[スポンサーリンク]

その他

ヒューマンエラーを防ぐ知恵 増補版: ミスはなくなるか

[スポンサーリンク]

概要

ときに深刻な事故を招くヒューマンエラーは,どのようにすれば防げるのか.本書では,事故が発生するまでの過程だけでなく,事故が起きる構造にも注目し,ヒューマンエラー防止のための理論を考察する.また,すぐに役立つ実践的なテクニックの一端を,身近な事例などを題材に問題形式で紹介する.もう,ヒューマンエラーは怖くない!

まえがきより
事故はたった一つのきっかけだけで説明できるものではありません。事故は、複数の要素・要因がそろった結果生じるものです。これはちょうど、ポーカーや麻雀で役がそろって上がることに似ています。本書では事故を、最後のトドメだけではなく、発生のしやすさの構造からも捉え直してみたいと思います。

(引用:化学同人)

対象者

研究室の学生や教員、企業などでラボ作業を行う研究者、監督する責任者。安全に関する知識や経験が少ない学生さんにお勧めの書籍です。企業においては独自の事故防止に関する研修が充実しているかと思いますが、本書からは組織外の事故や知識を得ることができ、安全への視点を広げることができると思います。

目次

第1章 ヒューマンエラーとは何か
  1. 背筋も凍りつくヒューマンエラー
  2. ヒューマンエラーは根深い問題
第2章 なぜ事故は起こるのか
  1. 事故とは何か?
  2. 事故は起こらなくなるか
  3. やっぱり人はまちがえる
第3章 ヒューマンエラー解決法
  1. 問題の捉え方
  2. 問題解決への作業
  3. 小さなミスこそ重要
  4. 自己の責任は誰がとるべきか
第4章 事故が起こる前に……ヒューマンエラー防止法
  1. 三段がまえのえらー抑止
  2. 大事故に発展させない方法
第5章 実践 ヒューマンエラー防止活動

 

第6章 あなただったらどう考えますか

 

第7章 学びとヒューマンエラー

 

第8章 安全とは誰がどう決める?

 

解説

化学実験においては事故が発生するリスクは高く、ガラス器具が破損して手を怪我したり、試薬の不適切な取り扱いで発火してしまったり、有害なガスが発生して気分が悪くなってしまったりと数多くの事故が報告されています。それらの事故の多くには何らかのヒューマンエラーが関連しており、本書ではヒューマンエラーとはどういうものなのか、そしてそれを防ぐ方法を解説しています。

では内容を見ていきます。第1章では過去のヒューマンエラーによって引き起こされた事故やヒューマンエラーの分類、そして時代と共に変化するヒューマンエラーと事故の関係について紹介しています。ヒューマンエラーは単なる人間のミスで、気をつけていれば防げるものと簡単に思ってしまいますが、本章ではその分類や起こる原因が図と共に解説されており、ヒューマンエラーをより系統的に理解できる内容になっています。第2章は事故原因が主題であり、事故原因の特徴や事故が起こるまでの過程を解説しています。具体的に第2節では電子レンジを例にとり、事故(加熱中にドアが展開)が起こる過程を図を用いて解説しています。ここで紹介されている状態ごとに図を描く方法は、事故の防止方法を考える上で実践できる内容だと思いました。第3節のパートでは、カードを使った簡単なゲームから人間が間違える理由は不明であることを証明しています。

第3章ではヒューマンエラーの解説法ということで、事故が起きた後にヒューマンエラーを防ぐ手立てを考える際に重要なポイントを解説しています。第1節では電車の非常用コックの事例を用いて、事故が起こった後に一つの予防策を講じても、別のリスクが発生して事故が起こってしまうことが紹介されており、予防策を作る際には、その策が別のリスクが出ないかよく熟慮してから適用することが必要だと実感しました。また第2節から4節は、組織について触れられており、事故対策について議論するにはどんなチームを作ればよいのか、重大な事故を起こさないようにするには組織がどうあるべきなのかを解説しており、実作業を監督するような立場の人にぜひ読んでいただきたい内容となっています。

第4章はヒューマンエラーの防止方法というタイトルで、どのような工夫でヒューマンエラーを防止できるか身の回りにある対策を例に挙げながら解説しています。また第5章は、ヒューマンエラーの原因の特定と対策についてコンサルタントとして活動している筆者の体験談がまとめられています。第6章では、ヒューマンエラーを防ぐ実践的なテクニックを習得するために身の回りにあるリスクを問題形式で紹介しています。この4から6章の内容は本書において中心的な内容であり、多くの事例からヒューマンエラーの防止方法を学び読者が自分の活動に活かせる内容になっています。本書ではトピックの終わりにまとめの一言が添えられていますが、特にこの3章では、その一文が対策を考えるのに最も重要なポイントとなっており、ポイントをまとめて見返すだけで良い復習になるかと思います。

第7章は、学びとヒューマンエラーの関連性に触れており、どのような方法で教えるのが良いのかについて論述されています。第8章は安全か危険かを決める方法について解説されています。工業の世界では基本的な安全について定めた規格があり、安全認証の憲法となっていることは、本書を読んで知り参考になりました。

全体を通して、ヒューマンエラーの学問的な内容から実践までをカバーされており、文庫本としては内容がかなり充実しています。筆者も本文中で主張している通り、実践の内容については模範解答を読むだけではなく、自分なりの解決法を考えてみるのが自分にとって役立つ本書の使い方だと思います。

安全に関するケムステ過去記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  2. ニホニウム: 超重元素・超重核の物理 (基本法則から読み解く物理…
  3. 【書籍】『これから論文を書く若者のために』
  4. 世界の化学企業ーグローバル企業21者の強みを探る
  5. カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?
  6. 化学の歴史
  7. 絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている
  8. 【書籍】研究者の仕事術~プロフェッショナル根性論~

注目情報

ピックアップ記事

  1. ウィリアムソンエーテル合成 Williamson ether synthesis
  2. 危険!DDT入りの蚊取り線香
  3. GRCにいってきました:ボストン周辺滞在記2025 Part I
  4. CETP阻害剤ピンチ!米イーライリリーも開発中止
  5. 光を吸わないはずの重原子化合物でも光反応が進行するのはなぜか?
  6. タンパク質の定量法―ブラッドフォード法 Protein Quantification – Bradford Protein Assay
  7. Evonikとはどんな会社?
  8. 新型コロナウイルスの化学への影響
  9. 藤沢晃治 「分かりやすい○○」の技術 シリーズ
  10. 有賀先生に質問しよう!!【第29回ケムステVシンポ特別企画】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2023年6月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2026年9月号:水素放出型カップリング・小員環カルボニル化合物・選択的臭素化・協奏機能型銅触媒・骨格リデザイン

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年9月号がオンラインで公開されています。…

<無料試薬サンプル進呈>バイオ試薬トライアルキャンペーン2026【東京化成工業】

東京化成工業では、日々の研究活動をサポートするバイオロジー研究用試薬を対象に、「バイオ試薬トライアル…

タリンにいってきました BOS2026 前編

みなさんこんにちは。ケムステ代表です。久々にまともに記事を書きます。さて、表題の通り、6月後…

第6回鈴木章賞授賞式&第10回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

計算科学、情報科学、実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP