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ダイセル、化学技術賞を受賞 ウェハーレンズ開発と製品化

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ダイセルは6月1日、同社の「硬化性樹脂によるウェハーレンズの開発と製品化」が、近畿化学協会の2019年度「第72回化学技術賞」を受賞したと発表した。  (引用:プラタイムズ6月3日)

ガラケーの時代からほぼすべての機種に搭載されてきたカメラは進化を続け、現在のスマホでは、デジカメと変わらないかそれ以上の画質で撮影することができるようになっています。画質以外にも画角の改良も続き、現在では望遠カメラと広角カメラの複数が搭載されている機種も珍しくありません。そんなスマホといった小型機器に搭載されるカメラには小型のレンズが必要であり、デジカメのようなガラスのレンズではなく、樹脂で作られたレンズが使われています。そこでダイセルでは、ウェハーレベルレンズと呼ばれる一度に大量のレンズを製造できるプロセスとそれに適した硬化性樹脂の開発を同時に行い、世界で初めて商業レベルでの実用・製品化に成功しました。

ウェハーレンズ(中央の丸状のもの一つひとつがレンズ、引用:ダイセルプレスリリース)

従来の製造方法では、射出成形によってレンズは一個一個、製造されますが、ダイセルが開発した方法では、熱または光硬化性の樹脂を金型で挟み込み、パターンを転写するインプリント成形によってレンズを一度に大量に製造することができます。

射出成形の仕組み

 この新しい成形方法を採用することで、50μm以下の超薄型レンズや、1.0mm角の超小型レンズ特殊な形状のレンズを製造することが可能になったそうです、また独自の高耐熱性の素材を使用し、260度の高温でも透明度と形状を保持できる性能があります。製造現場において基板に電子部品を接続する際には、加熱炉で一様に熱をかけてはんだ付けするため、基板に組み込まれるレンズも高温耐性があると製造プロセスに対する柔軟性のメリットがあると考えられます。またカメラには、複数のレンズが積層して組み込まれていますが、ウェハーレベルレンズでは、ウェハーを重ね合わせた後、一個一個に切り出すことができるため、別の工程でレンズを組み合わせる必要がありません。さらには、配線を印刷したり、フォトリソグラフィーによってパターンを作ったり、表面処理を行ったりとレンズの製造工程の中で機能を付加できるようです。ウェハーを加工する技術は半導体製造において一般的であるため、ウェハーレンズだからそこ1からプロセスを開発せずに、既存の装置やプロセスを活用して機能を付加できると考えられます。

基板内に組み込まれているカメラ(オレンジのカバーの上部がカメラモジュール)

ダイセルでは、2018年にウエハーレベルレンズを活用した光学製品の設計開発・販売を行う拠点として、ダイセル・マイクロ・オプティクス(DMO)を台湾に設立していて、レンズの製造だけでなく製品開発にも取り組み、小型デバイスの高まる需要に対応していくようです。化学メーカーとして材料を開発するだけでなく部品の新しい製造プロセスを同時に開発したことが評価されて化学技術賞しましたが、新しいプロセスを自社で開発することで、組み立てメーカーに部品を直接売り出すことができる一方、部品を製造するための製造ラインや製造のノウハウの蓄積が必要であったり、材料を購入している顧客が競合他社となり既存のビジネスを失う可能性もあります。そんな中、この技術を使って製品化を行い、海外に開発・販売拠点を置いたということは、ダイセルがこの製品に大きな可能性があると判断したからだと思います。今後、この技術を応用した製品が普及することを期待します。

この化学技術賞を主催している一般社団法人近畿化学協会は、1919年に「化学工業の発祥地である大阪に、化学に係わる人々の集える場をつくろう」と、関西在住の旧帝国大学化学系出身者約100人が呼応して創立されました。日本化学会とは別の団体ですが、日本化学会、化学工学会、日本分析化学会、有機合成化学協会、触媒学会、環境分析技術協議会の支部としての業務も行っています。数多くのセミナーや講演会、討論会を数多く開催していて、大きな国際会議として1979年から3年ごとに開催されている国際有機化学京都会議を主催しています。ニュースで取り上げた化学技術賞は、化学に関する研究・技術で、工業的・社会的・学術的価値が明らかになったものについて顕著な業績と認められたものを対象に表彰を行っています。2000年からは環境技術賞も設立され、化学に関する研究・技術で、地球環境との共存並びにその維持・改善を積極的に意識し、方向付けがなされた新技術・改良技術で工業的・社会的・学術的価値が明らかとなったものについて顕著な業績と認められたものを対象に表彰を行っています。どちらも45歳未満の近畿化学協会会員・正会員並びに特別会員の会社に所属する研究技術者に贈られます。近年、企業が学術論文を出すことが少なくなり、一方で活発に出願されている特許は技術を守るためのツールであるため、企業の研究を外から表彰することは難しいのが現状です。そんな中これらの賞は、企業の研究が多く選出されていることが特徴で、製品化された技術を分野関係なく表彰することはユニークであり、企業サイドとしても自社の技術を化学コミュニティにアピールできる貴重な機会ではないでしょうか。

関連書籍

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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