[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

有機合成化学協会誌2017年12月号:四ヨウ化チタン・高機能金属ナノクラスター・ジシリルベンゼン・超分子タンパク質・マンノペプチマイシンアグリコン

[スポンサーリンク]

2017年も残すところあとわずかですね。みなさまにとって2017年はどのような年でしたでしょうか。

さてさて、有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌の12月号がオンライン公開されています。各記事をひらいてみるとわかりますが、J-STAGEのHPがリニューアルされてました。

12月号も有機合成化学に関連する、興味深い話題が紹介されています。今月号のキーワードは、

「四ヨウ化チタン・高機能金属ナノクラスター・ジシリルベンゼン・超分子タンパク質・マンノペプチマイシンアグリコン」

です。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

みなさま年の瀬でお忙しいかと思いますが、ぜひ今月号もごらんください!

四ヨウ化チタンのヨードチタン化能力を活用する新規合成反応

三重大学大学院工学研究科分子素材工学専攻 八谷 巌先生、溝田 功先生、清水 真先生

ハロゲン化チタンは、様々な炭素−炭素結合形成反応に利用されています。しかし一方で、ヨウ素の生産量世界第2位を誇る我が国においても、四ヨウ化チタン(TiI4)を有機合成に用いる研究は多くありません。筆者らは、ヨウ化チタンの持つルイス酸性、還元能およびヨードチタン化能をフル活用し、新たな合成反応を開発しており、今後もさらなる発展が期待されます。

精密有機合成を実現する高機能金属ナノクラスター触媒の開発

東京大学大学院理学系研究科 宮村浩之先生、小林 修先生

筆者らは金属ナノクラスター触媒を精密有機合成化学に用いることを目的に、ポリスチレンを基盤とする架橋型高分子を担体として回収、再使用可能な不均一系金属ナノクラスター触媒を開発しました。サイズ選択的なナノクラスター合成や、二元金属効果,反応場となる高分子構造の精密制御等により不斉炭素-炭素結合形成反応,反応集積化や不均一系二機能性触媒、協調触媒といった、これまで金属ナノクラスター触媒反応において未開拓であった領域で積極的に研究を展開し、金属ナノクラスター触媒が従前の触媒と比較してもより優れた触媒であることを明らかにしました。

貴金属代替を指向した鉄触媒設計と触媒反応開発

東京大学生産技術研究所 砂田祐輔先生

九州大学先導物質化学研究所 永島英夫先生

本総合論文は、ビス(シリル)ベンゼンを配位子として用いた鉄錯体とそれを触媒とした数々の反応(カルボニル化合物の還元、アルケンの水素化とヒドロシリル化)について述べています。また、鉄やコバルトのカルボン酸塩を触媒とするアルケンのヒドロシリル化についても紹介しています。

超分子タンパク質の分子設計によるバイオハイブリッド材料の開発

東京工業大学生命理工学院 安部 聡先生、上野隆史先生

タンパク質集合体が作る特異な空間を利用した新しい化学の展開として、金属触媒とタンパク質集合体をハイブリッド化することで実現できる種々の反応や細胞内結晶化というユニークな手法など、筆者らの独創的な研究成果を紹介した興味深い総合論文です。

マンノペプチマイシンアグリコンの合成と立体配置訂正

東京工業大学科学技術創成研究院 布施新一郎先生

東京工業大学物質理工学院 田中浩士先生

横浜薬科大学薬科学科 高橋孝志先生

東北大学大学院薬学研究科 土井隆行先生

環状グアニジン構造含有の異常アミノ酸Aiha-Aおよび-Bについて、不斉アルドール反応を鍵とした高効率的構築法開発と、環状構造であるマンノペプチマイシンアグリコンの合成達成に至る経緯が紹介されており、threo, erythroの定義の解説を含め、複雑な天然物の構造の取り扱いについても多くの示唆を含んだ関連分野の研究者必読の論文です。

