 次元解析
10・3 相関分析
10・4 回帰分析
10・5 データの平滑化
10・6 本章のまとめ
演習問題と解答
コラム
対数
偏微分方程式としてのシュレーディンガー方程式
書評
本書評の筆者の私 (DAICHAN) は、化学を生業としつつも直感的な実験化学や典型的な電子の動きに基づく有機反応に分野を偏らせてきたこともあり、理論・物理化学など数学的な思考が必要な部分に関しては敬遠してここまでやり過ごしてきました。しかし、そんなことではいかんと一念発起し、本書の書評を買って出ました。以下、数学わからん勢からの視点ということを感じながら書評を読んでいただきたいです。
まず、高校数学 (III・C) レベルの基礎知識 (微積・行列・複素関数など) は本書を理解する上で必須になります。この辺りは、理論化学や物理化学を専攻している方々にとっては朝飯前かもしれませんが、私の生きてきた薬学部の世界では実質的にほとんど出てくることがなかったので、まず昔の参考書を引っ張り出し傍らに置いて適宜重要公式などを思い出しながら読み解いていきました。
というわけで内容としては結構難しいと感じましたが、良いと感じたのは数式を一つ一つ丁寧に記述し、過程をできるだけ省略していないことです。「数式に頼らない計算化学」などを謳った書籍もあり (それはそれで助かる) ますが、本書はその真逆であり、あくまでも数式を用いた解説によって丁寧に各項目を解説しています。ひとつの数式の変換にも苦労する私ではありますが、何回か読み返し「ああ、そういうことか」と理解できた時は、パズルが完成したような喜びを味わうことができました。数学って分かってくると楽しいんですね…。
さて、読み進めていると出てきたのがシュレーディンガー方程式。猫ちゃんの話はさすがに知っていますが、実際に方程式を解いていくのは初めてです。本書では、化学徒の皆さんにも馴染み深い水素原子のシュレーディンガー方程式をじっくり解いていく部分があります。書籍内でも筆者が述べているように、「このような作業は一生に1度しかない」と思いましたので、特に時間をかけて読んでみました。これにはかなりのページ数が割かれていて、いまだに完全に理解はできていませんが、普段見る原子軌道の図に繋がった時は感動しました。
もう一つ馴染み深い単語がフーリエ解析。NMR ほかの信号を私のような者でも理解できる形に換算してくれるフーリエ変換には非常にお世話になっておりますが、その仕組みはまったく理解できていませんでした (余談ですがパルスシーケンスも何やってるかわからない)。本書では段階的な式によりその重要式のひとつひとつに迫らせてくれます。NMR の解析ソフトはこれを瞬時に変換しているのですね…。コンピュータってすごい!(小並感)
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フーリエ解析の章の導入 |
統計についても、簡単ながら触れられています。これも数学わからん勢には耳が痛くなる言葉ですが、化合物のアッセイをやっている以上避けて通ることはできません (普段はソフトウェアと専門家に任せている) ので、読解にチャレンジしました。この章はいちおう聞いたことのある単語が多く、わりかしスラスラと読めましたが、本当に導入部分という感じで、「統計学」という学問領域がなぜあんなにも複雑なのかをまざまざと思い知らされることとなりました。
さて、本書のウリは自習問題と演習問題の豊富さです。解答も段階的な数式でしっかりと解説し、読者を置いてけぼりにしません。解説がなかったり別の解答集を買わないといけない参考書も多くありますので、この辺りはとても嬉しいですね。
こちらの書評にも記されているように、「本書では物理化学の教科書にはない式の成り立ちの背景も学ぶことができる」ということで、私が学部生時代に使っていた物理化学の教科書がなんて不親切だったんだと思うくらい、丁寧な解説がなされています。そして帯にある著者のコメント「化学にとっての数学は、目的ではなくツール以外の何者でもない. そう割り切ったうえで慣れてくると, おもしろいところもある」には勇気づけられました。割り切ってしまえば、完全に理解できなくても、「おもしろいな」と思えればこっちのものだと思います。
ですが本書はあくまでも「入門書」だということで、東京化学同人からはより専門的な数学・物理化学の教科書も多数出版されています。さらに力をつけたい方は、ぜひ同社の書籍での学習をオススメします。