Rebut de Debut: COおよびCO2の脱離反応を基盤とするフラグメントカップリング反応 

今月号はなんと4件のRebut de Debutのコーナーが。まず一人目の著者は、慶應義塾大学理工学部化学科(山田徹教授)の齊藤巧泰 助教です。

齊藤巧泰 助教

本総説では「COおよびCO2の脱離反応を基盤とするフラグメントカップリング反応」について解説されています。

Rebut de Debut: 有機分子触媒による脱芳香族化反応を基盤とした全炭素第四級不斉炭素構築法

二人目の著者は、東京農工大学大学院工学研究院(長澤和夫教授)の小田木陽 助教です。

小田木陽 助教

「有機分子触媒による脱芳香族化反応を基盤とした全炭素第四級不斉炭素構築法」について、近年の進展を紹介されています。

Rebut de Debut:均一系触媒によるメタンのC─H直接官能基化

三人目の著者は、北里大学理学部化学科の神谷昌宏 助教です。

神谷昌宏 助教

本総説では「均一系触媒によるメタンのC─H直接官能基化」をトピックにその詳細をまとめられています。

Rebut de Debut:バイオフィルムを制御する天然物 Carolacton; 全合成,単純化アナログ合成,生物現象

最後四人目の著者は、東北大学大学院薬学研究科(大島吉輝教授)の菅原章公 助教です。

菅原章公 助教

Carolactonの全合成、単純化アナログ合成および生物現象化についてのミニレビューとなっています。

巻頭言:ケミカルバイオロジーの魅力

こちらも毎月通りオープンアクセスです。今月号はエーザイ株式会社執行役の大和隆志 博士による巻頭言です。

Stuart Schreiberのもとに留学に行き、エーザイ筑波研究所におけるケミカルバイオロジーの創薬現場への導入を牽引した大和博士による巻頭言です。ご自身が経験され、魅了されたケミカルバイオロジーについて語ってくださっています。

2017年を締めくくる豪華な号になっています!ぜひお楽しみください!

有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズ

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 続・企業の研究を通して感じたこと
  2. MEDCHEM NEWS 34-2 号「2023年度医薬化学部会…
  3. 分子間相互作用によりお椀反転の遷移状態を安定化する
  4. 大人気の超純水製造装置を組み立ててみた
  5. ルテニウム触媒を用いたcis選択的開環メタセシス重合
  6. 採用面接で 「今年の日本化学会では発表をしますか?」と聞けば
  7. ケムステVシンポ「最先端有機化学」開催報告(前編)
  8. 溶媒としてアルコールを検討しました(笑)

注目情報

ピックアップ記事

  1. ゲルセジン型アルカロイドの網羅的全合成
  2. ポンコツ博士の海外奮闘録⑬ ~博士,コロナにかかる~
  3. ユニバーサル・フェーズセパレーター発売
  4. 点群の帰属 100 本ノック!!
  5. A-ファクター A-factor
  6. どろどろ血液でもへっちゃら
  7. 速報・常温常圧反応によるアンモニア合成の実現について
  8. 地球温暖化が食物連鎖に影響 – 生態化学量論の視点から
  9. たるんだ肌を若返らせる薄膜
  10. トマス・リンダール Tomas R. Lindahl

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年12月
月 火 水 木 金 土 日
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

複雑さを設計して、結晶の動きをプログラムする

第723回のスポットライトリサーチは、高知工科大学大学院工学研究科(林研究室) 博士後期課程3年の樋…

ハロゲンの力で強力な結合を切断!天然物クマリンから医薬品・機能性材料原料のクマラノン類へ

第 722 回のスポットライトリサーチは、立命館大学大学院薬学研究科薬学専攻 精密合…

観察を写真で残す!カメラ内蔵リアクタ EasyMax 102i を使ってみた

反応の温度も、攪拌(かくはん)も、滴下も、サンプリングもいまや自動で記録される時代になりました。とこ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP